夢は仕事の中に…夢を持つ授業

 6年生の総合的な学習の時間に「夢を持つ」という授業をしてきました。

授業の成果が出たかどうかは、20年後、30年後、彼らが夢をかなえる年齢にならなければわかりませんが、卒業式では、「自分はこうなりたい」と語って、小学校を巣立ってくれました。

 授業は、この3つを行います。

1 職業を知る

2 思いやりの心を知る

3 自分の強みを知る

 夢は何ですか、と聞くと、いろいろな答えが出てきます。

大金持ちになりたい、世界中を歩き回りたい、すてきな人と恋をしたい、…。

どれも、とても大事な気持ちです。

 お金持ちになると、よりよい暮らしができるばかりでなく、人を助ける力が増えます。

世界中を歩いて、世界がどうなっているかを知ると、自分の役割もはっきりしてきます。

素敵な人に出会い、結婚して子供を育てる。

これは、人類の一人として、とても大事な仕事のひとつです。

時々、お金や恋愛のことを子供か口にすると、子どもの夢とは関係ないと言う人がいますが、私は、夢をかなえるための大事な要素だと思います。

 ただ、この夢をかなえるために、ただ、宝くじが当たるのを待っていたり、偶然を待っていたりするのは、夢とは関係がありません。

自分の仕事をしっかりと持ち、その中で、自分を磨き、お金を稼ぐ。そうすることで、自分の望みがかなっていくからです。

 そこで、授業では、自分はどんな仕事をすれば幸せになれるのか、そのためには、どんなことをすればいいのかについて考えていきます。

読者の方からのお便り*************************************

夢について考える特別な時間を子どもに持たせてあげるのはいいですね。

どんな夢を持っているのか、言葉や絵にしてみないとわからなかったりしますよね

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 6年生くらいの年齢になると、夢を持った日から、生活の様子が変わってくるようです。

 では、授業の開始です。

 まず、やってみるのは、将来やってみたい仕事を書き出すことです。

 子供たちが書き出したものを見ると、同じような内容が並んでいます。

サッカー選手、野球選手、先生、保育士、タレント…。

 中には、「父の後を継いで、今の会社をさらに大きくする」「小さな頃、大病をした時、自分の命を救ってもらったので、自分もお医者さんになりたい」というような明確な夢を持っている子もいます。

でも、ほとんどの子は、幼稚園児がやりたい仕事トップ10と変わらない職業を書きます。

これは、当然のことで、6年生といえども、知っている職業は限られているからです。

 実際、すべての子供が目の当たりにしている職業は「教員」だけです。

お父さん、お母さんの仕事場に行ったことのない子も多いはずです。

 そこで、この授業でまず最初にやることは、「職業探し」です。

 みんなで職業を探して、世の中には、こんなにたくさんの仕事があるのか、と驚くことから始めます。

 今年の6年生も、短い時間で何百もの職業を見つけ出し、「仕事って、こんなにたくさんあるんだ」と驚いていました。

お子さんは、いくつの職業を知っているでしょうか。

読者の方からのお便り*************************************

私自身もいまだに「へ〜そんな仕事もあるんだ〜」って思うことがあります。

でもどんな職業に就くにしろ、その仲間から信頼される人間になってもらいたいですね。

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 私も、未だに初めて聞く職業がたくさんあって驚きます。

本当に多くの人の力で世の中が動いているのだと感動します。

 では、授業の続きです。

 今年は、学年(2クラス)合同で授業をしているので、職業探しも、1組と2組の対抗戦です。

それぞれのクラスにパソコンを1台ずつ渡しました。

どちらも大画面テレビにつないであります。エクセルに思いついた職業を打ち込んでいくので、どちらが今どれだけ多いか、一目でわかります。

エクセルに入れれば、そのまま整理したりするのに便利です。

 30人1チームで知恵を絞るので、そのままやらせても、たくさんの職業が出てきますが、探すヒントを2つ教えました。

 1つめは、「ひとつの職業から連想する」です。

 サッカー選手という職業からは、ユニフォームを作る人、シューズを作る人、ボールを作る人、その原材料を作る人、それらを売る人、運ぶ人、スタジアムの掃除をする人、売店の人、芝生の管理をする人、…サッカーをよく見ている子は、スポンサー企業にまで連想が広がります。

