まっすぐ、気をつけ
毎年、ラジオ体操の講師が学校に来て、6年生に、体操の正しいやり方を教えてくれます。
この年も、暑さ最高潮の体育館でしたが、子ども達もがんばり、講師のみなさんから、「態度がとてもよい」とほめていただきました。
子ども達の後ろから、ずっと見ていたのですが、A君の態度が気になってきました。
「気をつけ」の姿勢がだらしなくて、まじめにやっているように見えないのです。
前にまわってA君を見ると、目は真剣です。
でも、周りの子がまっすぐに、ぴしっと立っているのに、A君の「気をつけ」には、全くやる気が見られません。
休憩時間にA君に、そのことを話しました。
「やる気、あるの?」
「はい」A君はまじめに答えます
「全然やる気のない態度に見えるんだけど」
「え?」A君は何のことかわからず、驚いています。
そこで、気をつけの姿勢が悪くて、ふてくされているように見えることを、A君に教えました。
A君は自分で直せると言い、休憩後の後半は、とても良い姿勢で過ごしました。
A君の他にも、体操の時、やる気の見えない子が何人かいました。
でも、後でその子達と話してみると、みんなやる気を充分に持ってやっていたことが、その言葉や声からわかりました。
どの子も、やる気があることを、体で表現できなかったのです。
それは、ほんの少しの体の傾きや、手足の動きの問題です。
気をつけの時に足がそろっていなくて体が曲がっている。
体操の時に、肘や指先が伸びていない、左右の動きがあっていない。
「たったそんなこと」なのですが、これが「やる気のなさ」を表しているように見えるから、不思議です。
不思議といっている場合ではありません。
この子達は、自分の知らないところで、ほんの少しのことで大損をしているのです。
お子さんの姿勢や所作を、一度、そういうつもりで見てください。
そして、少しだけ違っている姿勢や所作を直してやってください。
ちょっとだけ直せば、すべてがよくなります。
子どもの持っている素晴らしい所が誤解なく人に伝わるようにしてやることは、大人の役目です。