みんなの実験室20
**サインペンで科学マジック**
サインペンで絵や字を描き、科学マジック仕立ての実験をやってみました
●こんなマジックです
1)消えちゃった!
紙にサインペンで絵を描きました。お皿に入れたサクランボです。 ヘアドライヤーの熱い風を当てたら、サクランボが消えお皿だけが残りました。 さて? |
2)変っちゃった!
サインペンでまちがった式を書きました。 ドライヤーの熱い風を当てたら正しい式になりました。 でも、元の式の一部が消えてこうなったような。 サインペンで、怖くにらんだ顔を描きました。 ドライヤーの熱い風を当てたら、にっこり顔に。 これもよく見ると元の顔の一部が消えたような。上の式の場合よりちょっと複雑だけど。 さて、どこが消えた? そして、なぜ消えた?、なぜ消える部分と消えない部分がある? |
●種明かし
これはひとつの絵や字を、2種類のサインペンで部分的に描き分けたのです。その2種類とは−
@普通のサインペン Aこすると色が消えるサインペン
ドライヤーの熱い風を当てても消えなかった部分は@で描き、消えてしまった部分はAで描きました。
では、Aのペンでかくと熱で消えてしまう理由は?
Aのペンにはラバーがとりつけられてあり、かいた絵や字をそのラバーでこすると消えます。でも、ラバー以外のもの例えば鉛筆キャップなどでこすっても消えます。
しかし、@のペンでかいた絵や字は、ラバーでこすってもそのほかのものでこすっても消えません。だから、このしくみは、ラバーにではなくペンのインクにあります。
下記の図と文はそのしくみの説明です。〔 図は下の<参考資料> 3)を参考に作成 〕
色が消えるしくみ
このインクの中のマイクロカプセルには、次の3種類の成分が含まれます。 ・発色剤(色のもと) ・発色させる成分 ・変色温度調整剤 「発色剤」はそれだけでは色がなく、「発色させる成分」と結合すると発色します。常温ではこの結合ができているので発色しています。 60℃以上の熱を加えると、「発色剤」と「発色させる成分」との結合が切れ、「発色させる成分」は「変色温度調整剤」と結合するので色が消えます。そして、常温にもどってもこの結合状態が保たれるので、色は消えたままです。 ラバーやその他のものでこすると摩擦熱が発生します。その温度が60℃以上になると色が消えます。 しかし、摩擦熱以外のほかの方法で熱を加えても消えます。ここではドライヤーの熱い風を当てました。 (「変色温度調整剤」の種類が違うと、色が消える温度も違います) (「こすると色が消えるサインペン」についてはこちらのページでもとりあげました→文房具で実験 |
〇使い捨てカイロで加熱すると
発熱した使い捨てカイロに接触させる方法も試してみました。使ったのは「平均温度51℃、最高温度65℃」と「平均温度61℃、最高温度73℃」の2種類です。
いずれにしろカイロの温度はずっと一定ではありません。そのときの温度により、色は消えたり消えなかったり、消えても常温にもどすとまた現れたりでした。
温度が低いと、「発色させる成分」と「変色温度調整剤」との結合ができなかったり、できても不安定なのでしょう。発熱した2つのカイロの間にはさむと消えやすくなりました。
●消えちゃった部分、復元できないかな
熱で消えてしまった色を、また見えるようにすることはできないでしょうか。
1)ブラックライトの光を当てる |
ブラックライトとは、目に見えない紫外線を出すライトのことです。 1)2)の実験で部分的に消えてしまった絵や字に、暗い所でブラックライトの光を当てると、消えた部分がこのように薄く見えました。 この状態のマイクロカプセル成分は紫外線を反射するのですね。 (紫外線-可視光線で最も波長が短い紫の光よりさらに波長が短い光) |
ブラックライト |
これらがブラックライトです。 左から順に、ストラップ付き・ソケットにねじ込み式・100円ショップのブラックライト付きペン です。 波長が少しずつ違いますが、これらのどれで照射してもこの実験の絵や字の見え方は上の写真のようでした、 |
2)冷凍庫に入れる
しかし、ブラックライト照射ではあまりはっきりは見えません。では、熱を加えるの逆の冷やしたらどうでしょう。冷蔵庫(内部温度は6℃ほど)に入れてみましたが、ずっと変化なしでした。
次に、冷凍庫(内部の温度はマイナス10℃ほど)に入れてみると、このように消えた部分がブラックライト照射の場合よりはっきり現れました。
これらの絵や字をポリ袋に入れ冷凍庫に入れました。この写真は、約1時間入れておいたものです。 マイナス10℃以下では、また発色剤と 発色させる成分とが結合するのです。 ただ、インクにより復元の程度は違うようです。 |
以上のことを頭において、自分で考えた絵や字を描き、この科学マジックをやってみてください。
まず、熱を当てても消えずに残したい部分を「普通のサインペン」で描きます。次に、熱で消したい部分を「こすると色が消えるサインペン」で描き足します。
「こすると色が消えるサインペン」で描く部分は、あまり何度も塗り重ねると、熱を当てたときに完全に消えないことがありますから気を付けてください。
<注意>
1)熱を加えるために火の出るものを使わないでください。ここでは安全のためにヘアドライヤーや使い捨てカイロを使用しました。
2)ヘアドライヤーの熱い風を直接肌に受けないでください。また、熱い使い捨てカイロはタオルなどに包んで扱ってください。どちらも火傷の恐れがあります。
3)ブラックライトの光は見つめないでください。また長時間照射せず、結果が分かったら直ぐ消してください。
<参考資料>
1)トコトンやさしい染料・顔料の本 中澄博行・福井寛 著 P132〜133 日本経済新聞社(2016)
2)『消せるボールペン』30年の開発物語 滝田誠一郎 著 P25 小学館新書(2015)
3)こすると消えるフリクション https://.www.frixion.jp/ink/ 株式会社パイロット
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