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郁未「ところで聞きたい事があるんだけど、いいかしら?」
深山「あ、はい。何ですか?」
郁未からの問いに雪見は、笑顔で応えた。

郁未「私達はある者を追っているの。それについての情報を知ってるのかと思って・・」
深山「誰なんですか?郁未さん達の追っているというのは?」
郁未「人・・・と言うのはちょっとちがうこもしれないんだけど・・・いえ、やっぱり人・・・私達と 同じなのかも?」
深山「・・・・・・・どう言うことでしょう?」

深山だけでなく、他の仲間も(みさき先輩さえも)郁未のただならぬ雰囲気に声を静め、聞き入っていく。
それは、はしゃいでいた由依と晴香も同じだった。

郁未「彼女達を的確に表現できる言葉と言えば・・・・「ドッペル」と言う言葉だけ・・・そして、最強 の敵であり、味方にもなりうる者・・・」
郁未の言葉に皆が真剣になって聞いていた時
七瀬「あぁ!?そうよ、そう!! 私が伝えようとしたのもそれだったのよ!」
突如、大声を上げる七瀬。それに応えるように、みんなの視線が七瀬に集まった。

皆から外れ、七瀬は装甲戦闘車の上に何とかよじ登ると、1人話し始めた。
七瀬「遂に真実を告げる時が来たのね・・・」
七瀬は憂いを帯びた美少女、といった表情で語りはじめた。
・・・もちろん、毎日この表情を作るために鏡の前で特訓していたのは言うまでもないが、これはまた別な話である。


七瀬「私たちの真の敵、それはドッペル軍団よ!」

  「「「ドッペル軍団?」」」


誰とも無しにそんな質問が飛ぶ。七瀬はその質問を予期していたのだろう。冷静に答える。
七瀬「そう、ドッペル軍団。ドッペルゲンガーって知ってる? 彼女たちは言ってみれば私たちの影。永遠の世界で作り出された、もう一人の私達・・・」


  「「「永遠の世界?」」」


またしても質問が飛ぶ。 その言葉に茜だけは1人ピクリと反応し体を強張らした。

七瀬「あなた達も見たでしょう、私や芹香さんにそっくりな彼女たち・・・・
昨日その中のドッペル七瀬と戦った時に彼女の意識の断片が聞こえてきたわ。
彼女たちは私達のことを邪魔に思ってるって事。そして私達を倒してこの世界を乗っ取ろうとしている・・・」
七瀬は一気に説明し終えると、口を閉ざしたのであった。



深山「なるほど、そう言う事だったのね・・・。郁未さん!私達も協力するわ! ねっ?みんな!」
雪見はうなずくと、みんなの方に向き直り声をかけた。

椎名「みゅ〜♪」
みさき「雪ちゃんが、そう言うなら私はOKだよ」
澪『あのね・・・頑張るの♪』
みんなの応えにうなずく深山・・・

深山「ありがとう!みんな! ・・・・茜さんは?」
茜「・・・・私は・・嫌だったら嫌と言います」
その茜らしい答えに「くすっ」と笑うと、郁未の方を振り返り、

深山「っと言うわけです、郁未さん。私達も協力させて頂きます。で、何をすればいいのかしら?」
郁未「そうですね・・・ドッペル軍団の中心となる人物を見つけない事には・・彼女たちをまとめる中心人物がいるはずよ」
深山「それがこの事件の首謀者・・・」
その問いに頷き答える郁未。


みさき「ねぇ、そういえば詩子ちゃんとワルキューレちゃんは、どこに行ったの?」
みさき先輩の不意の問いかけに、皆は思い出したように・・・


  「「「あぁ!!忘れてたぁ!!」」」



間抜けな叫び声が響いていった。


    ・
    ・



葉子「だいたいの話しの流れは分かりました。では、さっそくワルキューレと詩子さんの追っている戦車を追いましょう」
今までの話しから推測した葉子さんは、そう提案した。

郁未「そうね、葉子さん。さっそく追いましょう! っというわけで、私からもぅ1つ提案があるんだけど、いいかしら?」
深山「何かしら?」
郁未の問いかけに雪見が応える。
郁未「いくつかのパーティーに分かれて探しましょう。その方が動きやすいし、他のドッペル達も見つけられると思うの?」
深山「OK、分かったわ。・・・で、どう分けるの?」
郁未「私と晴香で組むわ。由依と葉子さんはベースに戻って情報の整理をお願いするわ。そちらは?」
深山「そうね・・・、私と上月さんで詩子とワルキューレを追います。七瀬さんは・・・椎名さんと一緒みたいね・・・」
七瀬のおさげに繭は「みゅ〜♪」と言いながら、じゃれあっていた。

