〜春色の海〜

私がまだ制服を着ていた頃
何かあるたびに よくここへ来てたっけ
この色 この香りにつつまれると
不思議と元気がわいてきたんだ

いつしか私も 大人になり
まわりの表情にも慣れ
無機質な森の中を
ただ がむしゃらに走ってきた

不意にここを訪れたのは
あの頃の 思い出のかけらを見つけてしまったからだろうか

海は 蒼く輝き
空は どこまでも 高く 続いている
半袖には まだ冷たい風が
シャツの中をくすぐっている

ああ、なんだ そういうことか

謎だらけの毎日が 澄んだ光に洗われていく
手の平にある 小さな小瓶には
君との約束が浮かんでいる

大好きだった 幼なじみは 今頃どうしてるかな
私は こんなにもちっぽけな おじさんになってしまって

君ならきっと こう言うだろうな
「懐かしむほど 生きちゃいないじゃない!」って
はは! そうだね

思い出が聞こえる 小さな小瓶と 海は
私に 新しいスタートを 迎えさせてくれた