第14章へあとがき 人は、生きる。決してその輝きを失わない。 15章─世界は君に輝き ─ 北風 さくり、さくりと、乾いた砂に足音を立てる。 見渡す限り何も無い砂漠が、リミテの世界を彩る。 あの夢から、どれだけ時が過ぎただろう。世界を覆っていた暗雲が、突如何も無かったかのように晴れ渡り、 気付けば世界中を覆っていた汚染大気による雲も消え失せていた。 人間たちを暴走させていた混乱も収まり、世界に日の光や四季、新鮮な風が取り戻された。 あれから、インストのキリアやリエッタのことが心配になって各地へ被害状況の確認に行った。 幸い2人とも無事だったが、その後辛い話をしなければならなかったので、リミテは心が搾り取られるような感覚を覚えた。 「ママー!! 待ってよぉ!!」 ああ、そうだ─ あれから6年も経つのだ。 「ほら! ちゃんとついてこないと置いてっちゃうぞ、ハルカ!!」 そう、リミテについてくる小さい子ども─ ハルカは今年で6歳になる。 「うーん・・・」 さて、ハルカについて来いと言ったは良いものの、どちらに進めば砂漠を抜け出せるのかわからない。 リューハ・キャンサーに言われてこの砂漠に来たが、こんなに大変な道のりだとは思わなかった。 冗談半分で連れてきたハルカだが、家に置いて来れば良かったと今になって感じる。 「まいったな─ 本当にどうしよう。」 ビュォァッ!!! 突如、一陣の北風がリミテを襲う。 「わぷっ!!」 ハルカを庇うようにして、リミテは必死に風に耐える。 ようやく風が通り過ぎて、リミテが視線を戻すと、小さな砂嵐となった風が砂漠を駆けて行き、遠く遠く地平線に向かっていった。 「・・・」 リミテはしばらく立ち止まっていた。 もうこぼさないと決めていたはずの滴が、リミテの目から頬を伝って落ちる。 リミテは必死にそれを拭い取る。 「そっか、あっちか─ 」 リミテはハルカの手を引き、また歩き始めた。 「そうだ、ハルカ─ 歌、歌ってあげる。 ちょっと切ない歌だけどね。」 ハルカはきょとんとする。 「切ないって、なあに?」 リミテもきょとんとする。 「あはは─ うんとね、ママにとっては、泣けてきちゃうような歌。」 「ふうん?」 リミテは歩いた。歌いながら、歩いた。 この世界に満ちる 君の想い今 この手で感じている 醒めないでと願う 夢と現の 狭間を彷徨いながら 今差し出す 一欠片の勇気 この世界は 鎮まり歩き出す この世界希望で満たしていく 君が眩しく映る 別れの言葉を交わしましょう 二度と逢うことは無いと あのとき君は言った 「想いは力になる」 「愛の瀬に鼓動を 揺らし動いている」 君のコトバを胸に 今走り出すこと 少し怖いけど 君がいてくれるなら この世界を 愛し続けたいよ 弱さを隠して戦うこと 瞳の奥の涙を 別れの言葉を探しましょう 想い途切れし翼よ この世界に生きる 君の想い今 この手で紡ぎましょう 二度と絶やさぬように 夢と現の狭間を 繋ぎ合わせて とても強かに 黒い雲の隙間 この世界に 今差し込む希望 夢追う詩に踊りましょう その言葉が終わるとて 別れの言葉を灌ぎましょう 幾重の言葉の願い 永久の安らぎと痛み 時をさかのぼれたら あの頃のままの 君とまた出逢えるかな 何を話せばいい 喜びの涙だけ 言葉を紡いで欲しい 今差し出す 一欠片の言の葉 この世界を 愛し続けたいよ 罪を負って去り往く君に 最後まで守られていた 一番の誇りに思います 君とめぐり逢えたこと 幾億の時が過ぎたとしても 忘れることは無いでしょう 別れの言葉を紡ぎましょう 永久の安らぎと痛み この世界に満ちる想いよ 人が生きた証は、紡がなければならないものだ。昔から、今も、ずっと先の日も。 リミテは、そう願って歩いた。 「おやすみなさい─ コミューン。」 ─ 贖罪の雪 さて、これからどうしよう。 風になってリミテを砂漠の果てに導いた夢から覚めて、辺りは真っ暗闇の世界。 とりあえず、自分が横になっているのか立っているのかさえわからない状況。 「うーん・・・」 コミューンが悩んでいると、コミューンの頭上から緑色の光の粒が降ってくる。 コミューンはそっと手を伸ばし、光の粒に触れる。 ひんやりと、冷たい。雪だ。 ということは、今、自分は立っているのか。 次の瞬間、雪が弾け飛び、コミューンの視界にリミテの姿が現れる。 ハルカと一緒にオアシスで戯れる姿。 ああ、そうか─ とりあえず一安心といったところか。 次の雪が、コミューンの1歩先に落ちてくる。 コミューンは思わず1歩進み、雪に触れる。 今度はティルとパシア─ そしてコミューンが一緒に釣りをしている風景。 3人とも満面の笑みだ。 今度は2歩先に雪が落ちてくる。 小さい頃に亡くした母フィリアが小さいコミューンを抱いている。 ああ、心が芯から和むようだ。 今度は3歩先、その次は4歩先─ 次々に雪が降ってくる。 それは次第に数が増え、とても手では取りきれない量になる。 弾け飛んだ風景には、大体リミテやティル、パシアとコミューンの姿。 中にはヒナやリューハのものもあった。 カルナが姉のリューカ、兄のリューハと戯れる姿もある。 そうだ、これは人の喜びを象った贖罪の雪のようだ。心が洗われてくるような感覚。 コミューンは、歩いた。歩き続けた。 そのうち歩きでは追いつかないほど辺りは雪景色で覆われる。 コミューンは歩調を速め、次第に駆け足になる。 気付けば辺り一面、光の雪が積もっていた。 緑に光る雪の上を、コミューンは走った。 次第に、今の人間たちの暮らしぶりが映し出される。 決して豊かとは言えないが、少しずつ、少しずつ暖かさを取り戻す。 行こう─ 人間たちが、これから先どんな道を歩んでいくのか。気にはなったが、雪景色の中、もうそんなことはどうでも良い。 「あとの世界のことは、君に任せるよ、リミテ─ 」 コミューンは走り続ける。 雪で埋もれてしまいそうになっても。 思い出や願いのビジョンに自分がかき消されそうになっても。 コミューンは降りしきる雪に向かって走った。走り続けた。 ─ どこまでも、どこまでも。 Human believe own life ...「世界は君に輝き」HUMAN of humans'' created by Wiz's 第14章へあとがき