『女王の百年密室』ネタバレ感想
 
この話が森作品の中では未だかつて一番好きだと思います。
読み出しから世界に飲まれてトリップしました。
イメージは童話でしたね。あるいは、ちょっと昔の洋書っぽい感じ。
常に主人公&ロイディの性別がよくわからないままだし、服装も詳しくは書かれていないので
想像力を逞しくして読んだのです。敢えてそうしてあるのだと思いますけど。
出会う人に関しては、一人称の主人公の観点から、容姿など分かるのに、一番慣れ親しむはずの
主人公が、一番不鮮明なのですね。そこがとりつかれた魅力なのかも・・・?
おとなしい楽観主義者かと思えば、突然激しく感情を乱して倒れたり、
人間だと思っていればロボット的だったり?女かと思えば男だったり。
結局はどれもが「ミチル」だったんだけど。
 
名前が片仮名なので最初は抵抗があるかと思ったけど、音が入りやすいので、すぐに
覚えてしまいました。何度もフルネームで呼び合うので、フルネーム覚えてしまった。
特に好きな名前は「ジュラ・スホ」かな?あとは「ユウイ・ナナヤク」とかも好きな名前です〜♪
こぅ、名前が出てくる度に、正確に読むのに一瞬止まる、という作業が全く無かったです。
ある意味、日本名よりも覚えやすかったかも知れない・・・。
  
密室とか、トリックとかは、もぅ世界観が違うから、余り深く考えませんでした。
密室なんてのは、全てが密室なんだ、この世界は。王国自体も閉ざされているし、
女王の心や生や、習慣も密室みたいなものだから。
そういうものは、最後まで読んでも閉ざされたままだろうな、とも思っていたし。
私が一番考えながら読んだのは、「進歩的」とは、どういう事か?という事でしょうか?
進歩している、とは、どういう状態なのかな?と、その辺を一番深く考えてしまいました。
 
半分過ぎくらいまでは長閑に、のんびりと時が流れていたのに、後半の
急展開がドキドキしました。マノ・キョーヤとミチルがお互いを殺し合うシーン辺りは
ページをめくる手も早い早い!もぅ一気読みでしたね。次々と色んな人の本当の心が分かって、
思っていた程、皆美しくないし、おとなしくもない。
真実はやっぱり残酷で、当たり前の様に私欲で、そこも童話的だなぁ、と思ったのです。
 女王は、結局操られていた、という印象も強いのですけど、
女王の言葉はどれも好きでした。森博嗣ならでは、というか、肩の力を抜く魔法?かな。
 
私的にササン・スホがお気に入りなのだけど、全然出て来やしねぇ(笑)。
や、でも可愛いから万事OK。ホホホ。金髪碧眼だよ!10歳だよ!ふううぅ(気が遠くなる可愛さ)。
 
ロイディ・・・が私も欲しいです。案外万能じゃないんですよね。彼(笑)。そこが良い。
ロイディを主として、他にもだけど、設定の細かさが光りますね。
きっと、物語に使われなかったところにも、細かい設定がされていそうな、そんな
ある種の完璧を求める様な感じを受けました。立ったままの方がエネルギーを使わない
という点が、ものすごい納得でした。
 
あと、表紙が滅茶苦茶ノスタルジィというか、何か心がワサワサする感じでお気に入りです。
これは、今まで知らない無名の作者だったとしても買うね!と思ってしまった。
またこういう話が読みたいなぁ。