恥ずかしくないと思えたら
夏休み前、何人かの子に、個人的な宿題を提案しました。
個人的な宿題ですから、やらなくても叱られません。
その宿題は、1年生から5年生までの算数の問題集を買ってきて、1年生から順にやること、です。
6年生の算数で、A君は「速さ」の問題を解いて、「道のり4500」と答えを出しました。
これは、メートルですが、答を書く欄には、キロメートルとすでに書かれています。
そこでA君は、答を45キロメートル、と書きました。
正答は、4.5キロメートル。
A君は0点です。
A君は、「6年生の」速さの勉強をしっかり解いたのにもかかわらず、0点です。前の学年の長さの勉強が身に付いていなかったからです。
日本の算数の学習システムは、ていねいな積み上げをすれば、必ず「勉強のできる子」になれるようにプログラムが組まれています。
今、算数ができない、と、自分で思いこんでいる子は、どこかの「たった1カ所」で躓いた結果、その先がわからなくなったという場合がとても多いのです。
ですから、ばからしく思えても、恥ずかしくても、1年生の問題から順番にやっていき、どこで躓いたのかがはっきりわかれば、すぐに算数はできるようになります。
つまづきの原因の多くは、そこを理解するのがちょっと遅れた(ちょっと遅れた時に、授業が進んでしまった)だけ、なのです。
順番にていねいに学習していけば必ずできるようになる算数は、逆に言えば、たった1回躓いた遅れが、雪だるまのようにふくれあがって、いかにも難しいもののように見える教科でもあるということです。
A君のように、ここまでの5年間のどこかが抜けていると、今のがんばりが得点にならない、ということにもなります。
少しでも算数に不安のある子は、夏休みなどの間に、1年生の問題から、ていねいに解いていくことをお勧めします。
でも、これは勇気のいることです。妹や弟にばかにされる。1年生の問題集を書店で買っているところを友達に見られたら恥ずかしい。
こういうことを乗り越えなくてはいけません。
私のクラスには、かつて、教室で一人、平気で3年生の問題集に取り組める5年生がいました。
その子は、本気で、勉強ができるようになりたかったのです。
大人で言うと、勤続30年のベテランが、新入社員に「パソコンの使い方を教えてほしい」と頭を下げるくらいの勇気かもしれません。
難しいでしょうか。
でも、算数の「登り直し」は、心から、お勧めします。