プリズム
みんなの実験室6.

いくつの色が含まれいる? −

家庭でできるペーパークロマトグラフィー)

混ざっているものを、ろ紙の上で成分に分ける、ペーパークロマトグラフィーという方法があります。
水性サインペンの一色に含まれる何色かを、この方法で分けてみましょう。


方法(下の写真を参照してください)

<用意するもの>
・水性サインペン−各色(油性ペンは水に溶けないので不可)
・吸水性のある紙-ティッシュペーパー、キッチンペーパー、天ぷら敷紙(両面ともざらざらなもの)、ペーパーハンドタオルなど
・コップや空きびんなど透明な縦長の容器(高さは10〜15cmくらい。)
・水(または消毒用か燃料用のエタノール)
・わり箸

<やり方>
1)吸水性の紙を、コップに入る巾になるよう、細長く切ります。下から2.5〜3cmのところに鉛筆(サインペンやボールペンは不可)で横線を引 きます。
2)鉛筆で書いた横線の上に、水性サインペンで点(スポット)を書きます。スポットは にじんで広がり円になりますが、それがあまり大きくならず、直径3mmくらいになるようにしてください。何色か並べて書いてよいです(下の左端の写真)。
3)コップ(空きびん)に、5mmくらいのところまで水(または消毒用エタノール)を入れます。わり箸を、容器の口の直径より6cmほど長く切ります。これを容器の口に橋を渡すようにかけます(下の写真の場合は、このわり箸が動かないよう、セロハンテープでコップにとめました)。
4) 2)の紙の下端(水性サインペンで書いたスポットのある方)3〜5mmが水につくようにしてコップに入れ、上の部分を折って わり箸ににかけます。そのとき、紙の左右の端が容器の壁に触れないようにしてください。これでセットできました。
5)コップを、動かさないでそのままの状態で置いておきます。やがて水が紙にしみ込んで上昇していきます。するとサインペンで書いたスポットも上昇しますが、それにつれてスポットの一色が何色かに分かれていくのが見られます。この操作を展開と言い、水(またはエタノール)を展開剤と言います。7〜10分展開させたら、紙をコップから出して乾燥させます。

なぜこのように分かれるかは、このページの下の方に記しました。

ペーパークロマト展開経過

上の写真の場合は…
ここでは、2つの異なるメーカーのサインペン1セットずつを使いました。それを仮にA社、B社とします。
紙は天ぷら敷紙で、3.5cm×20.0cmのサイズに切りました。 まず、つけようとするスポットの色とメーカー、展開剤の種類を紙に鉛筆で書きました。次に、A社の紫とB社の黒をスポットにしてつけました(左端の写真)。これを、展開剤(水)を入れたコップにセットします。
右4つの写真は、セットして展開中の状態を時間をおいて撮影したものを並べました。左から順に、セットして30秒後、1分後、3分後、5分後の状態です(時間がたつほど展開剤が紙を上がる速度はおそくなります)。30秒後ではスポットはまだあまり分かれていませんが、時間とともに水が紙を上昇し、それとともにスポットも何色かに分かれていくのが見られます。
A社の紫はピンクと青に、B社の黒は青、茶色、ピンクに分かれました。同じ青でも、A社の紫に含まれていたものと、B社の黒に含まれていたものとでは、上昇距離がちがいますから異なる物質です。A社の紫に含まれるピンクと、B社の黒に含まれるピンクについても同様のことが言えます。


<実験1>同じ色でもメーカーがちがうと…

クロマトグラム−1A社とB社の同じ色を、同じ紙に並べてつけ、展開してみました。
左の紙は茶色、右の紙は黄緑色です。

・茶色
A社のものは黄(赤の上にうっすらと見えます)、赤、紺の3色に分かれましたが、B社のものは黄緑と赤の2色に分かれました。

・黄緑色
A社B社どちらのものも、黄色と青の2色に分かれましたが、同じ物質ではありません。A社のものは黄色が上(これも薄いですが確かに見えます)で青が下になって分かれていますが、、B社のものは反対に青が上で黄色が下になっていますから。

同じ色でも、メーカーによってちがう物質が含まれていることが分ります。

なお、このことは次の<実験2>A社の黒とB社の黒についても言えます(この下の写真)。




<実験2>同じサンプルでも展開剤がちがうと…

クロマトグラム−2A社、B社の黒を同じ紙につけたものを2枚つくり一方は水で展開し、もう一方は消毒用エタノールで展開してみました。

・どちらで展開した場合も、同じ黒でもメーカーによってちがう物質が含まれていることが分ります(上の<実験1>でも述べました)。
つまりB社の黒は青、茶色、ピンクに分かれました、A社の黒はそのように分かれてはいません。

・同じサンプルでも展開剤がちがうと、分かれ方がちがいます。
A社の黒を水で展開した場合と、消毒用エタノールで展開した場合とで分かれ方を比べてみましょう。水で展開した場合は黒以外の色は分かれてきませんが、消毒用エタノールで展開した場合は黒の上にかすかにオレンジ色がみとめられます。

B社の黒を水で展開した場合と、消毒用エタノールで展開した場合とで分かれ方を比べてみましょう。どちらも3色に分かれていますが、分かれ方の順がちがいます。水で展開すると、上から順に青、茶色、ピンクですが、消毒用エタノールで展開すると上から、ピンク、青、茶色の順になります。


ペーパークロマトグラフィーで混合物が成分の物質に分かれる理由
混ざっている物質は、それぞれ展開剤への溶けやすさ、紙への吸着されやすさに差があります。展開剤に溶けやすく、紙にあまりしっかりと吸着されない物質は、容易に上がっていきますが、その反対だと上がりにくいというわけです。同じ物質でも展開剤の種類がちがえば、溶けやすさはちがってきます。

追記
サインペンなどの色素から、ペーパークロマトグラフィーによって蛍光物質を分離する実験はみんなの実験室9(←クリック)にアップしてあります。また、葉の色素を分離する実験は生物実験室11(←クリック)を見てください。

<参考文献>

・親と子の科学の冒険(日本経済新聞社)


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