読んだ作品
★S&Mシリーズ★ すべてがFになる(THE PERFECT INSIDER)/冷たい密室と博士たち(DOCTORS IN ISOLATED ROOM)
笑わない数学者(MATHEMATICAL GOODBYE)/詩的私的ジャック(JACK THE POETICAL PRIVATE)
封印再度(WHO INSIDE)/まどろみ消去(MISSING UNDER THE MISTLETOE)
幻惑の死と使途(ILLUSION ACTS LIKE MAGIC)/夏のレプリカ(REPLACEABLE SUMMER)
今はもうない(SWITCH BACK)/数奇にして模型(NUMERICAL MODELS)
有限と微小のパン(THE PERFECT OUTSIDER)/地球儀のスライス(A SLICE OF TERRESTRIAL GLOVE)
★Vシリーズ★ 黒猫の三角(Delta in the Darkness)/人形式モナリザ(Shape of Things Human)
月 は 幽咽 の デバイス(The Sound Walks When the Moon Talks)
夢 ・ 出逢い ・ 魔性(You May Die in My Show)/魔剣天翔(Cockpit on Knife Edge)
★その他の作品★ 森博嗣のミステリィ工作室/そして二人だけになった(Until Death Do Us Part)
女王の百年密室(GOD SAVE THE QUEEN)/工学部・水柿助教授の日常/臨機応答・変問自在

★理系と呼ばれているけれど、読んでみると文系な私でもよく分かるストーリーで安心しました。
事前に「コンピューターが分からないと成る程と頷けない」とか言われていたので、相当覚悟して読みました。
それでも読んでみた辺りが自分でも偉いな。
まだ当時は「すべてがFになる」しか出ていなくて、友達が推薦文と「メフィスト賞」の文字に釣られて買ったのでした。
私は表紙に惹かれたかも知れません。文字があって、白くて、箔押ししてあって、ちょっとその閑散とした感じが好きだったもので。
まぁでも、出会って置いて正解だったな、と。その後は着々と良いペースで出るのを次々に買いあさって読んで行ったのでした。


★犀川先生と萌絵ちゃんのシリーズ。この二人の成長期というのか生活風景というのか、ちょっとそういう趣も強いかも。
ちょっと言葉がキツくて、頼りになるというより自分が全てという犀川先生と
お嬢様を笠に着た萌絵ちゃんと、私にとってはとっつきにくいキャラクターでした。
でも読んでいるのは、作品の端々に書いてある思想というのか、そういうものが面白かったからです。
別にその思想に同意しているとかではなくて、考え方が突飛なのに、あぁ、そういうことか
と納得させられた部分があるというのか、この辺りは私の観念的な部分なので余り上手く言えませんね。


★その二人を好きになったのは、まぁ単なる愛着みたいなものかも知れません。
相変わらず萌絵の勝手で好奇心むき出しで遠慮を知らない様な所にはうんざりする事があったり
するのに、いつの間にか萌絵が好きで、彼女の行動力をワクワクしてたりもします。
犀川先生はベタベタなオヤジギャグ炸裂も好きになってしまいました。
たまに分からないミステリアスな部分があるんですが、そうして振り回されるのを
楽しんで来たというか。あぁ又上手く言えないでいる。微妙だから、言葉が見つからない。


★トリックとかについて総合的に考えると「すべてがFになる」が良く出来ていたというか、
後から印象深いんですが、私は個人的に「詩的私的ジャック」が好きです。何故って切ないから。
何かを無性に追いかけて壊れてしまった人間が痛いから。手に触れられない物を形にしようとする
そういうちょっと堕落的な雰囲気が好きなのです。一番「アート」しているとでも言うのかなぁ。


★禅問答の様なやりとりが多くて、犯人とか証拠とか殺人とか具体的なものよりも、
どちらかと言えば精神と精神のぶつかる闘いという様相があります。単純に冷静に会話を交わして
いるのだけど、それは一種の闘いといった風情で。
そういえば森作品では余り激昂する様な人物は描かれていませんね。どちらかといえば
全てを悟ってしまっている様な冷めた人間ばっかりで。だから「詩的私的ジャック」好きなのかも。
そして唯一我を通してしまう萌絵の肩を持ってしまうのかも。


