簡単なガイドブックを片手に駅までたどり
着いた私は、ゴツゴツの列車の椅子でも熟睡
できるように、ホームのベンチで、寝酒にビ
ールを飲むことにした。         
 そんな何気ない行動が、あんな大事件に発
展するとは思いもよらなかった・・・   
 ビールをガブ飲みしていた私は、気がつく
と、何と!駅員に取り囲まれていた。男性警
察官も数人駆けつけてきた。何がおこったか
全くわからなかった私は、ただ『キョトン』
とするだけ。              
  
 田舎町の小さな駅なので、バンコク市内と違って英語は通じない。もちろん、私がタイ 語を話せるはずが無い。けれども、緊迫した空気は襲い掛かってきた。いや・・・その状 況を突きつけられてしまったのだ。                          実は、私がタマタマ座ったベンチで、数分前に「スリ事件」が発生し、警察官が駆けつ けた、ちょうどその時私が座ってしまっていたのだ。                  それだけだったら、疑いはすぐ晴れたかもしれない。だって私はスリなんてしていなか ったし、いくら貧乏旅行をしているとはいっても、お土産代やら、旅行を楽しむに十分な だけのお金を持っていた。                            
  
 けれども不運なことに、駅員や警察官、野
次馬数十人には、私はスリを犯すだけの不信
人物に見えていたらしい。        
 帽子を目深にかぶった私は、未成年に見ら
れていた。未成年なのに、ビールをガブ飲み
している。(後で知ったのだが、成人女性で
あっても、宗教上、女性が人前で飲酒するこ
とは認められていないそうだ。)     
 それだけでも、不良少女に見えているのに
何故か、妊娠している!!とまで勘違いされ
てしまっているらしいのだ。