修正能力を伸ばす
卒業式を間近に控え、6年生が、校長から褒められました。
校長には、卒業式の練習を2日続けて手伝っていただきましたが、2日目の練習が終わった後、校長は私に、こう訊きました。
「昨日とは別人のように、みんな所作が上手になっているけれど、昨日の練習の後、クラスで特訓したの?」
昨日、全体練習が終わってからは、教室で普通の授業をして、子どもたちは普通に下校しました。
校長がおっしゃるような特別な練習などは、一切やっていません。
しかし、彼らの所作は、校長先生がおっしゃるように、見違えるほど美しくなっていました。
これは、彼らが、1日目の指導をよく聞いて、家で自主的に練習してきたからです。
このように修正能力が高いことは重要で、修正能力こそ学習の最も大事な力だと言ってもよいと思います。
修正するために自主的に練習していたことも、もちろん立派なのですが、もう一つ重要なのは、1日目の指導が、一人一人にされたのではないということです。
ある子は気を付けの姿勢を、ある子は礼の仕方を、ある子は歩き方を指導されました。
しかし、直接指導された子は、数人で、六十八名のうちのほとんどの子どもは、それを見ていただけです。
ところが、2日目の練習では、ほとんどの子が、昨日指導されたことを、きちんと所作に取り込んでいました。
学校で学習するうえで重要なことが、ここに潜んでいます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、自分に向けられた言葉や笑顔に反応しますが、他の子に向けられた言葉には無関係です。
ところが、6年後、小学校の教室の席に座った時には、先生は、もう自分一人に向かって授業をしてくれるわけではありません。
1対1で言われたのではないことを、自分のこととして学んでいく力がないと、小学校では力を伸ばせないのです。
家族が多く、家族だんらんの機会の多い子は、この力を早く身につけることができそうです。
毎日、家族みんなで集まって食事をしながら、おじいちゃんの昔の武勇伝を聞かされている子は、こういうことに「強い」かもしれません。
さて、お子さんは、例えば、ディズニーランドに行って、大勢で入るアトラクションの入り口のキャストの説明に注意深く耳を傾けていますか。
もし、できていれば、安心です。
さらに、デパートや劇場の場内放送にも、しっかりと耳を傾けられる子だったら、授業を聞き取る姿勢や能力は充分だと、ご安心ください。