今の話、わかりましたか。
6年生の算数の授業です。
「Aの方は、3かける3だから9になって、それが6だから54で、Bの方は2かける3で6でそれが2つだから12で、2かける4も2こあって16で、3かける4も2こあるから24で、あわせると52なので、Aの方が大きいです。」
C君の発言に、他の子の反応はありません。
「今のC君の意見はわかりましたか。わかった人は手をあげましょう。」…誰も手をあげません。
昼休み後の5時間目、教室はうだるような暑さです。
「もう1回C君に言ってもらうので、しっかり聞きましょう。」
C君が同じように説明します。
「C君の意見、わかりましたか。」…わかったと手を上げたのはわずかに二人。
他の子も必死に聞こうとしているのですが、C君の意見が理解できません。
実は、これは、暑さのせいでも、子どもの気力不足でも、C君の説明の仕方のせいでもありません。
課題は、1辺が3cmの立方体Aと、各辺が、2、3、4cmの直方体Bとでは、どちらが大きいと言えるか、という問題です。
課題が出てから、20分ほど、子どもたちは個人で答えを探しました。
多くの子は、体積の概念を用いて大きさを比べていましたが、C君は、表面積で比べようとしたのです。
体積の概念で答えを出した子も、まだ答えを出せない子も、C君が展開図を念頭において、面積を算出していることに思いが及んでいませんでした。
それで、どんなに気力を振り絞っても、C君の言っていることが理解できないのです。
私が黒板に簡単な展開図を描き、もう一度C君に説明してもらいました。
「今度はわかりましたか。」…ほとんどの子がにっこり笑いました。
最初からこの展開図さえ頭の中に描いていれば、C君の話はどの子にも簡単に理解できたでしょう。
普通、授業では、先生がこの部分を補完してやりますが、今日は、意図的に描かずにC君の話をみんなに聞かせました。
人間は、人の話を聞く時に、言葉を耳から入れ、それを脳の中で映像化して理解します。
ですから、相手の言葉が、脳の中で映像に変換できない時は、この例のようにちんぷんかんぷんになります。
小さな頃、お父さん、お母さんが、実物を手にしたり、その場に行ったりしながら、お子さんの語彙や言い回しを増やしてあげるように心がけると、言葉と映像は、より強く結びついて、後々、深い思考ができる子になっていきます。