プリズム
みんなの実験室
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**文房具で実験**

いろいろな文房具に科学が使われています。それらについて実験してみました。
実験した文房具は、・水性サインペン ・こすると消えるサインペン ・消え色スティックのり ・消しゴムです。



水性サインペン一色にはいくつの色が含まれる?
  水性サインペンの一色は、いくつかの色を混ぜてつくられていることがあります。それらを紙の上で分離して、含まれている色を調べます。

 [やり方]
1)キッチンペーパーを細長く切り、下から2〜3cmのところに鉛筆で横線を引きます。その線の上に、水性サインペンで直径3mmくらいの丸をつけます。丸の下にその色の名を鉛筆で書きます。(下の図と写真)。
2)コップまたは広口のビンに水を下から1cmほど入れます。
3)割り箸2本をそろえて両端近くの2か所を輪ゴムでとめます。この割り箸2本の間に1)のキッチンペーパーの上端より少し下のところをはさみます。
4)はさむ位置の調節-このキッチンペーパーはコップの中につるして下の端5mmほどが水につくようにするのですが、そうなるように調節します。割り箸にはさんだキッチンペーパーをコップと並べてみて、はさむペーパーの位置を上下して調節します。
5)キッチンペーパーを下の方からコップの中に下していきます。割り箸をコップの口に橋わたしして置くとキッチンペーパーはコップの中につるされます(図)。下の端5mmほどが水につくように。水がしみ込んで上がるにつれ、サインペンのインクも上がっていきます。
   

水がキッチンペーパーを上がるにつれインクも上がっていきますが、そのインクにいくつかの色が混ざっている場合、色によって上がりやすさにちがいがあるため写真のように分かれます(展開)。しかし、中には一色だけが含まれていて、分かれない場合もあります。

〔注意〕必ず水性のサインペンを使ってください。油性インクは水に溶けないので、このようにしてもインクは上がっていきません。
〔追記〕この方法を「ペーパークロマトグラフィー」といいます。当サイト中にペーパークロマトグラフィーの実験はほかに次の3つがあります。
    クリック→ 「みんなの実験室6.   みんなの実験室9  生物実験室11

     



こすると色が消えるサインペン、消えるしくみは?
  このペンでかかれた字や絵は、ペンにとりつけられたラバーでこすると消えます。どんなしくみで?

 
 付属のラバーでこすると消えました↑。 でも、ほかのものでこすっても消えました→
ラバーに 仕組があるわけではないのですね。
 

[参考資料の説明]〔下記参考資料2)5)〕
こすると消えるサインペンのインクには3つの成分が入っています。@発色剤(色のもと)、A発色させる成分、B変色温度調整剤です。
@とAが結合すると色が現れます。温度が60℃以上になるとBがはたらいて結合を切るので色が消えます。
付属ラバーやそのほかのものでこすると摩擦熱が発生します。そして60℃以上になると色は消えます。また、それを−10℃まで冷やすと@とAが再び結合しはじめるので消えた色が現れます


〔実験〕60℃以上で色が消えるのならば、摩擦熱を発生させる以外の方法で温度を上げても色は消えるのではないでしょうか?そこでドライヤーの熱風をあててみました。また消えた色が現れるかどうか、冷凍庫(家庭用のは-18℃以下とJIS規格で定められている)に入れて試してみました。。

  1)消えるサインペンで紙に書いた文字を付属のラバーでこすると、こすった個所は消えました。それを冷凍庫に入れ、1時間後に出してみるとにまた文字が現れていました。
   2)消えるサインペンで紙に書いた文字はドライヤーの熱い風を当てても、その個所は消えました。 冷凍庫に入れ、1時間後に出してみるとやはり文字が現れていました。

冷凍庫ではなく、冷蔵庫(温度は2〜10℃)に入れることも試してみましたが、文字は何時間経っても現れませんでした。この温度では高すぎるようです。

〔追記〕細長い紙を「こすると消えるサインペン」でぬると、60℃で色が消えるサーモテープをつくることができます。

        


消え色スティックのり、消える仕組みは?
消え色スティックのりは、ぬったときは青(メーカーにより紫の製品もあり)で時間が経つと色が消えていきます。どんな仕組で?

