やさしいのは、どちらか
子どもたちに、こんな問題を出しました。
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道におばあさんが倒れていました。
通りかかったAさんは心の中で「ばあさん、こんなところで倒れていたら邪魔だよ」と思いました。
反対側から来たBさんは「おばあさん、大丈夫かしら、こんなところでかわいそうに」と思いました。
AさんとBさん、どちらがやさしいでしょう。
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まず、子どもたちは「Bさん」と答えます。
理由は、お察しの通りです。
しかし、いつまでも「正解です」と言わない私を見て、何人かの子が「こうじ先生が、そんな単純な問題をだすわけがない」と思い、「Aさんです」と答え始めます。
一見、不良に見える人が、実はやさしかったというドラマなどを見たことがある、などと、無理やり理由をつけます。
Aさん、Bさんと、大方の子が自分の意見を持ったところで、私が言います。
「どちらも、正解ではありません」
子どもたちは、「答えはあれしかない」という勢いで、意見を変えます。
「どちらも、やさしいです。」
「どちらも、やさしくありません。」
何とか頑張って理由をつけますが、その理由も、だんだん無茶苦茶になってきます。
「それも、正解ではありません。」
今年の子たちは、ここで力尽きました。
今までのクラスでは、正解にたどり着いた子どもたちもいます。
正解は「わからない」です。
この場合、普通に考えれば、Aさんより先に、Bさんがおばあさんを助け起こすでしょう。
そうしたら、やさしいのはBさんで決定です。
しかし、Bさんがおろおろするばかりで、Aさんが「ここにいたら邪魔になるから、自分が病院まで運んでやるよ」と、おばあさんを病院に連れて行こうとしたら、やさしいのはAさんということになります。
心で思っているだけでは、その人がやさしいのかどうか、他の人にはわかりません。
それを行動に移した時に、その人がやさしいことが決定されます。
心で思っているだけで行動に移す前の段階では、どちらがやさしいでしょうと訊かれても、「わからない」のです。
これは、すべてのことにつながります。
優しい心を持つ、やる気いっぱいの気持ちになる、…。
どんな気持ちでいるかは、とても重要なことですが、それを行動に移した時に初めて、自分が変わり、世界が変わるのです。
それを、いつも忘れてはいけません。
今年は、「授業で発表するために準備をしっかりとしてきたのに、挙手する勇気がなくて結局一度も発言できなかった子がたくさんいた時」に、この話をしました。
お子さんが、一歩踏み出す勇気を持てないでいる時にこの話をすると、もしかしたら、役立つかもしれません。