まだ間に合うか? 取り返しがつくのか? 
    2000.2.1
 
 …そんなふうに思うことが、このごろとくに深刻になってきた。
 わかっていながら放っておいた、というわけでは決してないのに、そればかりにかまっていることもできず、気がついたらますます事態はひどくなって…。

 たとえば、鉛筆の持ち方、箸の持ち方。

 我が家の子どもたちは3人が3人とも正しい鉛筆の持ち方、箸の持ち方ができていない。
 サキは1歳の頃から箸を使って食べていたし、その頃は上手に使っていた。やがてななみが生まれ、さらにこうちゃん…と忙しくなるにつれて、私は細かいことに注意を払わなくなってしまい、ななみなどいつの間にか箸も使うし、字も書く。それで、どんどん字を書くから…と、幼稚園年中の時から書道教室に通わせた。そこで先生にまかせておけば大丈夫だろう、と安心したのが間違いのもとだった。

 1年も過ぎた頃か、私は鉛筆の持ち方がヘンで、ヘンな書き方をしていることにようやく気づいたのだ。
 …これじゃ、うまく書けないでしょ。鉛筆の持ち方、教えてくれなかった?――と、教えても、もう簡単には戻らない。
 教室ではお手本を見て書いたものを先生が直してくれるだけで、肝心の書き方、鉛筆の持ち方は指導してくれないらしいのだ。書けた作品よりも、どうやって書くかが問題でしょう?
 お正月の書初めを家で彩紀が練習しているのを見たときも驚いた。

 な、なに?!・・・昔と今では、筆の持ち方、運び方が違うのか? 私が習った頃って、筆を立てるように書いたものだけど、今は鉛筆を持つようにねかせて持って書くわけ? 「の」の字も、全然うまくかけない。へんな運び方をしている。いくらなんでも、これはおかしい、とその時初めて、筆の運び方、はらい方もろくに教わってないのでは、と気づいたわけだ。書き上げた作品だけを見てもらうだけだから、ひとつの字を書くときに、途中でやめて墨を足して続きをまた書き始める、なんてことを平気でやる。かすれた部分をもう一度なぞるなんてことも平気。(う、うそだろー?と、頭がヘンになりそうだった)

 ま、そんな具合なので、サキは部活が忙しくて自然に通うことができなくなってしまったが、ななみもサキが行かなくなってからはさぼりがちになり、ついには「やめる」と言い出した書道教室、私は引き止める気力もない。家で鉛筆の持ち方を1からやり直したほうがずっと将来のためだとすら思う。箸の持ち方もね。(あれではいくらなんでも私が恥ずかしい)。

まだある…。

 中学の1年もあと少しで終わってしまうというこの時期になっても、まだ何の打開策も見えてこないサキ。数学など絶望的。
 冬休みに塾の冬季講習に通わせ、「現状を思い知りなさい。」と言ったのだが、それはそれでちょっと効果があったようだ。これではいけない、と危機感を少し感じたらしく、冬季講習が終わると「続けて通いたい。」と言い出した。
 しかし、その時点では私はサキを塾に通わせる気持ちはまったくなかった。第一月謝が高いし、塾へ行ったって今の状態では何も変わらないだろうと思ったのだ。
 学校の授業がわからないから塾…なんて言ったってムリだろう。それに、中学のうちは(高校受験は)「チャレンジ」(進研ゼミの)をきちんとやっていれば大丈夫、と思っていたのだ。


 ところが、よーく考えてみると、去年の10月頃から、あれほどチャレンジの数学の問題を丁寧に教えてあげたのに、サキはきちんと理解することができなかった。チャレンジをやるためには、チャレンジに書かれていることが自分で理解できる、ということが前提だけど、それができない。――そこまでの理解力がない、ということに、私はようやく気がついたのだ。
 さらに、お父さんが英語を教えようとしてもまともに聞こうとしない。教わる気がない。数学も、まったく聞く耳を持たない。…私は週に2回くらいお父さんが英語を教えれば、レベルもあがっていくと思っていた。素直に聞けば、の話だ。
 しかしそれもダメ。夏休みから、教えようとしても教えられない状態のまま、半年も過ぎてしまった。サキとお父さんの間が険悪になるばかり。
 ムリ。親がいくら教えようとしても、この子は無理。自分の子は教えることができない、とこのことに関して私はようやくあきらめがついた。

 …そこへ届いた、冬季講習に通った塾の新年度説明会の案内。
 パンフレットを読み進むうちに、私はそれまでの認識がどんどん変わっていってしまった。
 「塾へ行く必要がない」のは、今の時代では本当に学力のある一握りの子だけなのだ、と。小学校で算数がキライになってしまい、そんな授業を平気でやってきた教師をうらんでもしかたない。私の認識が甘かったのだ。気づきながらも、なんとかなると思っていた。でも、もう取り返しがつかない。本当に取り返しがつかなくなる前に、打つべき手を打たないと、と初めて思ったのだ。

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