これぞ日本語

 2年生の国語で、父、母、兄、姉などの漢字が出てきます。

身近な言葉なので、覚えるのも簡単です。

でも、これは、身近な言葉でしょうか。

 お子さんから、何と呼ばせていますか。

「お父さん、お母さん」「パパ、ママ」「父ちゃん、母ちゃん」…。

 子どもにとって、「ちち、はは」は身近な言葉ではありませんね。

でも、ここでは、漢字を「ちち、はは、あに、あね」と読みます。

そこで、2年生に「ちち、はは」は、どういう時に使うのかと訊いたら、やはりわかりませんでした。

 そこで、「ちち、はは」は、自分の親を人に紹介したりする時に使うのだと教え、質問ゲームを始めました。

「あなたのお父さんは、どんな色が好きですか」「わたしの父は、青が好きです」二人一組で、相手の家族のことをかわりばんこに訊いていきます。

 すぐに飽きてしまうかなと思いましたが、これを4人グループに広げたら、20分以上も楽しげに質問を繰り返していました。

たった20分で完全に定着できることはありませんが、8歳の新鮮な脳の部屋には、「ちち、はは」がしっかり入ったと思われます。

家に戻って、数回、時期をあけて、家族でこのゲームをやれば、いざという時に、「ちち、はは」はスムースに出てくるでしょう。

 世界各地の言語についてはよく知らないのですが、「お父さん」と「ちち」を呼び分けるルールは、日本語の素敵な特徴のひとつだと思います。

 今の日本では、8歳の子が「僕の父は…」と言ったら、ちょっと驚かれます。

それを聞いたほとんどの大人は、「おりこうだね」と思います。

一度利口だと思われると、そこからは、普通のことが利口な振る舞いに見えてしまうから不思議です。

 小学生に無理やり中学生の数学の問題の解き方を詰め込んで解かせれば、一時期利口に見られますが、中学生になれば誰にもできることで、それ以上先はありません。

でも、「ちち、はは」は、「一生もの」です。難しいことを教えるのではなく、普通、人がちょっと忘れかけているものや、本来教えるべきなのにうっかり忘れていることを、見つけて教えることが大事です。

 お父さん、お母さんが、おじいさん、おばあさん、または、近所のお年寄りとたくさんお話をすると、どんな言葉を教えればいいか、自然にわかってくると思います。


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