パフ 4つの約束

 3年生の音楽の授業をする前に、4つの約束をしました。

1 美しいサウンド

2 ぴったりのテンポ

3 いっしょにサイレンス

4 音符の横に振り仮名をふらない

 授業中いつも忘れないように、子どもたちに渡した楽譜すべてに、この4つの約束を書いておきました。

1 美しいサウンド

 リコーダーで綺麗な音を出すためには、息が安定していなければいけません。

同じ太さの息を出し続けるというイメージで吹きます。

 練習は単純で、同じ太さの安定した息をイメージして、ラの音を20秒を目標に吹きます。

 最初は、20秒も、と驚きますが、熱心な子どもたちは、簡単に20秒吹けるようになります。

20秒続けるためには、口先だけでなく、お腹の底の方までコントロールする必要があります。

 真剣に取り組んだ子は、20秒というゲームを楽しむうちに、自然に腹式の深い呼吸ができるようになっています。

20秒吹ければ、ゆっくりした曲でも8小節くらいを息継ぎなしで吹けるようになると同時に、気持ちの安定する深い呼吸も自然に身につきます。

2 ぴったりのテンポ

 これは、「USA」のサビを、みんなで踊りながら歌うことでトレーニングしました。

テンポを変えられるリズムボックスを使い、色々なテンポで、「カモンベイビー、アメリカ…」と歌います。

 難しいのは、ゆっくりなテンポに合わせて歌うことです。

これができるようになると、合奏が揃ってくると同時に、人の話が聴ける子になります。

話が聴けるという能力は、小学生にとって、とても大事な力です。

3 いっしょにサイレンス

 音楽において、休符は、音符と同じくらい大事なものです。

音のない時間があるから、リズムが生まれ、音のある時間の美が際立つのです。

合奏や合唱でも、音の長さと休符に注意するだけで、演奏のレベルが一つ上がります。

 親子で演奏したり歌ったりする時も、音を出した後、ぴったり一緒に音を止めることで、親子の体のリズムがシンクロします。

体がシンクロすると、親子の心もシンクロします。

子どもが小さな頃、体と心を沢山シンクロさせた親子は、いつまでも心が重なります。

4 音符の横に振り仮名をふらない

 早く演奏できるように、と、音楽の苦手な子の楽譜の音符の近くに、ドレミ…と片仮名で振り仮名をつける場合がありますが、これは、とても勿体ないことです。

 リコーダーで主に使う音符は「ドレミファソラシドレミ」の10個です。

10個の記号といえば「あいうえおかきくこ」と同じです。

子どもたちに、君たちは「あいうえおかきくこ」という10個の記号を簡単に覚えられたのだから「ドレミファソラシドレミ」の10個も簡単に覚えられるはずです、と言うと、納得して頑張ろうとします。

 本当は、「あいうえおかきくこ」の記号はそれぞれ違う形なのに、「ドレミファソラシドレミ」は全部同じ形という違いがあるので、覚えるのは5倍くらい苦労するのですが、簡単だと思った子は、脳がそう信じ込むので簡単に覚えてしまいます。

5倍苦労すると言っても、50個分なら平仮名全部と同じ量です。

 授業の終わりに子どもたちが感想を書いてくれたのですが、「楽譜が読めるようになって音楽が好きになった」と書いてある子が思いのほか沢山いて、無理をさせてよかったと思いました。

 音符の近くに振り仮名を振ってあると、振り仮名だけを見るので、いつまでも音符が読めるようになりません。これは、漢字や英語でも同じです。

 どうしても振り仮名が欲しい場合は、他の場所に書いておいて、わからなければ、すぐにそこを見るというシステムにすればよいでしょう。

「ドレミファソラシドレミ」を書いたカードを別に作っておいてもいいし、楽譜の裏側に書いてもいいでしょう。

国語などの教科書の場合は、漢字の横に振り仮名を書くのではなく、ページの下の方に書いておくだけでも効果は表れます。

 音楽の授業が何の役に立つのか、とか、数学を勉強しても社会に出てから使わない、と言う人がいますが、それは、勉強から逃げていた人の言い訳です。

苦手だけど何とかしてやろう、と、少しだけ工夫することで、すべての科目が、自分の能力を伸ばすことに繋がっていることがわかります。

何とかしようと少しだけ工夫することで全体のつながりが見えてくるというのは、大人になってからの仕事でも、同じだと思います。


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