茜「・・・深山さん。・・・・私は葉子さん達に付き合います」
深山「そう・・・、いいかしら?」
葉子「私は構いません・・・・」
物静かな言葉で目を閉じながら答える。それに茜がお辞儀をして礼をする。


深山「なら、お願いするわ。・・・・で、残ったのは」
周囲の雰囲気を感じた、みさきは・・・

みさき「あ・・あの・・・私は、何をすれば・・・・」
オロオロと不安な表情を浮かべ戸惑う。

深山「はぁ〜・・・みさき1人では大して役に立ちそうにないわね・・・」
みさき「うぅ・・・雪ちゃん、酷い事言ってない・・?」
深山「ははは・・・ゴメンね、みさき」
むぅ、とするみさきに苦笑した。



郁未「でしたら、みさきさんには、アレの操縦をお願いし様かしら?」
みさき「はい?」
深山「あれって?」

2人のすっとんきょうな返事に、郁未はある物を指差しながら答えた。
その指先に見えるものを見た深山は、それが見えないみさきに代わって答えた・・・

深山「アレって・・・あのロボットを!?」
郁未「そうよ」
他に何があるの? と言った表情を向ける。
深山「そうよ!って、みさきに出来るわけ無いじゃないですか! ・・・こう言っては何ですが、彼女は目が見えないんですよ」
深山からの抗議の声に、郁未は・・・


郁未「あぁ、それなら大丈夫!アレには高性能のコンピューターが乗ってるから、彼に任せておけばOKだし、
それに操縦とかはマインドシフトでコントロールするから大丈夫よ♪」
深山「でも・・・・」
心配そうな表情をする深山の横を通り抜け、郁未はみさきの手を取るとロボットに向って行った。

みさき「あれれれれ・・・?どこいくのぉ〜・・・」
郁未「大丈夫、大丈夫!乗っちゃえばOKだよ! で、これからサイファーの説明をするから」
無理やりコクピットに座らせられたみさきにHMDゴーグルをかぶせる。

みさき「えっ?何!何!?」
郁未「ふふふ、安心して・・これで外の景色が見られるようになるわよ!さて、後はよろしくね、サイファー!」
??「了解しました。あとはお任せください」
みさき「あれれれ? 他にも誰かいるの?」
物腰の落ち着いた男性の声が聞こえる。
コクピット内にはみさき以外の姿はいないはずなのに・・・

??「申し訳ありません紹介が遅れましたね。自分は可変型高機動バーチャロイド・RVR−42搭載のメインコンピューター「サイファー」です。よろしく」
みさき「わたしは、みさき・・・川名みさきだよ。よろしくね、サイファーくん!」
サイファー「川名みさきさんですね、了解しました。これからはマスターと呼ばさせて頂きますが、宜しいでしょうか?」
みさき「はは・・・なんだかテレるねぇ。 あっ、でも!みさきちゃんでも良いよ♪」
サイファー「みさきちゃん・・・ですか? ・・・・・申し訳ありません、以後マスターと呼称させて頂きます」
みさき「あぅ〜・・・可愛いのにぃ」
戦闘用のコクピットで和やかな会話が進んでいた。


サイファー「では、今からマインドシフトを行います。気持ちを楽にして下さい」
みさき「・・? うん、分かったよ」

サイファーは各種設定をクリアにすると、起動ディスクを作動させる。
正面モニターには「MSBSver5.2 ReSTART」と言う文字が表示され、以降さまざまな表示が流れていく。
そして低いモーター音が高まってくると、かぶったHMDユニットが、みさきの意識データを検索し始めた。



 M・S・B・Sと呼ばれるマインドシフト・システムとは、複雑である2足歩行兵器の操縦を容易に行えるようにするシステムである。
 パイロットの意識を直接OSと直結し、頭で考え心で思う事で機体をコントロール可能となり、
 後は、コントロールレバーのスティックを簡単に操作し、トリガーを引くだけと言う次世代型OSの賜物であった。