 もう一つの方法は、「身の回りから連想する」です。

服から文房具まで、身の回りにあるものは、多くの人が作り、運び、売っているものばかりです。

鉛筆1本が自分の手元に届くまで、どんな人の手を介してきたのかを想像するだけで、多くの職業を見つけることができます。

 食べ物を見れば、農業、水産業ばかりか、工場でつくられているものもけっこう多いことがわかります。

店の種類はたくさんあるし、デパートなどを想像すると、店の中で色々な役割をしている人がいることがわかります。

体に注目すれば、理容室、美容院、病院・薬局で働く人なども出てきます。

こういう連想形式にして、友達とわいわい言いながらやれば、百や二百は簡単に出てきます。

ぜひ、家でも、親子でやってみてください。お父さん、お母さんも気づかなかった職業が出てくるかもしれません。

 時間の許す限り職業探しをし、その中から自分のやりたい仕事を、やりたい順に50個書き出します。

 50個は多すぎると思いますか。でも、この多さに、実は意味があります。

読者の方からのお便り*************************************

今、6年の息子に話し、1つの職業から連想する職業がいっぱいあることに驚きました!

人のために役立っている人がいっぱいいるんですね!

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 さっそく試していただいた読者の方もいらっしゃいました。

このお母さんの素敵なところは、職業が多い点に驚くと同時に、人のために役立っている人がたくさんいるのだということを息子さんと話している点です。

「この世界は、それぞれの場所で全力で働いている人の力、心、やさしさでできている」ということを子供たちに知ってほしいというのも、この授業の大きな目的のひとつです。

 さすがに50は多いという場合は、50に達しなくてもいいのですが、できるだけたくさん書くことが重要です。

実は、ここが、この授業の最も大事なところだからです。

 では、まず、1番のますに書いた職業を見てください。たとえば、漫画家だとします。

 そうしたら、漫画家になった時の自分を想像します。

どんなふうに幸せになっているでしょう。

 「有名になっているのがうれしい」、そう思ったら、別の表の「夢が叶った時の私の姿」のAに「有名になっている」と書きます。

「お金持ちになっていてうれしい」そういう幸せも感じるかもしれません。

そう思ったら、表のBに、「お金持ちになっている」と書きます。

「24時間、誰にも邪魔されず大好きな漫画が描けてうれしい」と想像したら、表のCに「24時間大好きなことをしている」と書きます。

「漫画がたくさん売れたら、みんなに伝えたいことが伝わる、それがうれしい」と想像できたら、表のDに「多くの人に考えを伝えられる」と書きます。

「もし自分の漫画を読んで、悩んでいることが解決し明るい気持ちになってくれる人がいたらうれしい」と思ったら、表のEに「人の気持ちを明るくさせている」、表のFに「悩んでいる人を助けている」と書いていきます。

