算数の坂道
小学校では、どの教科ができると「勉強ができる子」と思われるでしょう。
答えは千差万別ですが、算数はやはり外せませんね。
私は文系の人間で、数学は苦手です。
子どもの頃、何度も0点を取って、職員室の前に名前を貼り出されていました。
そんな私が言うのですから間違いありません。
小学校において算数は、もっとも楽に百点のとれる教科です。
小学校の算数は山道を登るようにできています。
ゆっくりと山道をしっかり歩いて登れば、誰でも、6年生の頂上へ着くように、日本の算数のプログラムはできています。
山道の途中には、いくつもの草むらや藪があります。
その中には、この先自分が進むために必要なアイテムが隠されています。
そのアイテムを見つけ、使い方を手になじませ、次の藪に進みます。
丁寧にそれを繰り返していれば、自然に算数のできる子になります。
たし算の力を使って、掛け算の方法を探します。
掛け算の方法を使って、わり算の方法を見つけます。
わり算の方法を使って、約分の方法を見つけます。
これを、教室ではこんなふうに例え話で説明しています。
「最初は短い丈の草原に出ます。そこには、鎌というアイテムが隠れています。
それを、手で草を掻き分け探しましょう。
見つけた人は、その鎌の使い方が上手になるまで、練習しましょう。
練習が終わったら、少し登ります。
すると、さっきより丈の長い草原に出ます。
次のアイテムを探す時、昨日まで鎌の使い方をしっかり練習した人は、見つけるのが簡単です。
でも、鎌を置いてきたり、素早く使えない人は、次のアイテムを見つけるのが、遅くなります。
草の中から出てくる道具は、のこぎりです。
のこぎりの練習が終わったら、少し上って、今度はやぶの中から次の道具を探します。」
算数の教科書に出てくる道具は、すべて必要なものですから、一つとして、取り残してはいけません。
それだけ、日本の算数教育は、エレガントに精選されているのです。
大事なことをまとめると、
1 あわてて先へ進まない。道具探しは授業にまかせる。
2 わかったことをスムースに使えるように、十分に練習する。
3 アイテムの取り忘れに気づいたら、たとえ前の学年のことでも、きちんとそこまで戻る
道具を見つける部分は、学校に任せましょう。
先生が、楽しくわかりやすく、道具探しの授業をしてくれます。
この部分をあわてて予習してしまうと、授業で宝探しをするワクワク感がなくなるので、授業がつまらなくなります。
4年生くらいまでは、予習に時間をかけるのは無駄です。
道具が見つかったら、家で使い方の練習をしましょう。
4年生くらいまでの家庭学習は、復習中心が効果的です。
6年生が、1年生、2年生に戻るのは、恥ずかしいことではありません。
そこへもどったことで、算数に自信を持った子が、たくさんいます。
一度戻って、とり忘れたり練習不足のアイテムを手にすると、今度はものすごい速さで登り直して来て、みんなを抜き返すことも少なくありません。
家でも、学級でも、できないところまでもどっていいんだ、という雰囲気があれば最高です。
勉強は、やり直しができるのだということを知らせてやれば、お子さんは、よい方向に向かいます。