井上 陽水


DISCOGRAPHY Part 1 (1972 - 1978)



1

断絶

1972

★★★★

 この人に関しては,1970年代初頭のニュー・フォーク・ブームの末期に出て来た感じで,また ELEC と URC という当時のフォーク界の2大勢力のどちらとも関係ないところから突然現われたような感じがしていて,それまでのフォーク勢が好きだった私としては,ちょっと違和感感じる存在だったのですが,その後この人と荒井由実さんの登場・活躍によって,フォーク・ブームは終わりを告げ,ニュー・ミュージックの時代へ移項して行きます.だからというわけではないのですが,この人に関しても荒井由実さんの場合と同じで,個人的にはファースト・アルバムが一番好きで,あとはだんだん大人しくつまらなくなっていってしまったような気がしています.このアルバムに収録されている曲目に関しても,後の作品群にくらべるとちょっと素人っぽさが抜けていない感じなのですが,それが逆に魅力的で,それはこの時代のフォーク勢全般に通じる魅力だったとも言えると思います.

2

陽水II センチメンタル

1972

★★★★

 前作の延長線上にある作品ですが,前作に感じられた素人っぽさが徐々に抜けていってる感じです.個人的には『東へ西へ』って初期の名曲だと思っていて,特に歌詞が好きです.

3

陽水ライヴ もどり道

1973

★★★

 よしだたくろうさんの『オン・ステージ・ともだち』や加川良氏の『やぁ』などと同様『フォークの時代』を感じさせるアコースティックなライブ・アルバムです.この年,拓郎氏は『ライブ'73』をリリースして一歩先にフォークからの脱皮を遂げていますが,陽水氏のサウンドもこの後変化していきます.また,このアルバムの最後に収録されている『夢の中へ』(栗田ひろみ主演映画『放課後』主題歌)は,陽水氏にとって最初のシングル・ヒットで,その後のブレイクのきっかけとなった初期の代表曲です.

4

氷の世界

1973

★★★★★

 日本初のミリオン・セラー・アルバムとしてあまりに有名な作品で,当然の事ながら陽水氏の代表作とされています.実のところ,この人が登場したとき,他のフォーク勢にくらべて歌謡曲っぽさを感じていたため,あまりいい印象をもっていなかったので,あまりまじめに聴いていなかったのですが,このアルバムの出来の良さには流石に唖然としました.それから,過去の作品を遡って聴き始めたわけですが,とにかくコンポ−ザ−としての技量が急激に花開いたような感じがしています.但し,この後正直言って,『良くできているけど以前の作品の方が面白かった』という感じに陥ってしまいました.そういう意味で,ニュー・フォーク・ブームの終焉と,ニュ−・ミュージックの時代の到来の分岐点となった作品だったと思っています.

5

二色の独楽

1974

★★★★

 ポリドールからの最後のリリースとなった作品.前作の延長線上にありながら,サウンド的にはさらに派手になった印象を受けました.先に書いた理由で,このポリドール時代の5枚のアルバムの方が以後の作品より気に入ってます.アナログ盤では,ジャケットを取り外すと特典のピンナップ・ポスターになるようになっていました.

6

陽水生誕―アンドレ・カンドレから陽水へ

1975

★★★

 陽水氏がブレイクしたため日の目を見た音源.アナログA面にアンドレ・カンドレ時代の3枚のシングル計6曲,B面に陽水時代に入ってからのデモ,ライヴ等未発表音源を収録.




7

GOOD PAGES

1975

-

 ポリドールからリリースされた初のコンピレーション.

8

Good Pages II

1976

-

 『GOOD PAGES』(7)の続編としてポリドールからリリースされたコンピレーション.

9

招待状のないショー

1976

★★★★

 小室等・吉田拓郎・泉谷しげる・井上陽水の4名によって作られた,日本初のミュージシャンによるレコード会社 FOR LIFE から,泉谷氏の『ライブ!泉谷 王様たちの夜」,小室氏の『明日』に続いてリリースされた移籍弟1弾.シングル・カットされた『青空,ひとりきり』もヒットし,アルバム自体もよくできているのですが,ポリドール時代の荒削りな素人っぽさが姿を消してしまっている点が,どうもつまらなく感じてしまうのは私だけだったのかしら? めちゃくちゃ大人しくなってしまった印象をうけました. 1975年を境に,海外においては AOR,日本においてはニュー・ミュージックの台頭などによって,ミュージック・シーンが急激につまらなくなって行ったような気がしていたのですが,私にとって陽水・ユーミンが日本におけるその象徴でした.こんなこと書いてごめんなさい.

10

CHRISTMAS

1976

★★★

 小室等,吉田拓郎,泉谷しげる,井上陽水の FOR LIFE BIG 4 によって製作された唯一の企画盤で, 30万枚限定でリリースされましたが,セールス不振で小室氏の社長退陣,拓郎氏の社長就任,そして後の泉谷氏離脱の遠因となったいわくつきのアルバム.陽水氏の『夏願望』,『WHITE CHRISTMAS』,『メリー・クリスマス』,そして4人の『今日のわざ』が収録されています.

11

東京ワシントン・クラブ

1976

★★★

 『陽水ライブ/もどり道』(3)に続く2作目のライブ・アルバム.未 CD 化らしいです.タイトルの『東京ワシントンクラブ』でのライブは2曲だけで,他は3曲が神戸市中央体育館,6曲が金沢実践倫理記念館での録音となっています.『あかずの踏切り '76』,リリースする度に曲が違って今回が3度目.

12

“WHITE”

1978

★★★★

 1977年9月10日に大麻所持容疑で逮捕され,10月11日に懲役8ヵ月執行猶予2年の判決を受けた後,初めてリリースされたアルバムで,獄中で作ったとされる『青い闇の警告』と『ミスコンテスト』の2曲が含まれています.個人的にはこの2曲,名曲だと思っているのです,