チャンスは一度だけ

 私の勤めていた町では、平日に、すべての学校の6年生を陸上競技場に一堂に集めて、陸上競技記録会が行われます。

 6年生全員が選手として参加するので、どの学校でも、そのために2、3ヶ月に渡って、朝、体育の時間、放課後と、6年生はそれぞれの競技の練習をします。

 どの子も、まじめに練習に取り組み、その結果、トラック競技では全員が記録会で自己ベストを更新し、難しいフィールド競技でも、ほとんどの子が自己ベストを出しました。

彼らは、たった一度のチャンスである本番のこの日に、ベストパフォーマンスをしたのです。

 大人にとって、練習を一所懸命しても、本番で自分の持っている力を100%出すことは、なかなか難しいものです。

でも、14才以下の子どもは、毎日ていねいに練習を積み重ね、しっかりと準備をしたという自覚を持つと、必ず、たった一度しかないチャンスである本番で最高のパフォーマンスをします。

 14才までに、何かをしっかりと練習して、たった1度のチャンスを生かす経験をしておくと、それは心の奥にしっかりと根付いて、大人になっても自信を持って努力をするようになります。

 陸上大会から帰ってきた子ども達には、次のように話しました。

 「チャンスは何度も来るから大丈夫、という大人がいるけれど、それは間違いだ。

いろいろな、違う形のチャンスというのは人生で何回か来るけれど、同じ形のチャンスは一度しか来ない。

陸上大会は、今日の一度だけで、もう二度とない。その、たった一度のチャンスに、君たちは自己ベストを出せた。

これは、たった一度訪れるチャンスのために、君たちが2ヶ月間、毎日、目標をもって、工夫をしながら、1回1回ていねいな練習をしたからだ。

チャンスは一度しか来ないけれど、努力した人には、必ずチャンスは一度来る。

いつチャンスが来ても、それを生かせるように、いつでもしっかりと準備をしておこう。」

 ただ単に成功経験をさせるのではなく、準備したから成功したという成功経験を、若いうちにたくさんさせたいと思います。


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