チャーハンの素
6年生の算数、速さの問題で、気づいたことです。
道のり÷時間=速さ、だから、道のり=速さ×時間、で、時間=道のり÷速さ、である。
小学生の時、これさえ覚えればよい、と言われましたが、どうしても覚えられず四苦八苦したことを思い出します。
道のりを「み」、速さを「は」、時間を「じ」として、「みはじの法則」で覚えなさい、という塾もあるそうです。
覚えなければいけないことを、覚えやすいように省略して暗記してしまうという方法は、なかなかよいものです。
その問題が出たら、おまじないを使う魔法のようにさっと解けてしまいます。
そういう方法を考え出した人は、確かに頭のよい人です。
でも、これは、いうなれば、○○園のチャーハンの素と同じです。
チャーハンが何故おいしいか、という理由を知らなくても、チャーハンの素があれば、おいしいチャーハンが作れます。
とても便利です。
でも、チャーハンの素だけでは、他の料理は作れません。
チャーハンのおいしさの秘密を知らなければ、よりおいしいチャーハンも作れません。
「み、は、じ」を暗記しておくと、単純な基礎問題は解けます。
それも、かなり速く正確に解けます。
でも、ちょっと問題をひねられると、解けなくなる子が驚くほど多いのです。
「速さ」は、もともと単位量当たりの大きさという概念を使った考え方のひとつです。
ですから、速さを正確に理解できているということは、他の場合の「単位量当たりの大きさ」の考え方も身についており、いろいろな問題が解けるのです。
もちろん、一ひねりされた速さの問題も、単位量当たりの大きさの考え方に戻って考えるので、時間はかかっても正確に解けます。
さらに大事なことは、算数・数学は積み重ねの坂道であるということです。
ここで、「みはじ」を暗記しても、次の森を切り開くアイテムにはなりません。
次の森を切り開くには、「単位量当たりの大きさ」というアイテムの使い方を身につけることが必要です。
では、そのために、どうすればいいか、というと、小学生の場合、教科書を丹念に読むことが、一番の近道です。
お子さんの算数の教科書、ご覧になったことがありますか。
もし、じっくり見たことがなければ、一つの単元(内容)でいいので、一つ一つ問題を解きながら、ゆっくり読んでみてください。
昔の教科書に比べて、問題数は少なくなっています。
それを批判する方もいらっしゃいますが、実は、少なくなった分、一つ一つの問題の持っている重要性は高くなっています。
問題数が少なくなった分、どの問題にも、次の考え方に進むためのアイテムが必ず隠されています。
それを見つけようとして読んでいくと、算数の教科書はミステリーを読むより面白いです。
「最近の勉強は、私たちが子どもの頃と違うから、教え方がわからない」というお母さんが時々います。
でも、そんなことは絶対ありません。
6年生の子に、3年生の教科書を読ませると、誰でも簡単に理解します。
6年生の子どもが3年前のものを簡単に理解できるのに、大人が二十年前のものを理解できないわけがありません。
読書の秋、お子さんの教科書を熟読してみるというのはいかがでしょう。
「勉強を見てやる」という姿勢ではなく、「面白そうだから読んでる」という姿勢で読むと、とってもよいと思います。