★「有限と微小のパン」。これは森先生に感想を提出して、HPに載せて頂いたので、
そちらを観て貰おう。って本名で出したから分からないかぁ。
 シリーズが終わってしまう寂しさというのは漂ってなくて、反対にこれから始まるような、
何かの予感を残したラストが鮮烈でした。うふふ、と微笑みたくなる感じ。


★「地球儀のスライス」。これは短編集ですが、色がとりどりで、全部を気に入るっていう人は
なかなか居ないのじゃないかと思いますが、そのかわり、「これだ!」という作品に出会えるのです。
私にとって「これだ!」は「気さくなお人形、19歳」でした。小気味良い読み口がとにかく好き。
そしてだからこそ切ないというのか、だからこそ、重みがあるというか。泣いてしまいました。高い青い空を感じさせてくれる作品。
他には「有限要素魔術」がお気に入りです。これも泣くというか、読んでいると精神的に
イカレてきそうな(誉め言葉なので許して下さい)トリップ的な作品だと思いました。灰色のイメージですね。
黒までハッキリしてなくて、よどんだ感じ。そこが好き。ずっと空洞っていうのか。ピントが合わない瞳で読んでる気持ち。
どれも色が違うから、特に好きな作品だけ書きましたが、全部読むとそれもひとつの「カタチ」になります。
シリーズ作品を読んだときの、我が家に帰って来た様な安心感が自分でも驚きでした。馴染んでいたんですね。きっと。


★「そして二人だけになった」。初の読み切り長編でした。新潮社も初めてだし、ハードカバーも小説では初めてでした。
そして、今までで一番「推理小説」って感じでした。勿論、森先生テイストは有ります。物語の区切りに入る質疑応答は、
いつもの思想に近いと思います。二人分の視点で動いていくので、誰も信用できない感覚が常につきまとって、それが
物語の吸引力になっていた。途中からは続きが気になって、少しの時間も惜しんで読んでしまいました。
ラストは勿論タイトル通りの結果になるわけですが、印象は全然違います。後味の残し方が本当に独特だなぁ・・・。


★Vシリーズの1作目は別感想書いたので、2作目の「人形式モナリザ」の感想を交えつつ。
どのキャラも均等に割と見てます。紅子さんと林さん元ご夫妻が好きなのですが、一番読んでいて楽しい部分は
小鳥遊くんが出てくるシーンでしょうか?彼だけがいつも一歩引いた感じの考えをしてるからだと思います。
保呂草さんほど引いてしまうと、今度は不安なので。今回は「神様と悪魔」というキーワードがとても興味を惹かれた部分です。
人間の観念的要素、森作品の犯行動機はやはりこういうのが似合う気がします。それとも私が求めているのか?
最後、保呂草さんが渡した写真に喜ぶ所が作品の中で鮮明に浮かび上がって、際だっていました。
もう少しこのキャラクター達を観察したいと思います。全然関係ないけど、素直くんの発言をいつも楽しみに・・・。


★『月は幽咽のデバイス』は、Vシリーズの3作の中では一番好きな感じでした。ストーリー展開や、人物達が覚えやすかったのもあるし、
最初の方の会話のテンポが良く、スラスラと読めたから。トリックなども一番難なく頷けたし、キャラも皆好きになれた。
登場人物が、それにしても増えてると思うのは気のせいでしょうか?紅子さんと七夏さんの恋の鞘当てが幅を利かせて来ましたが、
私的には紅子さんが好きですので、ちょっと応援。あと、謎が前々回に似ていると思ったのですが・・・。(パーティーの途中で殺人)
アクション的な部分もあって、様々に楽しめました。やっぱりどこか前シリーズと違うものを感じます。


