読書の好きな子は

 私の勤めていた学校の読書の年間目標は、1〜3年生が百冊、4〜6年生が1万ページです。

子どもたちを見ていると、よく言われることですが、確かに読書量と学習の力は関係があります。

すべてが当てはまるわけではありませんが、読書が好きな子は、勉強が苦手ではありません。

 そこで、こんな「公式」が出てきます。

「読書が好きになれば、勉強ができるようになる」これは本当でしょうか。私は違うような気がしています。

 クラスで一番足の遅い子が、「とにかく走ってみなさい、たくさん走りなさい」というだけで、足が少しも速くなっていないのに、クラスでいちばん走るのが好きな子になるでしょうか。

また、周りの大人が勝手に、足の遅い子が速い子に勝ってしまうようなルールを作っても、喜ぶのは一瞬だけで、真に走ることが大好きになったりしません。

その子が、本当に走るのを好きになるのは、たとえクラスで一番でなくても、自分が速くなったと感じられるような力を身につけた時です。

 同様に、読書を本当に好きになるのは、本を読む技術をしっかり持った時です。

極端な言い方をすれば、「読書が好きになれば勉強ができるようになる」のではなく、「勉強ができるようになれば読書が好きになる」のです。

 読書が好きになるための勉強はたくさんありますが、基本的なものとして、何よりもまず、言葉をたくさん知っていることが重要です。

たくさんの言葉をシャワーのように浴びて育った子は、聴いたり読んだりすることが好きになります。

 10歳以上になると、その中でも、日本では、漢語をたくさん知っている子が、読書を好きになります。

聞いたことのない漢語でも、字を見て何となく意味がわかるくらいになると、本を読む速さも楽しさも増してきます。

 10歳までの子は、耳から入ってくる言葉が、脳の部屋にたくさん蓄えられていること、10歳からは、漢字の意味をたくさん知っていることが、読書好きにさせるこつの一つです。

 10歳までは、とにかく家族でたくさんおしゃべりをして、お子さんが言葉の意味をきいてきたら、すぐに教えることが重要です。

 10歳から後は、新聞などをテキストにして、親子でたくさんの活字をいっしょに見て、知っている漢字を増やすことが重要です。

 もし、お子さんが読書好きなら、お父さん、お母さんが、自然にそれをやってきたのだと思います。


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