言わない上達 

 学習発表会の反省会がありました。

その席で、他の学年でミュージカルをやったA先生が、こう言いました。

「台詞や演技も上手にできたけど、台詞のない時の様子を見て、うちのクラスの子は、とても育っていたと感じました。」

 この言葉に、私は、はっとし、さすがA先生だなあと思いました。

 劇をやると、つい台詞を言っている子の様子に目が行きます。

その台詞を聞いている他の「役者」には、なかなか目が向けられません。

 でも、子どもたちが進歩、上達しているのは、台詞のある時だけではありません。

友達の台詞をしっかり聞いて、次の自分の台詞に備える。

さらに聞いている間も演技する。

こういう時間にも、子どもは進歩、上達しているのです。

 「聴く」という力は、話す力と同じく重要な能力です。

 1時間の授業中、たくさん発表する子でも発表している時間の合計は、45分中の数分。

1回しか発表しない子は、話している時間は数十秒です。

あとの時間は、聞いているか、考えている時間。中でも聞いている時間は圧倒的に長いのです。

 こう考えると、話す力と同等どころか、聴く力の方が重要な力のように思えます。

 授業参観の時に「うちの子は、ちゃんと発表できるかしら」とご心配になりながら見ていますか。

そのお気持ちは当然です。

 でも、もし次の授業参観の時に思い出していただけたら、「うちの子は、今の友達の発言をしっかり受け止めているかしら」と思いながら参観してみてください。

一度も発表できなかった授業でも、友達や先生の話を聞いている時のお子さんの顔には、大きな進歩のあとがうかがえると思います。

 今年の私の仕事の目標は、「話すよろこび、聞く幸せ」です。

小学生に話す喜びを味わわせるのは簡単です。聞く幸せのわかる子に育ってくれたら最高です。

読者の方からのお便り**********

○いつも、なるほどなぁ〜〜って思いながら読ませていただいております。

今朝も子供に指示を出してから「聞いてる?」って怒鳴りつけてしまい、反省しています。

子供が私の話を聞き流すのは、あまりにも細かいことをごちゃごちゃと言い過ぎたせいかなって思っています。

今日のメルマガを読んで、ちゃんと聞いている時を認めて、聴く力を育てていきたいと思います。

○ついつい「聞いてるの!」なんて言ってしまいますがこちらが、喜びを感じて話ができれば、そんなこと言わなくても聞いてもらえますね。

こうじ先生の「話すよろこび、聞く幸せ」と聞いて、私も心がけようと思います。

○話し上手は聞き上手、会社の部下にもお客様との会話で傾聴姿勢が重要と教えています。

○「はっ!」と気づかされました。

そうなんですね、

発表することばかりが良いことのように思っていました。

次の参観の時は、聞いたり、考えている姿をみてみます。ちょっと楽しみになりました。

○参観日に発表できるかと見ていた自分を再認識しました。

理解して聞くことも重要であり、褒めることに値することだと思えました。ありがとうございます。

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 忙しいという言葉で、私もいつしか、待つのを忘れている時があることを、今回のみなさんのお便りで、反省しました。


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