サイファー「メンタルセンサー同期OK!データーのリンクを完了しました。マスター、外部モニターを視覚神経にシンクロさせます。よろしいですか?」
みさき「えっ? う、うん・・・」
言っている意味が分からず曖昧に答えるみさき・・
サイファー「脳内神経微弱電流とモニター信号とのシンクロ同調率+0.2、モニターON!」
瞬間、みさきの何も映さない真っ暗な瞳(この場合、脳の視覚中枢に直接だが)に、だんだんと明るさが戻り始めると、
ふいに外の景色(サイファーのカメラアイからの)が映し出された。

みさき「うっ・・・」

突然の事に何が何だかわからなかったみさきは、昔の記憶と照り合わせるように、意識を集中して行った。



みさき「あ・・・あぁ・・・見える・・・見えるよぉ!青い空も太陽も!そして・・・」
肩肘を突いていたサイファーの頭部が下で待つみんなのほうを向くと、
みさき「雪ちゃん、雪ちゃぁ〜ん! 私、見えるよ・・外の世界が見えるんだよ!あはははっ!」
サイファーからの外部スピーカーからのみさきの声を聞いていた深山は、郁未からの説明を聞くと驚きの表情を浮かべ、サイファーの方を見た。

深山「みさき!? 本当なの?本当に・・・」
みさき「うん!サイファーくんを通してだけどね!・・・けど、雪ちゃん?」
深山「・・何?みさき?」
目にうっすらと涙をためながら答える。

みさき「雪ちゃんって・・・・・老けたね?」
ピクッ・・・、雪見の頭に怒りマークが2つほど現れると、
深山「みさきと同じ歳でしょうがぁ!私はぁ!!」
みさき「あはは・・・ゴメンねぇ雪ちゃん。私の知っている雪ちゃんは、小学生までだから」

屈託の無い笑顔で謝るみさき。 それに、「相変わらずね、あんたは」とため息で返す雪見。
深山「ったく・・・まぁ良いわ。さて、では私達も行動を始めましょうか?」
回りのみんなも、それに対しうなづいた。



郁未「じゃぁ私と晴香は、ちょっと調べたいことがあるから行くわね。あなたは?」
深山「私は、柚木さんとワルキューレを追います。七瀬さんは?」
七瀬「わたしと繭は、学校に行くついでに裏山を見に行って来るわ」
深山「そうね、気をつけて。それと葉子さん・・・里村さんをよろしくね」
葉子「分かりました・・・皆さんも気をつけて。・・・それでは行きましょうか」


そして、各自がそれぞれの目的地へと向うと後には深山先輩と澪・・・そしてサイファーに乗るみさき先輩だけが残る

深山「さて、ワルキューレの場所はと・・・」
サイファー「それに関しては、自分の方で心当たりがありますので、お任せください」
みさき「サイファーくん、詩子ちゃん達の居場所が分かるの?」
サイファー「えぇ、彼女・・・ワルキューレとは古い仲なので・・・」
みさき「?」
ちょっと寂しそうな言い回しに首をかしげる、みさき

サイファー「では、深山さん。 自分は上空から索敵します。位置情報に関しては郁未さんから渡されたPDA(携帯情報端末)に送りますので・・・着いて来れますか?」
深山「ふっ・・・バカにしないでよね。 それじゃぁ私達も行きましょう・・・真の平和を目指して!」
サイファーは立ちあがると共に上空へジャンプ

 カシュン!

一瞬のうちに人型から飛行形態「モータースラッシャー」へと変形を終了するとブースターを点火し、ダッシュを開始した。




それを見送ると
深山「さて、クライマックスへ向けて頑張るわよ!」
澪『頑張るの〜!』

そう書かれたスケブを持った澪を抱えて、深山先輩も高速移動を開始した。








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車のテールランプが赤く流れる街並みが見える・・



??「ふふふっ、とうとう役者が揃ったみたいだよ」
??「うん、揃ったみたいだよ。それに大きな私もアレを受け取ったみたいだしね」
??「みんな頑張ってよ! じゃないと、この世界が壊れちゃうからね」
??「そうだね、壊れたら嫌だもんね」
??「あっ、お姉ちゃんが呼んでるよ!」
??「ホントだ、行こう!」



2人の幼い少女が仲良く手を繋いで歩く。真っ赤な夕日がいつまでも草原を赤く染めながら・・


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    ・



     〜未完〜



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