漢字を正しく覚えるためには、速さを
毎日、1ページの漢字書き取りの宿題を出していますが、4月に一度、「平仮名の授業」をし、提出された書き取りの宿題は、徹底的に平仮名の字形を直してきました。
本来は、漢字を含めたすべての字について、そうしなければいけないのですが、そうするための時間はありません。
字形をしつこく直してきたのは、字をゆっくりと書かせるためです。
この「ゆっくり書く」というスピード感が、漢字を正しく覚えるためにも役立ちます。
どんなことでも、覚える、手になじませる、体にしみこませるためには、ある程度の時間が必要ですが、同じように時間をかけても、しっかり習得できる子と、そうでない子が出てきます。
その違いは、1回1回練習する時のスピードの違いから来ることも多いようです。
自転車、縄跳び、包丁使い…、どんなことでも覚え始めはゆっくりです。
しかし、慣れてくると、そのスピードは次第に上がってきます。
それは、よいことなのですが、しっかりと習得できていないうちに、速すぎるスピードでやってしまうと、正しく技術が習得できないまま成長してしまうのです。
自転車の練習ならば、無茶をしてスピードを上げすぎれば危険なことは自分でわかるので、子どもは自然にスピードをコントロールしながら練習を重ねます。
しかし、漢字の練習は、速く書いても危険ではないので、子どもたちは、しっかり覚えていなくても、どんどん速く書くようになります。
ここを大人がしっかりと見て、完全に覚え、美しく書くまで無理にでも、ゆっくりと書かせることがポイントです。
今年の学級の子どもたちは、多くの子が、たいへん上手な平仮名を書けるようになりました。
上手な平仮名を書けるようになった子は、進んで決められた以上のページ数の書き取りをやってきています。
上手に書けると、単純にうれしく、書くのが楽しくなるからです。
余分にやったページは「宿題の貯金」と呼んでいます。
「貯金」は、体調が少し悪かった日、または忙しくて宿題がやれなかった日の分に充てることができます。
多い子は、1か月分以上の貯金があります。
自分の字が美しいとか、自分は漢字が得意だと思ったら、進んで学習するようになるのです。
最初のところで、我慢してゆっくりやるのが、あらゆることの上達のこつなのかもしれません。
そこで、子どものために「鬼教官」になってやれるかが、子育ての勝負どころです。