[参考資料の説明]〔下記参考資料3)6)〕
こののりに含まれている色素はリトマスなどと同じように、酸性・中性・アルカリ性で色が変ります。酸性や中性では無色で、アルカリ性では青です。
容器に入っているときはアルカリ性にしてあるので、ぬった直後は青です。ぬられるとのりの水分に空気中の二酸化炭素が溶け炭酸という酸になるので、無色になります。

〔実験〕次の@Aの実験を行いました。

 @空気を遮断すると?酸をぬると  Aのりの色が消えた後、灰をとかした汁をぬると?
   
 @透明プラスチック板をつけた部分は空気と遮断されて二酸化炭素との反応ができず、炭酸ができないので、色が消えません。食酢は酸性なのでぬると直ぐその部分の色が消えました。 A 灰汁はアルカリ性であることがわかります。

〔追記@酸性・中性・アルカリ性で色が変る物質はリトマス以外にもいくつかあります。消え色スティックのりに使われているのが何という物質なのかは企業秘密のようです。
A消え色スティックのりを紙にぬったもので、酸性・中性・アルカリ性を調べることはある程度できます。

            


消しゴムをプラスチックの上に置いておくと?
消しゴムをプラスチック製品に接触させておくと、何ヶ月か後そのプラスチックが溶け消しゴムがくっついてしまうことがあります。どうして?

[参考資料の説明]〔下記参考資料4)7)〕
消しゴムの主成分はポリ塩化ビニルで、それを軟らかくするために液体の「可塑剤」が加えられています。消しゴムがプラスチックにくっついてしまうことがあるのは、可塑剤がそのプラスチックに浸出して溶けあってしまうためです。

〔実験〕これは気の長い実験です。紙ケースから出した消しゴムと紙ケースをつけたままの消しゴムを、数種類のプラスチックの上に置いておきました。特に反応が著しかったのは発泡スチロール(ポリスチレンに気泡を含ませたもの)の上に置いた場合でした。

 
 ○置いてから4か月後、消しゴムは発泡スチロールに少しめり込んでくっついていましたが、持ちあげると離れました。そのままにしておいたところ、1年後には消しゴムの周りの発泡スチロールは溶けて隙間ができ、消しゴムの厚さの半分ほどが沈み込んでしまいました。持ち上げると発泡スチロールは離れずくっついてきました。発泡ではないポリスチレン樹脂に置いた場合も4ヶ月後には一部がくっついていましたが持ち上げると離れました。紙のケースに包まれた消しゴムは1年後にも全く接着していませんでした。
○ポリスチレン以外のプラスチックに置いた場合の4ヶ月後
ポリエチレン・ポリエチレンテレフタレート(PET)の上に置いた消しゴムは接着はしていませんでしたが、消しゴムを持ち上げてみると樹脂には消しゴムの形の跡がうすくついていました。紙のケースに包まれた消しゴムではそのような跡はありませんでした。

〔追記]可塑剤に溶けやすさはプラスチックの種類によって違いました。消しゴムは筆箱の中でプラスチック製品との接着を防ぐため紙のケースに包まれて売られています。しかし、ふつう消しゴムは使うたびに筆箱から出し入れされます。また筆箱は動かされ運ばれます。この実験のように長い間プラスチックとくっつけて放置されたままということではないので、たとえ紙ケースに包まれていなくても、ふつうの使い方をしていれば消しゴムがプラスチックを溶かしたりくっついたりすることはまずないと思われます。


<参考資料>
1) 親と子の科学の冒険 P66〜67 日本経済新聞社(1999
2)『消せるボールペン』30年の開発物語 滝田誠一郎 著 P25 小学館新書(2015) 

3)ブルーバックス 新しい高校化学の教科書 左巻健男 編著 P210〜211 講談社(2011)
4)へんなプラスチック すごいプラスチック 齋藤勝裕 著 P170〜171
5)こすると消えるフリクション https://.www.frixion.jp/ink/
6)のりの豆知識 https://www.tombow.com/sp/kids/glue_stick/tips.html
7)消しゴムとプラスチックの微妙な関係 https://office-frt.com/815/


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