『依存』ネタバレ感想。
読み終わって直後にこれを書いています。何かを書かずにいられない気分にさせられます。
ど〜っと色んな感情が溢れて、本当に凄い作品でした。
 
先ずは「嬉しかった!」の一言から言いたいですね。何せ待ちに待ったという感じのこのシリーズ。
私はこのシリーズが本当に好きなんだなぁ、と実感。
今回、推理小説というよりは、このシリーズの深みを探る、言ってみたら純文学の様ですらあるのに、
それでも(それ故?)嬉しくて嬉しくて、厚いのも本当に嬉しくて…。
厚いって事は、いつまでも長く読めるって事だし、その分、彼らについての情報や仕草も数多く
描かれているって事ですもんね。実際には1日で読み切ってしまったのですが、
充足感はたっぷりあります。勿論それは量的なものだけでなく、質が当然満足だったのですが。
何よりも、ウサコ!ウサコ好きの私としては、待ってましたとばかりのこのウサコ一人称。
それだけでも天にも昇る嬉しさです。
シリーズはどんどんダークな方向に進み、今回どこまでも暗闇に堕ちて行くのですが、
ウサコが語っているから、それが一歩手前で狂気を踏みとどまっている、とでも言うかな?
そんなイメージでしたね。さすがにいつも元気なウサコも「ウサコ」を捨て去ったワケですが、
それでも私はウサコ、お前は凄いヤツだよ。と思ってしまいました。
それにしても、帯の煽り文句と言ったら!「ぼくには、実の母親に殺された
双子の兄がいたんだ−−−」なんて!滅茶苦茶ネタバレしてくれやがってコノヤロー!
と思っていたのです。途中までは(笑)。それまでもがトリックだったなんて、やられたわ。
今回の一番の核心はタックの素性ですが、私的にタックという人物の認識を新たにしたというか。
今までは無味無臭を感じていたんです。それが今回は泣き崩れるわ、タカチに名前呼びで告白するわ、
お母さんと肉体関係にあるわで、とにかくグルッと世界が変わった気がしました。
タックには、誰しもが持つ性欲を、感じていなかった…や、考えた事はあったけど、
それが物語中で語られることが無い様に、勝手に感じていたから、そこが一番驚いたのかも。
タカチに対する感情も、「一生一緒に居て欲しいと思う人」という言い回しならとっても納得だけど、
「きみが好きだ、千帆」とまで直接的に言う人間だと思ってもみなかったのですな。
そのタックに反して、タカチは、益々私の思っていた通りのタカチで、その部分だけが
強い安心感というか。私はタカチを特別な人間と余り思っていないのだけど、
(今回はそこがクローズアップされていたにも関わらず)
心の強さが好きです。大好きです。ラストの方のタカチは本当にステキだった。
私がこの4人に本当に望んでいた関係図は、ウサコ→ボアン先輩→タカチ←→タックという
感じです。ボアン先輩は、常に達観で、それこそタックなんかよりもずっと人間味が無いのかも知れない。
一番人なつこそうで、分かりやすそうで、感情的に見えるのに、
内面を覆う殻が一番硬いのは、本当はボアン先輩だったのですね。
ウサコは、まぁやっぱりタカチと出来て欲しかったけど(笑)、ウサコがどれだけタカチを愛しているかが
分かっただけ嬉しかった。タカチとウサコの出逢いも描かれていて、それも儲けものです。
ウサコの気持ちが良く分かるんだなぁ。これが。ウサコは、4人の中では一番「一般」で、
その「普通」であるウサコを、タカチはちゃんと他の子よりも特別扱いし、
何かの折りにはウサコを連れ出したり、かまったりしているのが、さりげなく描かれていて、
そこが今回は嬉しかった。他の子が出て来たからこそ分かる関係の深さみたいな、
そういう微妙な部分が、繊細に表現されていて、凄いなぁ、とあらためて感心してしまいます。
どれだけ感情移入していた事か。こんなに心が掻きむしられている。
タカチがタックと表だって心を通わせてしまったのが、嬉しいのか悔しいのか、
本当は自分でも分かっていないんです。ウサコが最後に「これでもう逢えないんじゃないかって…」と言うシーンが、
切なくて切なくて、読後感がとても複雑。
真正面から人が死んだり、タックが鮮やかに謎を解き明かしたり、そういうのは無かったけど、
「推理合戦」が、また山ほど出て来て、そこが西澤の醍醐味というか、真骨頂でしょうね。
可能性を虱潰しにしていく、その課程だけでなく、その時のお互いの性格の現れ方や、
会話のリズムの良さが、とっても絶妙で、この作者でしか見れない、得られない快感ですね。
あぁ、長々書いちゃった(涙)。読んだ直後ってのが悪いのですが、
んもぅ書かずにいられないでしょう!まだまだ言いたいことはあるが(笑)、とりあえず満足。ふぅ。
さぁ、これで心おきなく眠れる…。