1999年6月12日名大祭の講演会の感想
 最初に「森」という文字の話をなさらなかったです(いきなりそれかい)。
OHPにて今回話す内容のお話からされました。日常の不思議、という観点はいつもと同じですが、
いつもよりも、更につれづれなるままお話されていた様子。
*最初は去年のブーメランの話のフォローから。去年「ブーメランは何故戻って来るのか」と問題提起したまま、
答えを言いそびれていたので、その解答から、という事で。
揚力の関係で戻って来るのですが、その仕組みを知らない人でも、投げれば戻ってくるのです。
それがつまりはテクノロジーなのだ。ブラックボックスなのだ。

その結論に行くまで、森先生は沢山寄り道して、色々面白いお話をされるのです。
それが楽しい。行き止まりまで行くと、分かれ道まで戻って、本道に返ります。それが楽しい。

*瞳の話。目とは電磁波をとらえるアンテナの役割をしている。
ゴジラの様な大きな物体でも・・・。目が3メートルあったら、光が多くて白くぼやけた世界になってしまう。
大きな動物も、同じ世界を見る為には、同じ大きさの瞳でなくてはいけない。

*そこから派生して物体は大きくなる程弱くなるという、ガリレオの言葉の検証。
ウルトラマンはあんなに大きくなっちゃったら、あの足首では体重を支えきれないよ・・・と。
その前に地球に自分の重みで沈み込んじゃうよ・・・というお話。
「ゴジラはまぁシッポがあるからかろうじて・・・それにしてもゴジラは倒れたらどーやって起きあがるのかな?ブツブツ・・・」
森先生の呟きは続く・・・。

*動物はどうしてとっても便利な「タイヤ」を持ってないのかという話。
それは、人間が、動物が、大きすぎるから。細胞から細胞へ情報を送る時、動物は大きすぎて、
瞬時に伝達出来なくなってしまった。だから「血管」を作った。
血管がある限り、そこをねじったり、回したりする事が出来ない。それがタイヤが無いひとつの理由ではないか?
(またこの辺も細かく枝道があるのですけどね。人間が最初に作った乗り物は船で・・・とか)

*ストローで水を吸い上げても、どんなに肺活量があろうが、機械を使おうが、10メートルしか水は上がらない。
では、10メートルよりも高い樹木は、どうやって枝の先まで水を吸い上げてるの?
という疑問。これは難しくて、森先生も答えを見つけるのは苦労したとの事。
私たちには答えを頂いていません。何故なら、今答えを誰かに教えられても、きっと何年かしたら忘れてしまうから。
自分で調べて答えを見つけたら、それはずっと忘れない。
忘れないで欲しいから言わないのです。そうおっしゃっていて、それが愛情の様に感じてしまいました。

*小説の話。今後出る作品のおおまかな内容と発行日とタイトルの確認。
森先生は「そして二人だけになった」の出来上がった本を持っていて、「優越感」と見せてらっしゃいました。
滅多にこんな機会無いよって(笑)。
私はこれで表紙が分かったので、本屋さんで探しやすいな、と思いました。有り難いっす。
帯の言葉が「四方」ではなく「立方」が正しいんだけど・・・あ、直さなくて良いですけどね、と
チェック入ってました。私も買ったらチェック入れよう(こらこら)。
この英語タイトルにかなり時間を費やした様で、意味は「死が二人を分かつまで」で有名な言い回し。
でもだからこそ、色んな英語があって、悩んだそうです。
タイトルの話は他にも「夏のレプリカ」が元は「いつか問われる」だったが、地味なので止めたらしい。
「人形式モナリザ」も「ひとのかたち」というタイトルにするつもりだったけど、
英語タイトルで使ったので、変えたとの事。

*対角線とミスリードの話。手品師が右手に派手な仕掛けを見せている間に左手で仕込みをする様に、
推理小説は色んな場所に読者にとって魅力的なものをチラつかせて、本質は隠す。
森先生の小説の登場人物の名前が難しくてめずらしいのは実はミスリード??σ(^-^)?
誰も見ない場所こそ、本当のトリックなのかも知れない。

一番心に残っているのは、問題を解く力は誰にでもあって、何が問題なのかを見抜く事、気付く事が
人間らしい能力なんだ、だから、皆には不思議を探せる人になって欲しいというお話。
今まで森先生は私たちに何かを伝える、というイメージは私的に余り持っていませんでした。
勿論小説などでメッセージはあると思いますけど、それとは違って、今回のは森先生の世界に私が入れた様な、
錯覚を起こしそうなお言葉でした。不覚にもジ〜ンとなる私。
ただこれは、私の個人的な感慨で、上手く言えませんので、これだけは私の心の中の財産にしよう・・・。

その後名刺交換会でした。ヒトリヒトリの時間は短くても、ふれあう機会は少なくて貴重です。
あの時だけは一対一ですからね。
本当は「私も『数奇にして模型』が一番好きです」と伝えたかったけど、時間切れ。
ここで書いておく(笑)。

ちなみにこの日の日記もあります。