『恐怖体験 タイ紀行』                             
                              text by さち
                                        
 東南アジアを女一人旅。今はそんなに珍しいことではない。少し前までは、「女の子が
一人旅、それも海外なんて!!」そんな風に周囲の人間に反対されていたかもしれない。
 私は恵まれていた。周りの空気も、放任主義の両親も、『反対』の一言も口にしなかっ
た。そうして私は、飛行機のチケットだけを取り、リュックサックに2〜3日分の着替え
だけを詰め込み、エジプト航空で、タイランドの首都バンコクに降り立った。     
  
 タイ旅行も一人旅も慣れたもんだった。だ
から何の恐怖感を抱くことも無く、現地の人
と食事を共にしたり、象の頭の上に座って川
を渡ったり・・・タイという国は私にとって
新しい出会い、未知なる世界へと連れて行っ
てくれる、期待を裏切らない世界だった。 
                    
 けれどもよくばりな私は、バンコク市内だ
けでは物足りなくなり、タイ国内を北上して
いくことにした。            
  
 
 初めは順調な旅だった。唯一、ローカル列車の中で売られていた肉の串刺しを食べて、 当たってしまい30分程、気を失ったことぐらいだろうか?                                                        貧乏旅行をしていた私は、ヤモリとの入浴は当たり前。行き当たりばったりの旅だった ので、洗濯ものはリュックに洗濯バサミでぶら下げ観光する。食事中にハエが飛んでくる ことなんて、気にもならないくらい現地に馴染んでいた。                                                         そんなお気楽な旅をしていた私に、ある事件が突然襲い掛かってきた。         その事件の直前まで、屋台のおばさんと仲良くなり、超激辛タイラーメンを食べ、旅行 を満喫していたのに・・・                                                                       腹ごしらえを終えた私は、夜行列車にのって、チェン・マイに向かうことにした。前も ってスケジュールを決めないのが、私流の旅。夜行列車に乗ろうと思ったのも、一種の思 いつきのようなものだった。