泉谷 しげる


DISCOGRAPHY Part 01 (1971 - 1975)



1

泉谷しげる登場

1971

★★★★

 10月25日『泉谷しげるリサイタル』のライヴ・レコーディング.古井戸とピピ&コットがゲスト参加しています. ELEC によれば発売後2週間で8,000枚,3カ月で30,000枚という売上げを記録したという泉谷さんのデビュー・アルバム.当時,全く無名の新人のデビューが LP であり,しかもライヴであるというのは,極めて珍しい事だったらしく,そういった意味でも話題を呼びました.この他にも ELEC においてはよしだたくろうに続く『フォークの新星』として売り出そうというので,出身地を詐称(?)したり,いろんな事やったみたいです.はっきり言って,歌・ギターともに素人の域を出ていないような感じではありますが,そのパワーはこの頃からかなりのモノだった事を証明しているアルバムだと思います.オープニングの『白雪姫の毒リンゴ』(名曲だと思います)は作詞作曲を門谷憲二氏,『義務』とラストの『人生を越えて』は作詞を岡本おさみ氏,作曲・編曲を当時 ELEC の社長だった淺沼勇氏が担当しており,泉谷氏を売り出そうとする ELEC の意気込みみたいなものが感じられます(他の曲は全て本人の作詞作曲).ラスト,「ありがとう,ありがとう!」と泣き叫ぶ泉谷さんの姿が,現在からは考えられないほど初々しいです(笑).

2

唄の市 第一集

1972

★★★

 エレックが新人アーティスト育成のため発足したコンサート・ムーブメントの実況録音盤.ゲスト扱いの小室等と六文銭・よしだたくろうを別にすると,メインはやはり古井戸と泉谷さんで,『戦争小唄』・『愛しているよ』・『帰り道』の3曲が,アルバム・ラストに収録されています.『戦争小唄』はその過激な歌詞で,記念すべき泉谷さん初のレコ倫『要注意歌謡曲』指定,放送禁止歌となりました.

3

春夏秋冬

1972

★★★★★

 加藤和彦氏がディレクター・アレンジャーとして参加しているセカンド・アルバムで,バックには加藤氏の他,高中マサヨシ(正義)・つのだひろ・仲井戸麗市・伊藤明夫(広島フォーク村村長)の各氏等が参加しています.実はこのアルバム,中学生になってフォークにハマった私が2番目に買った LP なので非常に思い入れがあるのですが(ちなみに1枚目は『古井戸の世界』,3枚目は『よしだたくろう・オン・ステージ・ともだち』でした),贔屓目に見なくても当時のニュー・フォークのアルバムの中でも傑作だったと思います.『地球がとっても青いから』・『鏡の前のつぶやき』・『街はぱれえど』・『出船』なんかは初期の名曲だと思いますし,タイトル曲『春夏秋冬』と『黒いカバン』は,未だに泉谷さんの代表曲とされています.

4

野音 唄の市

1972

★★★

 1972年5月6日,日比谷野音での収録.LP 2枚+シングル1枚組.D面に泉谷さんの5曲(『戦争小唄』・『街はぱれえど』・『黒いカバン』・『鏡の前のつぶやき』・『春夏秋冬』)と,シングルE面に全員による『さなえちゃん』が収録されています.

5

地球はお祭りさわぎ

1972

★★★★

 泉谷さん自身のプロデュース・アレンジによるサード・アルバム.というわけで,『初恋純情編』・『ヒマ人クラブ』・『ほら吹きひとつ』・『大通りを横切って』と,最も本人が楽しんでやりたい放題やっている感のあるアルバムですが,この人の持ち味である『毒』という点においては,前作『春夏秋冬』に収録されていた『黒いカバン』(作詞は岡本おさみ氏)・『ねどこのせれなあで』の方が一枚上かも.... それよりも.目立たないようですが,『つなひき』・『街からはなれられない』・『よせてはかえす』・『陽が沈むころに』・『終りをつげる』といった一連の作品にキラリと光るモノを感じました.