 こうしていくことで、自分が漫画家になりたい理由や、なれた時どんな幸せな人生が待っているかというような理想の自分の人生がなんとなくわかってきます。

 理想の自分の生き方を知り、それに向かって努力をする。

これが「夢を持つ」ことだと私は考えます。そのために、どんな職業を選べばよいか。

そんなふうに職業を見つめる力を持つことが、この授業の一番の目的です。

 では、作業を続けましょう。

 AからFの右側に「1」と書いてください。1番目に選んだ職業で幸せになれること、という意味です。

 同様に、2番目に書いた職業でも、幸せな姿を書き出しましょう。

幸せな姿を、G、H…と増やしていきます。1番目の漫画家と同じことが出てきたら、その欄の1の横に、2と書いてください。

 50番目の職業までやってくると、Aには30この職業があてはまるり、Bには10こというように、差が出てきます。

 これを、数字が多い順に、最後の表「理想の人生を歩く」に、「人に喜ばれる」「金持ちになる」「好きなことをして過ごす」…というように書き写します。

これが「叶えたい理想の自分の姿」すなわち「夢」です。

 さて、職業について考える時に、もうひとつ必要なものがあります。

 それは、自分の「強み」です。なぜなら、どんなにやりたくても、どんなに頑張っても、就けない職業があるからです。

 A君は、オリンピックを見て、ウサインボルトに憧れました。

自分も陸上選手になって、ボルトのようにみんなに夢を与えたい。

でも、A君はボルト選手のようにはなれません。A君は、クラスでも足が遅い方だからです。

 短距離を速く走るには、白い筋肉がたくさん必要です。

白い筋肉の量は、生まれつきのものですので、そう簡単には増えないそうです。

小学校の段階で周りの子より短距離走が遅いA君が、ボルト選手のようにになるのは無理です。

だから、うかつに「がんばればボルトのようになれる」と言ってはいけません。

 長距離に必要な赤い筋肉は、鍛えて増やすことができるので、A君はマラソンでオリンピックに出られる可能性はあるそうです。

自分の苦手なことを克服していくのも人生の醍醐味ですが、せっかく職業にするのなら、自分の「強み」を生かした方が成功する確率も高いし、楽しいことがたくさん起こりそうです。

 「勉強が人よりできる」「運動が人よりできる」

 もちろん、これは大きな強みです。でも、こういうことだけが「強み」ではありません。

 「あいさつの声が大きい」「そうじの時、褒められることが多い」「早起き」「いつもにこにこしているとよく言われる」「食べ物の好き嫌いがない」「肩もみがうまい」「弟、妹の面倒を見るのが好き」どれも、みんな大事な「強み」です。

 自分の強みを、トップ50の表に書き入れます。今回も50個うめることが大事です。

 でも、これはなかなか難しいことです。

ですから、授業では、みんなでお互いの強みを発見することにしました。

 友達の強みを見つけてメッセージカードを送りあいます。

友達から、たくさんカードをもらったと、みんな大喜びです。でも、これでも50個は難しいです。

 そこで宿題にして、家の人にも考えてもらうことにしました。

子供の中には、家の人が自分の強みをたくさん見つけてくれたと、とてもうれしそうな子が何人もいました。

ぜひ、家族で、「強み」の見つけっこをしてみてください。

 さて、強みを見つける授業の中で、B君がつらそうな顔でこんなことを言ってきました。

「僕は運動があまり得意じゃないけど、体育が好きだから、体育の先生になりたいんだけど、無理でしょうか」答えは、「大丈夫、もちろん、それは君の強みです」。

 世の中には、B君と同じように「好きだけど上手にできない」という子供がたくさんいます。

もちろん、そういう子が、スポーツや芸術家のプロになれる可能性はとても低いでしょう。

でも、それを子供に教える指導者になるのであれば、逆にそれは「強み」になることも多いと思います。

 下手だけど好きならば、少しでも上手になるように熱心に研究します。

そうして手に入れた上達法は、そのまま素晴らしい指導法となります。

また、自分自身がへたくそで苦労したり努力した人は、へたくそな子供の気持ちがよくわかります。

これこそ、みんなを体育好きや芸術好き(もちろん、国語好き、算数好きも…)の子供を上手に育てるよい指導者の条件ではないでしょうか。

 ですから、B君が体育を好きでいる限り、B君はとても素晴らしい体育教師になる可能性があるのです。

最近、スポーツのトッププロをゲストティーチャーに招いての体育の授業が流行っています。

もちろん、これも素晴らしい方法です。が、本当に体育好きの子供を増やしているのは、毎日こつこつと指導法を研究している「自分自身は体育があまり得意でない」先生方なのではないかと思います。

 さて、お子さんの「私の強みトップ50」の表は全部埋まりましたか。この授業を終えたCさんの感想です。

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 今日、総合の授業で他の人の強みも書きました。私のところにも、私の強みを書いてくれたカードが何枚も来て、とてもうれしかったです。

