小池 真理子

長編小説1(1985 - 1989)



あなたから逃れられない

1985

集英社文庫

★★★

 タイトル及び物語の冒頭を読んだだけだと,単なるよくあるサスペンス・ロマンのような印象を受けてしまいますが,中盤から意外な様相を呈してきます.ただ最も初期の作品だけあって,いろいろな要素がからみあった複雑な事件の描写が中途半端で,結局作者が何を主題にしたかったのか解りにくくなってしまっているような気がするのですが... 解説は森瑶子氏.

彼女が愛した男

1986

角川文庫

★★★

 前半は軽井沢の山荘を舞台にした人質事件,後半は人質と犯人との間に芽生える愛情をテーマにしたそれこそよくある陳腐なストーリーで退屈しながら読み進んでいきましたが,物語のラストで明らかにされる真相で「流石」と思いました.よくある話をただのB級サスペンスで終らせていないあたり,見事だと思います.

蠍のいる森

1987

集英社文庫

★★★★★

 初期の作品の中では最も好きな作品のひとつです.どこにもいそうな登場人物たちの間で,異常な事件が発生する『小池ワールド』はこの3作目において確立されたと言っていいと思います.実はこの文庫本長い間入手が難しくて,初版発行から10年後の97年になってやっと手に入れたもんで,そ〜いった意味でも愛着の深い1册なのでした... 解説は関口苑生氏.

仮面のマドンナ

1987

角川文庫

★★★

 作者4作目の書き下ろしミステリー.結末については最初「?」と感じましたが,読み返してみて「やはりこんなもんかな?」と... 登場してくる矢内原滝子には実在のモデルがいるとの事ですが,かなりコワイです.あと,登場人物のひとり佐伯五郎に関する記述が,最初の方では「両親は湯河原で小さなマーケットを経営している」とあるのに,最後の方では「静岡県の実家が経営するマーケット」となっているのは,単なるミスなのかしらん?

彼方の悪魔

1987

中公文庫

★★★★

 作者得意の異常心理物+医学サスペンスの傑作です.こ〜ゆ〜作品読むと,作家ってタイヘンだな〜って思ってしまいます.とにかくこの人すご〜く勉強したんだと思います...病気の... 第18節の猫の心理描写がすご〜く気にいってます.解説は由良三郎氏.

墓地を見おろす家

1988

角川文庫
角川ホラー文庫

★★★★

 建物が主役のホラーというと,映画『ヘルハウス』や『悪魔の棲む家』なんかを思い出しますが,東京近郊のマンションを舞台にしたこの作品,身近な出来事に感じられるだけとてもコワイです.ラストも秀逸だと思います.この手のモノ書かせたらこの方やはり最高だと思います.解説は三橋曉氏(角川ホラー文庫).



プワゾンの匂う女

1988

徳間文庫
光文社文庫

★★★★★

 作者の代表作としてまず挙げられる作品.代表作の名に恥じない大傑作サイコ・サスペンスだと思います.すご〜く異常な話でありながら,実際にありそうな話だと思います.しかし...死ぬまでに一度は人を殺してみたいと思う反面,とてもそんな事はできませんわ...と,二重人格はここから始まっているのです.解説は笠井潔氏(徳間文庫),新津きよみ氏(光文社文庫).

間違われた女

1988

祥伝社ノン・ポシェット
祥伝社文庫(新装版)

★★★

 作者自身が『あとがき』で説明している通り,エロトマニー…「純粋な愛の狂気」と言われる一種のパラノイア症状を題材としたミステリー.二重の殺意の交錯を描くことによって単なるストーカーものに終らせていないあたりさすがだとは思いますが...  作品の出来自体は後の長編に比べて「いまひとつ」といった気がします.

殺意の爪

1989

光文社文庫
徳間文庫

★★★★

 かなり異常心理入った冒頭の殺人場面から,一転してヒロインを中心に本格的謎解き推理が展開する,作者の新境地を開いた作品であるとも言えると思います.途中で何となく犯人が見えてきてしまうのはご愛嬌? 解説は宮部みゆき氏(光文社文庫),山前譲氏(徳間文庫).

死者はまどろむ

1989

集英社文庫

★★★★

 『墓地を見おろす家』に続いて書かれた長編モダン・ホラー.やはりこの手の作品にこそ,この作者の持ち味が最大限に生かされると思います.救いのないラストがすご〜くコワイです.解説は坂東眞砂子氏.