中1前の春休み
もし、お近くに小学校を卒業する子がいたら、ぜひ伝えてください。
私が卒業生に毎年言っていることです。
卒業生のみなさんへ************************************
卒業は、少し寂しくもありますが、小学生でなくなる解放感は、きっとそれを上回るものでしょう。
また、春という季節も、心うきうきして、家の中にじっとしてはいられなくなります。
全国のほとんどの6年生は、規則や宿題から解放され、春休みは遊びます。
でも、君は、外に出てはいけません。
3週間後に始まる中学校生活に向けて、徹底的に勉強してください。
この3週間、わき目もふらずに勉強すれば、大きく人生は変わるのです。
理由は2つあります。
1つめは、3週間後、君が新世界に立つからです。
いくつかの小学校が集まる大きな中学校では、君のことを知らない同級生とたくさん出会います。
そんな新世界の最初のテストで良い成績を納めれば、君は多くの人から「あの人は頭がいい」と思われます。
この「思われる」というのが大事です。
みんなが思うことは、いずれ自分も思うことになります。
知らないうちに、自分自身が「自分は頭がいいのだ」と思い始めるのです。
そう思った人間は、頭のよさをキープするための努力を怠らなくなります。
「努力を怠らない」と言うと大変なことのように思えますが、実際には、「努力することが楽しく」なります。
住んでいる地区の中学校に行ってさえ、そうなるので、受験したり引っ越したりして、他地区の中学校に1人で入学したなら、なおさらです。
理想の自分に変身する、とても大きなチャンスが目の前にあると思ってください。
でも、もしかしたら、6年生のクラスがそのまま中学1年のクラスになるという地区に、君が住んでいるかもしれません。
それでも、中学校の先生は、君のことをよく知りません。
そんな君が最初のテストで良い成績をとったら、先生方は君を頭のいい子だと信じ込みます。
同級生にそう思われるより、先生にそう思われる方が効果は大きいかもしれません。
先生から「できる子」と思われることによるメリットは、計り知れないでしょう。
さて、理由の2つ目は、最初に言ったことです。
ほとんどの6年生は、春休みに遊びまわります。
「卒業」という言葉のマジックに惑わされ、開放的になって、うきうきとした気分で、何となく春休みを終えてしまう子は、かわいそうです。
この2週間、一歩も外に出ず勉強をし続けた子は、ものすごいスピードの助走を手に入れているからです。
ですから、そんな中で君が頑張るということは、居眠りをしているうさぎを追い抜く亀のように、簡単にみんなに勝ててしまうということです。
これは、ものすごく大きなチャンスです。
これから先の勉強は、(本来の勉強の姿ではありませんが)、順位という結果を伴う学習になります。
中学、高校を卒業した時、行きたい場所、なりたいものの「椅子」が、行きたい人、なりたい人の数よりも、多いとは限りません。
夢の、わずかな数の「椅子」には、上位から順に座っていくのです。
マラソンを見ていると、最初にトップグループができた時、そこにいない人は優勝できません。
勉強のスタートダッシュは、小学校の卒業式の日から中学校での最初のテストまでの期間です。
ここで、よい成績がとれれば、自信がみなぎり、その先も順調に中学校生活が送れるでしょう。
そのまま、順調に学習が進んだ後の、中3の春休みや、高3の春休みは、小6の春休みの何倍も長く、何百倍も楽しいものです。
6年生の春休みには、友達と隣の町に行くのが精一杯でも、高3の春休みは、アルバイトでお金を貯めてあれば、友達と海外に行くこともできます。
6年生の春休みを、勉強して「貯金」しておけば、6年後には、何百倍もの利子がついて自分のもとに返ってくるのです。
ほとんどの6年生は、これに気づかず、6年生の春休みを無駄遣いしてしまいます。
6年生の春休みほど、「時間の投資」が有効に「利益」を生む時はないのです。
では、やる気になった君に、何をすればいいかを教えます。
もともと勉強が嫌いではない君なら、好きな科目の中学の教科書を徹底的に読んでください。
まだ教科書が配布されていなければ、兄弟、近所のお兄さん、お姉さんから譲ってもらったり、書店で教科書ガイドを買ってきましょう。読むだけでいいので、好きな科目を1年分予習してしまいましょう。
好きな科目がない、勉強が好きではないという君は、3つのことをしましょう。
1つめは、中1の数学の教科書の問題を解くこと。
といっても簡単には解けないでしょうから、ちょっと考えて解けないと思った問題は、「教科書ガイド」のようなものを買ってきて、解き方をノートに丁寧に写しましょう。
理解できなくても、丁寧に写すだけで効果はあります。
2つ目は、英単語をたくさん覚える。
3つ目は、新聞の朗読をする。
これは、大きな声でやってください。一つに飽きたら次のもの、というふうに、自分を飽きさせないように、この3つを上手に繰り返し、1日中勉強しましょう。
私は、6年生の春休みに、これを実行しました。
引越しした関係で、まったく知っている人のいない中学に入ることになって、遊ぶ相手もいないこともあり、一歩も家から外に出ずに勉強しました。
おかげで、最初の試験で学年で1番になりました。私の本当の実力を知っている人は誰もいなかったので、同級生も先生も、私がもともと頭のよい子だと勘違いしました。
周りの人や自分自身の勘違いは、3年間続き、私はたくさん勉強することが「普通のこと」になってしまい、希望の高校に簡単に入ることができました。
あの春休みがなかったら、私は大学にも行っていなかったでしょうし、この仕事もしていなかったと思います。
分度器や扇子をイメージしてください。中学生になる今は、分度器や扇子の根元のところにいます。
私の人生は、たった3週間、徹底的に勉強することで、その後の人生の選択肢が大きく広がりました。
分度器や扇子の根元のところで少しだけ進む角度を上向きにするだけで、その道は、自然に高い所につながるのです。
さらに、14歳までのほんの少しの期間、徹底的にがんばるだけで、この先の人生の選択肢の中に、自分の望むものを沢山いれることができます。
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読者の方からのお便り***************************
そんなに春休みが大事だとは思っていませんでした。
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うきうき気分を満喫するのは大事なことですが、心が舞い上がっている時こそ、その時間の本当の大切さについても考えておきたいところです。
読者の方からのお便り***************************
何百倍もの利子・・・確かにそうです。
「自分に投資できる」というのは、とても恵まれていることだと思いますが、子供にはその価値がなかなか伝わりにくいです。
でも、大人(親)にしか伝えられない価値なので、あきらめず粘り強く、伝えていく努力をしたいです。
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教育というのは、すぐに効果の見える物ではありません。
でも、親のねばり強さは、じわじわと確実に、子どもの心と体に染み込んでいっています。