ブラックボックス
6年生の算数「分数のわり算」は、最も難しい学習の一つです。
とはいっても、後ろの分数の分母と分子をひっくり返して掛ければ答えが出るので、テストで点を取るのは簡単です。
塾では、学校より早く勉強するようで、塾に行っている子は、こんなの簡単と言って計算問題を解いていきます。
でも、なぜ、後ろの分数の分母と分子をひっくり返すのか、という理論を説明する段になると、みんな困ってしまいます。
後ろの分数をひっくり返せば答えが出る、は、壁のスイッチを押すと天井の灯りが点く、に似ています。
どうして灯りが点くのかという仕組みを知らなくても、灯りは点きます。
このわからない仕組みの部分をブラックボックスと呼びましょう。
今の日本にはこういうブラックボックスがあふれていて、生活を便利にしています。
便利なものを享受するのはいいことですが、その中の仕組みを覗いてみたいと思わなかったり、そこにブラックボックスがあることを意識しなかったりする子は、力が伸びません。
この割り算の授業の最初に、壊れたアコーディオンを持ってきて、直すところを見せました。
直すといっても仕組みは簡単です。
ふたを開けて眺めれば小学生にも直せます。
でも、ふたをあけようと思わなければ、アコーディオンもブラックボックスのままです。
ちゃんと音が出ている時はそれでいいのですが、壊れた時には困ります。
自分でふたを開ければ簡単に修理できますが、ふたを開けないまま楽器屋さんに修理を頼んだのでは時間もお金もかかります。
算数の問題も同じで、単純な問題なら公式や方法を暗記するだけで解けますが、複雑な問題になると、その公式や方法が生まれた理論を理解していないと解けません。
テストの最中に「楽器屋さん」を呼ぶことはできません。
自然にあるものでも、人の叡智がつまったものでも、そこにブラックボックスがあることに気づく。
そして、その中を覗きたくなる。これが、学習への意欲の源です。
小さな頃から、お父さん、お母さんと家事やいろいろな体験をしながら話を聞くことで、ブラックボックスを覗きたいという好奇心は、お子さんの中に養われていきます。
とりあえず、ひとつ、家の中にあるブラックボックスをお子さんの前で開けてみてみませんか。