ニューラルネットワークによる文字認識


 

5.3 結果の考察

 したがってこの結果より次の様なことが言える。


 (1)の場合は、パターンマッチングによる方法もニューラルネットワークによる方法も認識率にたいした違いはでなかった。しかし、認識速度はニューラルネットワークの方が約2〜4倍速い。


 (2)の場合は、学習パターンを増やせば、どちらの方法の場合も認識率が上がる事が分かった。しかし、パターンマッチングによる方法では学習データを増やせば増やすほど、認識速度が遅くなる。


 (3)の場合は、パターンマッチングによる方法の方がニューラルネットワークによる方法よりも約20%ぐらい認識率が落ちてしまった。このようなことから、パターンマッチングによる方法は書体の変化などに弱いということが分かる。

 (4)の場合は、どちらの方法の場合もあまり認識率の差がでなかった。これは学習データが学習者の手書き文字しか使用しなかったため、どちらの方法の場合も、学習者の文字に似ている人の文字は認識率が高いが、学習者の文字に似ていない人の文字は認識率が低いという結果になっている。したがって学習者以外の人の文字を認識させる場合には、学習者以外の人の文字を学習データとして使用するか、統計的手法によって複数の人の文字でも良く合うパターンを作成し、これを学習データとして使用しなければならないと考えられる。

 この結果より、二つの方法の利点、欠点を考えてみると、以下の様になる。

T.パターンマッチングによる方法

(利)取り得るすべての学習パターンを用意できれば、認識率を100%にできる。


(欠)学習パターンを増やした場合認識率は上がるが、増やせば増やすほど認識速度が遅くなってしまう。したがって効率よく学習データを増やそうとした場合、人間がどのようなパターンを使うか考えなければならない。また、書体の変化などにもうまく対応できない。

U.ニューラルネットワークによる方法

(利)学習パターンを増やせば認識率が上がる。また認識速度も学習前と変わらない。

どのようなパターンを学習させるかを人間が考える必要はなく、色々な文字を認識させてみて、誤認した文字を学習データとして使い、学習させれば良い。
書体の変化にもある程度対応できる。

(欠)認識率を100%にするのは難しい。

 したがって認識率で考えた場合、学習させるデータと同じ様な文字を認識させる場合は、どちらの方法でも実用化は可能であると思われる。しかし、認識速度が問題となる場合や、書体の変化した文字などを認識させる場合はニューラルネットワークによる方法の方が良いと考えられる。


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