6

人生はピエロ
カメカメ合唱団

1973

★★

 当時ニッポン放送の『オールナイト・ニッポン』でDJとしても活躍していた泉谷さんが,同社の亀渕昭信氏と組んで結成した冗談ユニット『カメカメ合唱団』の,最初にして最後のアルバム.泉谷さんがメインで参加しているのは,亀渕氏が歌う『人生はピエロ』と,本人の歌う怪曲『哀愁の長万部』.




7

光と影

1973

★★★★★

 前作でやりたい放題やっていた泉谷さんでしたが,このアルバムでは軌道修正.この時期,「『春夏秋冬』に続くヒット曲を」と, ELEC からの要請がきつかったらしく,本人もかなりプレッシャーを感じていたらしいです.今回は,プロデュースに ELEC 社長の淺沼勇氏が復活,またアレンジャーとしては,『春夏秋冬』に続いて加藤和彦氏が2度目の登場.それに加えて,中川イサト・三保敬太郎・生田敬太郎の各氏が参加,また,バックには加藤氏率いるサディスティック・ミカ・バンドが全面的に参加しています.オリジナル・アルバムは,『序曲』に始まり『終曲』に終る,疑似組曲形式でしたが,後に FOR LIFE から再リリースされた際には,『序曲』とそれに続く『個人的理由』,『終曲』の3曲がカット,曲順も大幅に入れ替えられてしまいました.何と言っても納得がいかなかったのが,『個人的理由』のカットで,実は私,泉谷さんの全作品中この曲が最高に好きでしたので,この曲のスタジオ・バージョンが聴けなくなってしまった事で,このアルバムの魅力を半減させてしまったと思います.それはさておき,二番煎じの感はぬぐえませんが,会社の期待に応える形となった『春のからっ風』,『戦争小唄』に続く放送禁止歌『おー脳』,さらにこの頃のステージのハイライトだった『ブルースを歌わないで』・『国旗はためく下に』(この曲もバージョン違いが残念でしたが)と,『名曲』と呼ばれる曲が数多く収録されているアルバムでもあります.

8

ともだち始め ―ふたりの詩と唄―
西岡たかし+泉谷しげる

1973

★★★

 アナログ2枚組で,1枚目が西岡氏,2枚目が泉谷氏の構成になっています.但し,泉谷氏の2枚目には,西岡氏と中川イサト氏が参加しているのに対し,西岡氏の1枚目には中川氏と1曲のみ渋谷毅氏が参加していますが,泉谷氏は参加していません.何だかなぁ....

9

唄の市ギター・スタイルブック

1973

-

 ELEC によるギタースコア/教則本付きのスタイルブック.『黒いカバン』と『春夏秋冬』が収録されています.

10

黄金狂時代

1974

★★★★

 『地球はお祭りさわぎ』に続き,再度泉谷さん自身がプロデュースにチャレンジした通算5作目.ディレクターは伊藤明夫氏(元広島フォーク村村長),バックをラスト・ショー及びイエローが担当してますが,イエロー参加の『眠れない夜』・『火の鳥』・『Dのロック』の3曲は,後のこの人の方向性を伺わせる出来となっています.1970年代前半のニュー・フォーク・ブームが一段落した感のあるこの時期,多くのフォーク系のアーティストが歌謡曲に接近もしくはロックと融合することによって,『脱フォーク』化していきましたが,この人あたりは後者の典型だったと言えると思います.ある意味でフォークに訣別するつもりだったと思われる(その要因としては ELEC に対する不満もかなり大きかったと思われます)泉谷氏でしたが,この後,小室等・吉田拓郎・井上陽水の各氏と FOR LIFE を旗揚げしました.

11

流行歌 傑作選

1974

-

 エレックによる全曲ライヴによるアンソロジー.泉谷さんの『黒いカバン』(1972年5月 『野音唄の市』)と,カメカメ合唱団の『哀愁の長万部』(1973年8月 厚生年金『カメとしげるの二人会』)が収録されています.

12

初期の泉谷しげる・メモリアル

1975

-

 ELEC からリリースされた唯一のコンピレーションですが,単なるベスト・アルバムではなく,『春夏秋冬』・『白雪姫の毒リンゴ』・『おー脳』等の代表曲の別テイクや,アルバム未収録の『乱・乱・乱』,未発表曲『先天性欲情魔』・『二度とない人生だから』が収録されるなど,聴き応えのある内容となっております.