造花に生まれて


造花に生まれた

僕は散らない

どんなに強い風にも

ゆれることなく 千切れることなく


造花に生まれた

僕は枯れない

陽の光さえ浴びなければ

けして色あせることはない


造花に生まれた

僕は死なない

いつまでも果てぬ永遠の命を

人はうらやむ


生まれた時から花だった

頂点から人生が始まった


種から芽が出て花を待つ

胸のときめく草の時代

未来をのぞむ葉先の躍動

どんな味わいなのだろう


ピークが過ぎて花びらを落とす

種を生み出す実を待つ時代

未来に託す枯れ色の落ち着き

いつまで待ってもその時は来ない


造花に生まれて

咲き続けていく

世話する人がいなくなれば

ほこりも拭わず生き続ける


いつまでも果てぬ永遠の命を

人はうらやむ


              『文芸やいづ』第18号(平成19年度) 掲載

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