教えた者勝ち

 2月も半ばになると、6年生の算数の教科書は6年間の復習や発展問題ばかりになるので、個人のペースで学習を進め、私がアドバイスするという形をとっています。

 わからない問題は友達に教わりに行ってもいいことにしています。

教えてほしいと言われた子は、必ず教えなくてはいけないというのがルールです。

なぜこんなルールを作ったかというと、教わった子より教えた子の方が得をするのに、それに気づかない子が多いからです。

 自分がわかっていることをわからない子に教えるのは時間の無駄と考えている子がたくさんいます。

でも、脳の仕組みを考えたら、それは大きな間違いだと気づくでしょう。

 脳は小さな箱が何億個も集まってできています。

その一つ一つに小さな知識が入っています。

必要な時にその箱のふたがノックされ、中の知識を使うことができます。

子どもの時はその箱に知識をいっぱい入れて箱が足りなくなっても、次の日には空の箱が新しくできて、脳の箱はどんどん増えていきます。

 だから、子供の頃は、新しいことにどんどん挑戦することが重要です。

残念ながら勝手に箱が増え続けるのは18歳までです。

18歳までは好き嫌いを言わず、目の前のことすべてに挑戦していくのが力をつけるよい方法です。

 さて、1+1=2という単純な思考なら箱のふたを一つ開ければすみますが、もっと頭がよくなるためには、一つの刺激で、一度に多くのふたを開けなくてはいけません。

そのためには箱と箱をつなぐ神経が太く複雑に絡み合っている必要があります。

 箱は18歳で増えるのをやめるようですが、箱と箱とをつなぐ神経は、何歳になっても鍛えれば、より太く複雑になるそうです。

アインシュタインは箱の数が普通の大人の人より少なかったようですが、箱と箱をつなぐ神経の太さ、複雑さは普通の人をはるかに超えていたそうです。

 友達同士で教えあった場合、教わる子は知識が一つ増えます。

箱がひとつ埋まるわけです。教える方はもうわかっていることですから、新しく箱は埋まりません。

これでは一見、教えた方が損をしたように見えます。

 しかし、本当は違います。わからない人に教えるためには、箱を一つ開けて自分の知識を見せるだけではだめです。

自分の知っていることをどう伝えれば相手がわかってくれるかを一所懸命考えなくてはなりません。

一度教えてみたら、相手がわからなかった。

そうしたら、別の方法を考えなくてはなりません。

ここが、神経を太く複雑にするポイントです。

 わからない友達に粘り強くいろいろな方法で教えようとする子は、脳の神経が太く複雑になります。

すなわち頭がよくなるのです。

 教室では友達どうしで丁寧に教える姿が見られます。

 家で勉強をしている時、お兄さん、お姉さんは、弟、妹におしみなく教えましょう。

その分の時間、自分の宿題をやるのが遅れても、結果的には頭はよくなっているのですから。


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