ルーペ身近な理科室18


***身近な自然物の蛍光を見る***

蛍光インクや蛍光塗料に紫外線を当てると蛍光を発して光ります。
しかし、そのような人工物ではない鉱物や動植物組織やその関連物質で紫外線照射により蛍光を発するものは身近にもあります。
それらのものいくつかの蛍光を見てみました。



 ヒトの目に見える光の色で最も波長の長いのは赤、最も波長の短いのが紫です。紫外線は紫の光よりさらに波長が短く、ヒトの目には見えません。
下の写真はどれも紫外線を出すブラックライトです。左から順に、電池式のストラップ付き ・ソケットにねじ込み式 ・100円ショップのブラックライト付き蛍光ペン(電源はボタン電池) です。波長が少しずつ違います。
このページの実験では、最も手軽な100円ショップのブラックライト付き蛍光ペンを使いました。この3種類の中では、発せられる紫外線の波長は可視光線に最も近いものです。

   100円ショップのブラックライト付き蛍光ペンは、無色の蛍光ペン です。これで書いたものは見えませんが、キャップ先端のブラックライトで照らすと蛍光を発して見えるようになります。


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 以下は100円ショップのブラックライで照らした鉱物や動植物組織やその関連物質です。
それぞれ同じものを、左は自然光で右は暗所でブラックライトで照射して撮影しました。


〔いろいろな自然物の蛍光〕


1)鉱物

      どちらも科学館のミュージアムショップで購入したものです。
身近なところで拾った石には残念ながら蛍光を発するものはみつけられませんでした。
 
 鉱物の蛍光は多くの場合、微量の不純物によるということです。
 アンソフィライト(直閃石)  ソーダライト(方ソーダ石)  



2)貝殻

     貝殻は動物がつくりだした鉱物いわゆるバイオミネラルの一種で主成分は炭酸カルシウムです。この蛍光もやはり微量の不純物によるものでしょうか。
 シジミとダンベイキサゴは身近な貝殻の中で特に蛍光が顕著でした。 
 シジミ  ダンベイキサゴ(通称ナガラミ)  


3)カツオブシ

   カツオブシは蒸したカツオを燻製したりカビを作用させたり天日干にしたりして最後にはコチコチに硬く仕上がります。それを削り器で削ったものをブラックライトで照射しました。


4)緑色の葉

    植物の緑色の葉はどれもラックライトで照射するとこのように赤く光りました。
光合成色素クロロフィルが発する蛍光のようです。  
 コマツナ  


5)海藻

   トロロコンブは干したコンブを刃物で薄く削ったものです。
海藻も光合成色素を含むのでそれが蛍光を発しているのか、又は別の物質が光っているのでしょうか。
 トロロコンブ  


6)ナスの実の内部

   果肉部分にこのように 蛍光が見られるのは、ナスの生理的状態にも関係するようです。蛍光が見られない場合もありました。


7)バナナの皮

   バナナの実に含まれるデンプンが糖に変化すると甘く美味しくなります。
その頃になると、皮の表面にこのような黒いポツポツいわゆるシュガースポットが現れます。
ブラックライトで照らすとシュガースポットの周りが青い蛍光を発します。
写真では目で見た色とは違う色に写りましたが。 


8)ハチミツ

    かなり強い蛍光が見えます。
ハチミツに含まれる成分は多様ですが、そのうちの何が蛍光を発するのでしょう。


9)アオダモの樹皮

 

 多くの樹皮は蛍光物質を含みますが、アオダモ(モクセイ科 トネリコ属)の樹皮には特別多く 含まれます。

 切った小枝を水に入れてブラックライトで照らすと、切口から青く美しい蛍光物質が、煙が沸くように出てくるのが見られます。やがてこの蛍光物質は拡がって水全体が強く光ります。

 この写真は暗所での撮影ですが、明るい場所でも見られるほどの強い輝きです。


〔蛍光を発するしくみ〕

 

 光は波長が短いほど高いエネルギーをもちます。目に見える可視光よりも高いエネルギーをもつ紫外線に照らされたものはそのエネルギーを受けとって、基底状態(元のエネルギー状態)から不安定な励起状態(高いエネルギー状態)になります。

 それが基底状態にもどるとき、余分なエネルギーを可視光や熱として放出します。その可視光が蛍光というわけです。 


〔注意〕
 紫外線は目を刺激します。100円ショップのブラックライトの光の波長は比較的可視光線に近いものですが、直接見ないでください。できれば紫外線カット眼鏡をかけて実験してください。目が疲れないうちにブラックライトの使用を終わりましょう。

〔後記〕
 蛍光物質にはいろいろな種類があり、どんな物質なのか特定されていない場合が多いのです。また、動植物に含まれる蛍光物質がそれぞれの生物自身にとってどんな意味があるのかも難しい問題のようです。例えばクロロフィルなどの光合成色素は、蛍光を出すことで光合成反応において光エネルギーの伝達をしていると思われます。しかし多くの場合は、たまたまその物質の化学構造が蛍光を出すような構造となっているだけで、蛍光に特に役割があるわけではないとも考えられています。


〔参考資料〕
1)絵を見てできる生物実験 PartU(講談社サイエンティフィク) 1999年 岩波洋造・森脇美武・渡辺克己 著 P12〜13
2)サイエンスアイ新書 知っておきたい有機化合物の働き(SBクリエイティブ)2011年 斎藤勝裕・著 P40〜41
3)いろいろなものがブラックライトで光る(徳島県立博物館) https://museum.bunmori.tokushima.jp/ogawa/blacklight/goods.php
4)蛍光鉱物(スリーエム仙台市科学館) http://www.kagakukan.sendai-c.ed..jp
5)アオダモの花(県立広島大学) https://www.pu-hiroshima.ac.jp 
6)アオダモの蛍光物質は何のため?(日本植物生理学会)https://jspp.org.>q_and_a>detail
7)蛍光-展示ガイド(名古屋市科学館) https://www.ncsm.city.nagoya.jp


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