行間を読む

 国語の文学の勉強では、よく行間を読みましょう、などと言われます。

言葉には表現されていないことを読み取るという意味ですが、これは小学生にとってはとても難しいことです。

 作者の意図、作品の背景、その他諸々のことがわかっていなければ、本当に行間を読むなどということは大人にもできません。

ですから小学生は、その文を読んで、自分の生活のことを思い出せれば、それで充分です。

 3年生の国語の教科書に「わすれられないおくりもの」という教材があります。

 動物村の長老、あなぐまが死んで、村中の動物が哀しむのですが、やがて、あなぐまがみんなの心に残してくれたものを思い出し、残してくれたものの豊かさによって悲しみが昇華していくというお話です。

 **********(本文より)********

 もぐらは…一枚の紙から手をつないだもぐらが切り抜けます。

切り抜き方は、あなぐまが教えてくれたものでした。

 はじめのうち、なかなか、紙のもぐらはつながらず、ばらばらになってしまいました。

でも、しまいに、しっかりと…切り抜けたのです。

その時のうれしさは、今でも忘れられない思い出です。

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 ここを読んで、Aさんは、もぐらになったつもりで、あなぐまに手紙を書きました。

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 僕がはさみの使い方が上手になったのは、あなぐまさんのおかげです。

はじめのうち、なかなかできなくてもやもやしていたけれど、あなぐまさんは、ずっと、ぼくに、「次はできるよ、がんばろう」と声をかけてくれましたね。

 その言葉が出るたびにやる気がでてきました。

 そして、ちゃんと紙のもぐらがつながった時、あなぐまさんは、僕よりも喜んでくれていましたね。

その時は、紙のもぐらがつながったことよりも、うれしくなりました。

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 A子さんは、きっと

・うまくいかない時に、そばに誰かがいて、次はできるよ、と励まされた

・うまくいった時に、自分よりも喜んでくれた人がいた

という経験をしているのでしょう。

 子どもが行間に見つけるのは、生活の中のできごと、特に大人とのやりとりです。

 やさしい人にかこまれている子どもは、やさしい物語を読んで、もっとやさしくなっていきます。


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