『ドッペルゲンガー宮』 霧舎巧
 
 
  
 久しぶりに好みの展開の推理小説に出会いました。ストレート直球みたいなやつです。嬉しいです。大きな建物と、名探偵を含む特殊な特徴を持つ学生の仲間達。不思議な死体と、不思議な謎と・・・。もぅ雰囲気だけでクラクラもので、ストーリーやトリックなんてどうでも良いわ〜みたいな気持ちになってしまいました。(ちゃんとトリックも面白かったですよ)。メンバーがとにかく魅力的でしたね。主人公(書き手)とヒロインがどうも好きなタイプではないので、その辺が鼻につくのですが、会話のテンポで読んでしまいます。名探偵が二人居るのもなかなか楽しいです。勿論後動さんが探偵だけど、鳴海くんと言わずとも、同じ推理に辿り着くって感覚が新鮮で楽しかった。増して張り合うのではなくて、協力体制というのが良い。後動さんの「僕は事件の解決なんてこの際どうでも良いんだ。ただ、鳴海を助けたいだけ」みたいなセリフ好きだった。オーソドックスで心に響きます。 
 ただ、文章のもったいぶりかたが、ちょっと下手かな?と感じます。推理小説でもったいぶった文章が出てくるのは気にしないけど、そのもったいぶりかたが、ちゃんと理解出来ない感じで、何度も続けてこれをやられると、何が何やらでグッタリしちゃうのです。2作目では減ってたので、これから減って行くかもしれませんけど。 
 あと、個人的に少年好きなので、頭木くんに期待していたのに、全く出番ナシで終わってしまって悲しかった(涙)。 
ところで「後動」さんって、「ゴドーを待ちながら」の「ごどう」なのかな? 
  
『カレイドスコープ島』 霧舎巧 
 
 
 一作目に間髪入れず読み始めて、一日で読了してしまいました。なかなか面白かった。 
二つの閉塞的な島の話で、でも折角図面まで付いてる様な、不思議な立地の建物があったのに、その形の面白さが何も使われていなかった気がします。勿論「館」推理物ではないからですけど。惜しい。今回は鳴海さん全然出てこないなぁ。淋しいなぁ、とか思ってたら、最後の方格好良かったですね。やっぱり読者にとって自分の考えの拠り所とか、ストーリーの信じれる部分って、探偵の行動じゃないですか。カケルやユイがどんなに色々やってようと、後動さんの一言の方が安心っていうか。それが二人居る事によって、また楽しさが増幅って感じなんですよ(分からないよな、こんな書き方じゃ)。 
 私は二人とも(後動さんも鳴海くんも)好きなんですわ。違った魅力で好きなのね。 
 で、今回は恐子さんがとってもお気に入りで、彼女に肩入れというか、感情移入して読んでいました。後動さんとの微妙な距離が、何とも良いぢゃないですか!頼りになるし、あぁいう女の人と付き合いたいです。っていうか、後動さんという人柄に、一番似合う女の人だと思ったのね。咲ちゃんも個人的に凄く好きで、後動さんに「しっかりしろ!」と前作で言った所なんて大好きなんだけど、後動さんは恐子さんに譲りたいです。 
 今回は大がかりなトリックは特になく、小さな殺人事件の積み重ねだったので、犯人が分かってもふ〜んという感じでした。徐々に一つずつ、どんな犯行だったか明かされて行くので、謎解きシーンが長いです。 
 まぁでも面白かった。読後感も割とサワヤカ系で、これはこれで良いかな?って思います。