社会科は広がっていく
社会科は、学年が進むにつれて、学習する対象の範囲が広がっていきます。
それを知っていて、少しだけ先の知識を持つようにすると、授業で活躍できたり、学習がより楽しくなったりします。
その学年が始まる半年くらい前、ちょうど夏休みをきっかけにして、少し知識を増やしておくといいと思います。
1年生、2年生は、生活科で、身の回りについて学習します。
幼稚園児の時に、ご近所を積極的に散歩してください。
どこに何があるかを知っているだけで、1年生では大きな力になります。
近所を散歩しながら、「いろいろなものがあるね」と話しかけるといいでしょう。
2年生になると、「公共」という言葉が重要になってきます。
交番、郵便局、駅などの場所や様子がわかっていると、学習が楽しくなります。
1年生のうちに、それぞれの場所に実際に入って、働いている人、利用している人の様子を見るとよいでしょう。
公共の交通機関には、実際に乗ってみるといいと思います。
乗り方、駅(停留所)の様子、利用している人たちの様子などを、体験しながら知りましょう。
3年生は、自分の住んでいる地区、市町に学習が広がります。
大人でも、市内の有名な場所を知らなかったり、実際に行ったことがなかったりすることがあると思います。
2年生のうちに、知識として図面上で頭に入れるのではなく、市内のあちこちに実際に行っておくことが大事です。
4年生は、都道府県まで学習の範囲が広がります。
県内くらいですと、家族の日帰り旅行などもすることが多いかもしれません。
3年生までに、そんな休日があったら、意識的に、その場所の名前や道筋について地図を見てみましょう。
県内の市町村や山、川の名前を、その場所を通過しながら知るだけでも、役に立ちます。自分が住んでいる地区との違い(街部とそうでない場所、山間部と海の近く…)を意識させることも次年に役に立ちます。
5年生では、日本全国に学習が広がります。さすがに、日本全国を旅するのは大変でしょうが、もし、4年生の時に県外に行くことがあったら、何県のどこに行ったか、そこは、自分の住んでいる県とどんなことが違うかを意識させましょう。
もし、県外に親戚などがあったら、久しぶりに出かけてみませんか。
また、4年生のうちに、すべての都道府県の名前と場所を把握しておくことは、大きな力になります。
これには、毎日の天気予報のテレビ番組や日本地図が役に立ちます。
家族で毎日一緒に見れば、自然に名前や位置を覚えられます。
6年生では「世界」に広がります。
これには、ニュースを家族で見るのが、いちばんわかりやすい方法です。
ニュース、新聞等で、海外の出来事に注目したり、海外取材のテレビ番組をいっしょに見ましょう。
その国が、アジアなのかヨーロッパなのか、寒い国か暑い国か…、こんなことがわかっているだけでも、学習への興味は倍増します。
私は、小学6年生の時に、その当時のすべての国の場所と首都名を知っていました。
それは、担任の先生が、毎朝、それを覚える時間を設定してくれたからです。
担任の先生が、どういう意図でそうしたのかは、よく覚えていませんが、その時に張り切って覚えた国や首都の名前は、大人になってからずいぶん役に立っています。
国の名前、場所、海外の都市の名前など、知っていればとても役に立つことですが、義務教育の中では、それを覚える機会というのは、あまりありません。
6年生の歴史の学習で、「渡来人」という言葉が出てきた時に、世界地図を広げてみました。
みんなで世界地図を眺めてみましたが、国の名前と場所がわかる子と、わからない子の差が、とても大きいと改めてわかりました。
「オランダはカメルーンの近くにはありません。カメルーンはアフリカ、オランダはヨーロッパです。」
「ヨーロッパという国はありません。」
「ドイツとインドは、違う国です。」
何かのきっかけで世界地図に興味を持った子、家族と世界地図を広げてみたことのある子は、いくらか、国の名前や場所を知っています。
オリンピックやワールドカップのある年は、ラッキーです。
ワールドカップは、世界の各地域に代表が割り当てられるので、出場国を見るだけで、世界全体がつかみやすいでしょう。
どうしてこんなにサッカーが世界中で盛んになったのか、ということを合わせて教えてあげれば、人類の歴史の華やかな部分と悲しい部分を同時に話して聞かせることもできます。
もちろん、実際に行くとか、家族や知人が海外にいるという幸運な場合は、それを存分に生かしてください。
また、6年生は、地域の広がりだけでなく、時間の広がりである歴史の勉強も始まります。
5年生のうちに、歴史的な出来事や人物名を少し知っておくだけでも、6年生の社会科の学習への興味は、何倍にも膨らむでしょう。また、家の近くの史跡に出かけてみましょう。
図書館に行った時には、歴史のコーナーに行って、本の背中を眺めるだけでも歴史が身近になります。
各学年で注意しなければならないのは、「わかったつもり」にさせないことです。
10歳までは、これから何を勉強するのだろうという「わくわく感」が、学習の原動力になります。
これを覚えれば授業で役に立つから、と思わせないで、楽しく馴染ませておくのがこつです。