鉢植の木らうんじ16短歌

短歌-ワタ-種子より育てて

ワタの成長を観察しながら詠んだ短歌連作です


ワタは、熱帯から亜熱帯原産の植物でムクゲ・フヨウ・ハイビスカス・オクラなどと同じアオイ科に属し、いくつかの品種があります。
以下の作品中 「1.開花まで」 と 「2.結実そして…」 はアップランド綿といわれるメキシコから中央アメリカが原産の種類を育てた際に詠んだものです。
「3.後れ花」は、インド原産のアジア綿といわれる種類のワタが秋の終わりに花を咲かせたときの作品です。(育てた場所はいずれも静岡市)。



         ●1.開花まで

・ワタの芽は種皮外れたりその双葉開かぬままに緑増しつつ
・今は根を張る時期というワタの茎じっくりとして伸びは見えざり
・梅雨明けてひと日ひと日に伸びてゆくワタは次々葉を開きつつ
・ああ明日は初花開くワタのつぼみ今日ひと日にて伸び著し
・暑き日の始まる朝(あした)花開く種子より育てしワタの初花
・ワタの花夕べとなりて閉じてゆく花弁は張りを保てるままに
・昨日(きのう)咲き今朝は閉じたるワタの花黄より赤へと変わりていたり

 


2.結実そして…


・日を追いてふくらむワタの実うち続くこの炎熱の力のままに
・未熟なるままに落ちたるワタの実を割れば繊維は既に成りいて
・実りゆくコットンボールのその重み折れんばかりに枝撓ませて
・ワタの実は内より裂けたり五十日余り育ちて極まる力
・ワタの実の割れて無数に吹き出せる繊維の含(ふふ)む真白き温み
・ワタの実に種子は二十のあまりなる白き繊維を伴う命

 
   

 赤く変った花は、しおれて落ちます。花があったところに、その後に育つのが子房で、花のめしべはこの子房についていました。子房はやがて成長して実になります。その中に、白い繊維をつけた種子が育っています。ただ、未熟なままの実がポトリと落ちてしまうことは珍しくありません。

 はじけて白い繊維を吹き出した状態のコットン・ボールは「綿花」といわれますが、これは花ではなく実(子房)です。

 左の写真は、はじけた,コットン・ボールから種子をとり出したところです。
このように種子は白い繊維の中に埋まっています。繊維は種子から生えた毛で、元々は種子を飛ばすためのものだったのかもしれません。

 糸や織物のの材料にするには、まず繊維と種子を分離します。しかし、しっかりとついているので分離は容易ではありません。



                                  3.後れ花

 ・既に秋の終わりなる今ワタの花ひとつ咲きたり陽だまりの鉢
 ・冬に向かう今この時期をワタの花そろそろそろそろ開きゆきつつ
 ・後れ咲きのこのワタの花晩秋の陽の育みに四日咲きいる
 ・晩秋の光もろとも手に囲う後れ咲きたるこのワタの花


 アップランド綿の花はクリーム色一色ですが、アジア綿の花はこのように中心部分が濃い紅色です満開状態の花の直径はアプランド綿もこのアジア綿も4〜6cmほどです。

 静岡市の場合、どちらの品種も花を咲かせるのは7〜9月の暑い時期です。ところがある年、陽だまりに置いたアジア綿の鉢に11月末〜12月に花がいくつか咲きました。直径1cmほどの小さい花でしたが。

 咲くまでの経過も、その後の過程もふつうの場合よりずっとゆっくりでした。暑い時期に咲く花は、開花前日につぼみが急速に成長し、翌朝に開きその日1日だけ咲いていて次の日にはしおれます。しかし11月末〜12月に咲いた花は、半日から1日かけて徐々に開き、そのまま3〜5日も開いたままでした。その後小さな実をつけたものもありましたが、大きく育つことはなくやがて植物体自身が枯れました。
夏に咲いたアジア綿の花 晩秋に咲いたアジア綿の花  ほかの品種でもこんな寒くなってから開花することがあるのかどうか試していません。




次へ
戻る
らうんじ目次へ HOME