ルーペ身近な理科室17

***除草剤による白化現象?***

花色が赤・紫・ピンクなどが普通である植物に、ときに白や薄色の花が見られることがあります。
そのような珍しい花色の品種に出会えたと最初は思ったのですが…


除草剤などの農薬がかかってそうなることがあると知りました-このページ下の参考資料1)2)
そういえば、花色が白や通常の色やその中間的な色の個体が混ざって存在したり、花の形がいびつだったりします。
10年以上に亘って、そのような植物に出会う度に撮影してきた例を次の2つに分けてご紹介します。
〔1〕除草剤による白化の可能性が強いと思われる場合 〔2〕除草剤による白化かどうか判断に迷う場合

撮影年はまちまちですが、その月だけ記しました。


〔1〕除草剤による白化の可能性が強いと思われる場合
そう思われる理由−@田や畑の縁など除草剤を使用していると考えられる場所である A付近の草の枯れ方が自然でない。 

ショカツサイ




3月、静岡市で 
畑の縁近くでした。

園芸植物として栽培されていたショカツサイが、逸脱してきたもののようでした。
付近の草は枯れが目立ちました。
色はまだらで、白い部分が多いもの少ないもの、いびつな形の花が見られました。

 ナデシコ




3月、静岡市で 
ある家の庭でした。

このナデシコの葉や周囲の草の枯れ方はかなりひどいものでした。
除草剤を使用された可能性が濃厚です。
花の色はこのように、赤紫色の発現がいろいろなものや全く白いものが見られました。
おそらく本来の色は、中心部が濃い赤紫色でその周りがピンクでしょう。

フラサバソウ
 




3月 静岡市で 
畑の近くでした。

除草剤はこの画面下半分に特に多くかかったようで、葉の枯れかたは下半分がひどくなっていました。
本来の花色は淡青紫色ですが、ここのは一面に白で、よく見るとわずかに薄青い線が見られました。

ヒガンバナ




9月、静岡県藤枝市で 

水田の脇のあちこちに生えているヒガンバナ、通常の真っ赤なものに混じって色の薄いものや花びらの縁の色が薄いもの、白に近いものなどが見られました。ここには、そのような花がかたまっていました。

周囲の草は枯れが目立っていました。

 トキワハゼ




10月、静岡県藤枝市で 
場所は、上のヒガンバナがあった水田から少し離れた水田脇です。

通常の花色は薄紫ですが。
通常の花と比べて小さく、葉は他の植物(ツユクサ?)の葉におおわれて、花だけが白く目だっていました。


ツユクサ                 1)                     
                    6月、静岡市で
1)カキの果樹園横の道端でした。花はいびつなものや小さなものもありました(3枚目の写真)。また、花の色も、このように通常の青・薄青・殆ど真っ白が混ざって咲いていました。
この写真のツユクサの葉はそれほどでもありませんが、周りの草は枯れが目立ちました。
   
2)

10月、静岡市で
2)自宅の脇です。自分で除草剤をまきました。
草を取るのがが大変で。そのためでしょう、
このあたりのツユクサはひどく枯れ、花の色が
薄いものやいびつな形のものが咲きました。
 この1)2)の場所には、その後どちらもツユクサは見られなくなりました。


〔2〕除草剤による白化かどうか判断に迷う場合
判断に迷う理由−@人が手入している場所であるが田や畑の傍ではなく、除草剤が使用されているかどうか不明 A付近の草に、特に枯れが目立つことはない

 カタクリ




3月 静岡県島田市で
島田市が市指定天然記念物として、大切に保護して育てているカタクリの群生地「牧之原公園カタクリ園」です。

斜面に一面に群生する花の殆どは写真右のような色でしたが、いくつか真っ白な花を見つけました(写真左)。ほかの花が斜め下向きに咲いているのに、白花はほぼ真下を向いていました。
管理に除草剤が使われたのかどうか。それとも、色の変異の巾の範囲内でしょうか。  

   

 ムラサキサギゴケ



5月 奈良市で  
東大寺大仏殿の裏側、講堂跡の草むらです。大仏殿が雑踏の時期も、ここは人影まばらで静かです。

通常の薄紫の花のすぐ傍に、白い花が並んでいました。
世界遺産の地の一角で管理されていると思われますが、やはり除草剤が使われているのかどうか分かりません。
これも花色の変異の巾の範囲内でしょうか。ムラサキサギゴケの花色は変異の巾が大きいので。


ヒガンバナ               1)                                                  2)
 
1)9月、奈良県葛城市で
当麻寺(たいまでら)境内です。掃除と植物の手入れが行き届いていました。
タヌキノカミソリ、ショウキズイセンとともにこんなヒガンバナが咲いていました。
除草剤が使われたのか、このような花色の品種なのか。

2)9月、奈良県高市郡明日香村で
石舞台古墳にほど近い草むらです。田畑の付近ではありません。
周りの草の不自然な枯れは見られませんでした。

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【後記】
以上にご紹介した植物で最初に出会ったのはショカツサイの白花で、次がフラサバソウの白花でした。その頃には、幸運にも珍しい白花の植物に出会えたと思っていました。そうした意識から、その植物の普通とは違う形や周囲の草の枯れ具合などは見えていても気に留めていなかったのです。
除草剤などの農薬がかかるとそうなることがあると知ってからは見かたが変りました。まず周りを含めた植物の形が通常でないものはないか、また枯れ方が不自然でないかどうかなどを注意して見るようになりました。植物体が形成される過程や花の色素が合成される過程のどこかの段階を、除草剤などの農薬が阻害するのでしょう。
昔ヨーロッパで、花弁に斑が入ったチューリップがもてはやされました。しかしそれはウイルスに感染したことによる現象だった、というのを思い出させます。
かなり長い間観察していますが、この花色は除草剤などのためではなく、本当の白花(又は薄色の花)品種なのだと確信できるものには出会っていません。


〔参考資料〕
1)最新版雑草・野草の暮しがわかる図鑑(秀和システム)岩槻秀明・著 P139
2)最新版街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本(秀和システム)岩槻秀明・著 P24〜25
3)シロバナツユクサのページ http://www.janis.or.jp/users/atsun/tuyu.htm
4)農薬豆知識 農薬のお話<除草剤のメカニズムA> http://www.hokusan-kk.jp/tips/pdf/ac/46.pdf


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