3.水質分析の意義


 私達は生活排水による水質汚濁について調査してきました。

 そのために必要な水質分析の項目を選び、それぞれ分担して
分析をしています。

 各分析で何を知ることができるかをまとめてみました。




○ 気温、水温、その他の記録
*気温
 気温は水質ではありませんが、水温に影響を与える意味で重要な
 調査項目です。
*水温
 水温の変化から異質な水(地下水など)の混入を推定できます。
 また、水温が高いほど溶けることができる気体の量が少なくなり、
 水中の酸素の量が減少します。
*その他の記録
 日時、時刻、天候の他に川の濁りや水の色、臭気、流れの速さや
 水量などをおおまかに記録します。




@ pH
pHは7で中性、値が小さければ酸性、大きければアルカリ性です。


通常は6.5〜8.5の範囲ですが、7から離れる値では何か原因が
考えられます。

*地質が原因
 水が通ってくる岩石によって酸性またはアルカリ性になります。

*植物の光合成
 植物性プランクトンの光合成によって水中の二酸化炭素(炭酸ガス)
 が減少するとpHが大きくなります。

*植物の遺がい
 植物の遺がいがバクテリアによって分解されると有機酸や二酸化炭素
 (炭酸ガス)ができて酸性になり、pHが小さくなります。

*火山
 火山の影響を受ける水は酸性です。

*排水
 工場排水など、人間活動による原因でpHが変化します。
 




A DO
DO : 溶存酸素‥‥水中に溶けている酸素の量です

*温度変化
 気体は水温によって水への溶解量が変わります。水温が高ければ多く
 溶け、低ければ少なくなります。

*酸素の発生
 植物プランクトンの光合成によって酸素が発生します。

*酸素の消費
 バクテリアが有機物を分解する時に酸素を消費します。有機物によって
 汚れた河川は酸素の量が減少します。




B COD 
COD(Chemical Oxygen Demand) : 化学的酸素消費量

強力な酸化剤(過マンガン酸カリウムなど)を用いて試料水を処理し、消
費される酸化剤の量を求め、それに対応する酸素の量に換算したもので
す。

水中の酸化される物質は主に有機物です。したがってCODは有機物量
の尺度として考えます。

有機物:タンパク質、炭水化物(糖類)、油脂など生物体を作っている物
    質。生活排水や多くの産業排水、下水に含まれます。




C 塩化物イオン
*人間活動による汚染
 人間は毎日約10〜20gの食塩(NaCl)を取り、同時に尿や汗となって
 それだけ排泄されます。
 また、化学工場では多量の食塩を原料として化学薬品を作り、種々の
 産業で使われ、産業排水として排出されます。

*雨や風
 海水から塩分が雨や風によって供給されます。海岸近くでは量が多く
 なります。
 河川の河口に近い地点で調査するときは、満潮時に海水が逆流するの
 で注意が必要。

*岩石からの供給
 岩石の風化によって供給される量はきわめて少ない。
 海水の塩分は岩石が風化して陸から供給されたと考えられていますが
 それには大変長い年数がかかっています。




D アンモニウムイオン体窒素

窒素が1ppm以上、リンが0.1ppm以上で富栄養化の状態になります。

窒素は水中のバクテリアによって有機体→アンモニウムイオン体→亜硝酸
イオン体→硝酸イオン体のように変化し、酸化されます。したがって全てを
測定する必要があります。

*タンパク質の流入
 アンモニウムイオンは主にタンパク質の分解によって生じます。

*し尿の流入
 尿中の尿素はアンモニウムイオンに変化しやすいのでし尿による汚染で
 アンモニウムイオンが生じます。

*酸素の不足
 汚濁した水では酸素が不足し、水中のアンモニウムイオンがバクテリア
 によって酸化されず、水中に留まります。




E 亜硝酸イオン体窒素


*酸素の不足
 汚濁した水では酸素が不足し、水中の亜硝酸イオンがバクテリアによっ
 て酸化されず、水中に留まります。酸素が不足すると硝酸イオンが還元
 されて亜硝酸イオンになります。

*汚染のめやす
 きれいで酸素が十分にある水では亜硝酸イオンは速やかに酸化される
 ので量はきわめて少なくなります。0.01mg/l以下です。
 汚染され、酸素が不足している水では0.1〜1mg/lになることがあります。




F 硝酸イオン体窒素

水中で窒素は酸化され、最終的には硝酸イオンになります。したがって
自然水ではある程度の硝酸イオンは含まれています。また、アンモニウム
イオンや亜硝酸イオンに比べて硝酸イオンが多ければ、水中に酸素が十
分にあることになります。


植物は窒素をアンモニウムイオンまたは硝酸イオンの形で取り込みます。
種々のかたちの窒素を合計して1ppm以上になると富栄養化の心配があ
ります。




G 全窒素

試料水を酸化・分解すると種々のかたちの窒素は全て硝酸イオンになり、
全部の窒素の合計を測定することができます。

全窒素が1ppm以上になると富栄養化の状態になります。




H リン酸イオン体窒素

動植物を構成しているリン(有機リン)は、生物の死滅後は水中で分解
され、リン酸イオンになります。

*富栄養化
 リン酸イオンは植物にとって重要な栄養ですが、天然水にはごくわずか
 しか含まれていません。リンが0.1ppm以上含まれていると富栄養化の
 原因になります。
(植物にとって必要な栄養のうちで窒素とリンだけが自然水に不足
  しており、窒素とリンを供給すると水環境が富栄養化します)




I 全リン

試料水を酸化・分解するとリンは全てリン酸イオンになり、リンの合計
を測定することができます。

*タンパク質の流入
 タンパク質には必ずリンが含まれます。

*し尿の流入
 し尿処理水にもリンが含まれます。

したがって生活排水が河川に流入するとリン濃度が大きくなります。




J アニオン界面活性剤

界面活性剤 : 洗剤の主成分です。

アニオン界面活性剤 : 陰イオン界面活性剤。生産されている界面活性剤
     の約60%を占めています。その中で一番多いのがLAS(直鎖型
   アルキルベンゼンスルホン酸塩)です。最近は非イオン界面活性剤
   の生産量が増加してきました。




K 大腸菌

普通の大腸菌は名前のとおり、大腸に生息している菌ですからそれ自体
は無害です。
しかし、大腸菌が存在すればし尿の流入が考えられます。病原菌の流入
する可能性があり、その意味で 1000個/100ml 以上では注意が必要です。




参考文献 : 半田高久 水質調査法 丸善 1960年


化学部では水質分析の意味を以上のように考え、水質調査の結果を
まとめています。
不備な点、お気づきの点がありましたらお知らせください。