手紙こそ文章力アップの最強アイテム

 年賀状を儀礼的なものだと考えている人もいるようですが、私は、「以前お世話になったのに、1年間まったく連絡を差し上げず申し訳ないことをした方々に、せめて1年に1度のごあいさつができる大事なチャンス」だと思っています。

 秋に行われた学級懇談会では、学級役員さんが、「みんなでわいわいやりながら、年賀状を自分の子に書こう」という企画を考えてくれました。

とてもよい企画だと思いました。なぜなら、手紙こそ文章力アップの最強アイテムだからです。

 国語では、以前に比べ「読む」時間より、「書く」時間が圧倒的に長くとられるようになりました。

私自身は、この方針にもろ手を挙げては賛成できないのですが、書く力がつくこと自体は、悪いことではありません。

国語の授業では、生活作文、読書感想文、報告文や説明文、新聞記事、礼状、詩などを書いて、書く力を伸ばしています。

 このように文章には様々な形式がありますが、人生を通して、最も多く書く機会があり、最も重要なのは「手紙」ではないかと思います。

自分の思いを正しく伝え、相手の心を動かせる手紙を書くことができれば、文章を書く力は満点だといってよいでしょう。

手紙の中には、文章に必要なあらゆることがふくまれているので、手紙を書くことはそれだけで、基礎的な書く力を育むことになります。

 大人でも書けないような文章を書く5年生の女子Aさんを担任したことがあります。

私も書くことが大好きなので、そうそう人には負けない文を書けるつもりでいましたが、もしかしたら10歳のAさんは、自分を越えているかもしれないと思いました。

教員生活三十八年の中で、こんな子に出会ったのは、後にも先にも、このAさん一人だけです。

 どうやって素晴らしい力を身につけたのかと、お母さんに尋ねましたが、お母さん自身もわからないとおっしゃっていました。

 その後、何度かお母さんとお話をする中で、その秘密が、お母さんとの交換日記にあることがわかってきました。

幼稚園から続けている、お母さんとの文のやりとりが、彼女の文章力を人並み外れたものに高めていったようです。

 大好きな人に、自分の気持ちをわかってもらおうとして書く手紙は、その真剣さから、高い技術を自然に身につけさせてくれます。

大好きな人に手紙を読んでもらえる喜びは、さらによい文章を書こうというモチベーションを生み出します。

 Aさんのお母さんが意図的にこうしたことを始めたのかはわかりませんが、5年、6年と続く手紙のやり取りの中で、Aさんの才能が開花したのは明らかです。

 親子で今更、と思うかもしれませんが、交換日記や手紙のやりとりを始めてみませんか。


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