待ちましょう

 漢字書き取りの宿題を出すにあたって3つのことをしました。

・ひらがなのお手本を渡して、平仮名はお手本のように書けるようにしなさいと言う。

・うまく書けていない平仮名は、その子のくせがわかるように(どこを直せばいいか、本人が類推できるように)赤くペンを入れる。

・気を抜いた字を書いてきた子は、呼び出して叱る。

 私がこわいので、子どもたちは、毎日必死に百文字の書き取りをやってきました。

ほとんどの子が、毎日まじめにやってきました。

先日、学級懇談会であるお母さんが、1ページ書くのに3時間かかっている、とおっしゃっていました。

 そして、1ヵ月半、まじめにやってきた子は、どの子も自分で進歩が感じられるほど、平仮名が変わりました。

 もちろん、どの子も同じレベルの平仮名が書けるようになったわけではありません。

 でも、1ヶ月前、とても下手だった子が見違えるような字になったり、最初から上手だと言われていた子は、字が上手な大人が書いたのと変わりない字がかけるようになったり、一人ひとりが大きな進歩をしました。

 学級懇談会でも2人の子のノートのコピーを見てもらい、その進歩をお母さん方にも認めてもらいました。

18歳までは、誰でも、どんなことでも、がんばれば必ず成果が出ます。

 が、今日の本題はそこではありません。

 とても字が進歩したA君。実は、つい先日まで、最初の字と変わらないへたくそな字だったのです。

 A君はとってもまじめな子です。

書き取りにも毎日まじめに取り組みました。

でも、1ヶ月以上、字は変わりませんでした。

 ところが、ある日突然、字が変わりだし、数日で瞬く間に進歩が現れました。

きっと毎日繰り返し、考え抜いて、何かこつのようなものを見つけたのでしょう。

 乳歯が抜ける頃までの子どもは、いろいろなことをすぐに身につけてしまいます。

大人よりずっと優秀です。

5歳の子と25歳の人が同時に一輪車の練習を始めたら、5歳の子の方が必ず早く乗れるようになります。

 5歳と12歳でもその差はおこります。

1年生では1日や2日でいろいろなことが身につきますが、12歳では1ヶ月かかるのです。

 大人は、ついそれを忘れて、「1年生の頃はあんなに頭がよかったのに、6年生になるとだめになるんだねえ」などと嘆いたりします。

 でも、それは、その子に限ったことではなくて、人間はみんな同じなのです。

脳は3歳までがいちばんフレッシュでいちばん吸収力があり、それ以後は、吸収力が落ちていきます。

 でも、やれば確実に進歩します。

年齢に応じて、進歩するまでの期間の長さが待てれば、子どもたちはみんな望んでいる力を身につけることができるのです。

 「○才の頃はすごかった」などと言わずに、お子さんの進歩を、年齢に応じて気長に待ってください。


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