その中には、私が見つけていない強みもありました。

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 自分のよさは、案外自分ではわかりません。

それに、人から「よい」と言われるのは、とてもうれしいことです。「強みトップ50」を、ぜひ家族でやってみてください。

 最後の授業は、「理想の人生を歩く」というカードを使っての「相談ごっこ」です。

 「理想の人生を歩く」というカードの下には、左に「やってみたい職業」の欄があるので、「やってみたい職業トップ50」の表から、ナンバーワンから順に書けるだけ書き写していきます。

同じく下の右側には、「自分の強み」の欄があるので、これも「トップ50」の表から、できるだけたくさん書き写します。

下の真ん中には、「理想の自分(夢が叶った時の私)」の欄があるので、ここには、「夢が叶った時の私の姿」を見て、自分の理想の姿を書き入れます。

これを持って、いろいろな友達のところに行き、自分の「夢を叶えた自分の姿」「夢を叶えるための職業」が、本当はどんなものなのかについてアドバイスをもらいます。

 今回は、2クラス合同で行ったので、前半は1組の子供たちが2組の子供たちに相談しました。

後半は逆です。

できるだけ多くの友達にカードを見せて、いろいろな意見をもらうのが大事です。

 「夢は個人のものだから、人に、自分の本当の夢は何なのかを聞くなんて変だ」と思われるかもしれません。

でも、人間というのは、自分のことはよくわかっていないことが多いのです。

よくわかっていないくせに、「自分はこういう人間だから、こう生きる」なんて思い込んでしまって、自分の可能性を狭めてしまうことはよくあるのではないでしょうか。

 A君は、将来有望なサッカー少年です。

だから、この授業が始まった半年前の将来の夢は「プロサッカー選手」でした。

 授業がすべて終わった時、A君はカードに、このように書きました。

○夢を叶えた自分の姿…子供たちに夢を持ってもらい、どんな人からも尊敬されている

○夢を実現するための職業…プロサッカー選手、警察官、弁護士、パイロット、消防士、海上保安官、通訳

 どれもA君に似合う職業だなあと思います。

 声優やアナウンサー志望のBさんの最後のカードには、夢を叶えた自分「人の役に立っている、みんなを笑顔にしている」と大きく書いてあり、職業欄には、保育士が加わりました。

Bさんは、声優やアナウンサーを目指しているだけあって、声も綺麗ですし、音読も上手です。

保育士のBさんに毎日読み聞かせをしたもらって育った子は、きっと素敵な人に成長するでしょう。

「子供の夢」は、現在マスコミの影響を大きく受けているので、ごく身近に自分の力を最大限に発揮できる職業があることに気づきにくいでしょう。

 「みんなが笑顔になって、信頼される仕事をしている」姿を、夢のかなった自分の姿と考えた漫画家志望のCさんの職業欄には、友達からのアドバイスで「シェフ」が加わりました。

Cさんは漫画を描くのが上手なばかりでなく、料理が好きで上手なことを友達が引き出してくれたのです。

自分の才能は意外に他人が知っているものだし、たった一つしかないのでもありません。

Cさんが、どんな職業に就けたとしても、Cさんの才能は発揮され「みんなが笑顔になって、信頼される仕事」をすることができるでしょう。

 夢の職業をめざして努力を続けることはとても大切です。

また、そうして努力する毎日は、実は人生の中でいちばん楽しい期間でもあります。(多くの人は、後でそれに気づきますね)

 夢の職業に就くことそのものは、ゴールでもないし、夢を叶えることでもありません。

いちばん就きたかった職業に就けても就けなくても、自分の仕事をすることで理想の自分になれるかどうかがいちばん大事なことで、理想の自分になれた時こそ夢を叶えた時だと、私は考えています。

 お子さんに「そのタイミング」が来たら、ぜひ、お子さんの将来の夢や、お父さん、お母さんが抱き続けてきている夢について、家族で語り合ってみてください。

 「私の強みトップ50」は家族でやると面白いかもしれません。

読者の方からのお便り*************************************

 現在長女は小2で、道を決めるのはまだ先ですが、職業について一緒に考える良いツールがないか探していました。

ぜひ、カードを送っていただけないでしょうか?

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 トップ50の表はいろいろなタイトルをつけて使えますので、ご家庭でもテーマを決めて楽しんでください。


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