★『夢 ・ 出逢い ・ 魔性』、Vシリーズの中では一番好きかも知れません。登場人物同士の心の駆け引きの様なものが少なかったからかも知れません。
私は平和主義なので、皆で仲良く、みたいな方が好きなんですね。そして私の好きな紅子さんは、まさに今回の紅子さんだったので。
ぽわ〜んとしてて、でも何もかも分かっている、みたいな感じ。今回は練無が主役って感じでした。
そこも好きな原因の一つ。あとはタイトルにも「夢」とあるけど、途中に挟まれる犯人の独白が、詩のようで、夢のようで、幻想的で、
ちょっと懐かしい過去を観ている感じで好きでした。ノスタルジーを何故か感じたのです。新しく登場した稲沢さんも好きなのです。
安心感を感じる人だから、かな?保呂草さんって、どうも安心出来ない、掴めない人物だから。
それでも、稲沢さんに接する保呂草さんは、とっても人間味があって、可愛く感じました。
トリックが初めて分かって、それも少し嬉しかったのかも知れません。


★『魔剣天翔』は、とにかく謎が面白いというか、興味深かった。魅力的だった。
曲芸を披露している空中の飛行機内での殺人。それってどうやったんだろうって、森作品にしては久しぶりに
人間関係や思想ではなく、謎解きに主軸を置いて読み進めました。結局自分では謎は解けなかったけど、それは
いつもの事なので気にしない(ダメだろそれじゃ)。解決もすっきりしていて読後は爽快感。
その代わり、小鳥遊くんの印象は少し変わりました。私は男の子である小鳥遊くんはそれ程興味がなかったらしい。
今回はどれにも増して紅子さんが素敵だった。母としての紅子さん。推理をする時に事実はどうかなんて知らない、
でも自分の中で納得出来た筋道があるから、それを話すって態度がとっても良かった。そういう所が私の中の紅子さんの魅力だと思っているから。


★『工学部・水柿助教授の日常』。今まで読んだ中で一番の一気読み大賞!滅茶苦茶面白かったです。笑いました。
これって、森先生をより知ってる人が楽しめるのじゃないかしら?流れる様に、思考そのままが文章になった様な、リズミカルな感じが
とっても気持ち良いのです。そして余りにもバカげてたり、余りにも日常だったりするのが本当にただ楽しくて、いくらでも読めそうでした。
このシリーズは最高にお気に入りです。どんどん出て欲しい。


★『臨機応答・変問自在』。これは小説ではないし、エッセイというのとも違うけど、一番森色が強い本ですね。ご本人自らの考えが
ストレートに知れる。いくつかは今までの関わりの中で私も知っている質問応答もありましたけど、一問一問が短いので、スラスラ読める。
これは答えを読むより、色んな質問をする人が居るものだなぁ、とそっちの方が面白い。大学生って変な事質問するんだなぁ、と。


★森先生について。話は色々な人から良く聴きます。他の作者は余り知らないけど、森先生はどんな人柄か
案外皆に知られている気がします。それだけサービス精神があるのかも知れません。
本当に書くのが決まったペースを保っていて、コンスタントに森作品に触れられる為、付かず離れずで私に丁度良い距離です。
沢山出るのも追いつかないし、ずっと出ないのも淋しいし、今のペースで居て欲しいです。

1998年 6月14日、名古屋大学祭にての森先生の講演会の模様はこちら。


「数奇にして模型」感想ネタバレ有りなので、読了した人のみ入室可。


1998年7月18日、第1回森ぱふぇ東京オフの模様はこちら。


1999年3月21日森ぱふぇ第2回東京オフ。


22日紀伊国屋サザンシアターでの講演会。


『黒猫の三角』感想ネタバレ有りなので、読了した人のみ入室可能。


森先生の作品に関したパズルを作りました。


1999年6月12日、名古屋大学祭にての森先生の講演会の模様はこちら。


『女王の百年密室』感想ネタバレ有りなので、読了した人のみ入室可能。