全国最低のランキング。静岡県の情報公開。
その県条例がいま改正作業に入ってます。
県内の市民派無所属議員と市民活動との共同によって、
静岡県情報公開懇話会に対して意見書を提出しました。
これらの意見が少しでも反映されればと思います。

(項目をクリックすれば、その内容にとびます)

検討項目
実施機関の範囲
その他










   1999年10月18 
 静岡県情報公開懇話会会長
          宮下 淳 様
      情報公開条例改正に関する申し入れ
 
 
             政策ネット・虹と緑・静岡県
               代表 松谷清 津田恵子
            カムイングセンチュリーSHIMADA
                           情報公開を求める三島市民の会
                         情報公開とプライバシーを考える静岡市民の会
                       (虹と緑の静岡県20人リストは
           政策ネット・虹と緑・静岡県に名称変更)
           連絡先 静岡市車町44 地球ハウス
                TEL/FAX 054-273-7733
 
 
 私たちは、静岡県の情報公開条例の改正について大きな関心と期待をもって見守っています。なぜなら、私たちは自治体に於ける情報公開条例によって、開示の請求、不服審査請求など、多くの実践を積み重ねてきたことの中で、情報公開制度の意義を肌で感じとってきているからです。
 今回の静岡県情報公開懇話会の開催に際し、私たちは、次のような観点が満たされることを求めると同時にそれぞれの「個別検討事項」についての意見を提示させていただきます。
 また、今回の条例改正に伴って、「個別検討事項」以外に特に検討を要することに対する意見を「その他の事項について」として付け加えさせていただきます。実り多い審議となるよう期待致します。
 
《必要な観点》
 
1.少なくとも情報公開法の趣旨を踏まえ、現行県条例がこの水準に及ばないところはそれを満たし、情報公開法   の至らぬところはこれを補うという観点が必要である。
 
2.情報公開については国よりも自治体が先行してきた。この経過を踏まえ、先進自治体を目指すべきである。少な くとも他都道府県の水準を上回る条例を目指す必要性がある。
 
3.懇話会が公開の議論により運営され、県民からの意見を広く受け付けるという姿勢は評価できるものであり、今  後の条例改正に向けても、さらには施行についてもこの姿勢を堅持することを望む。さらに、意見を求めるだけに とどまらず、これを反映するという努力を求めるものである。
 
 以上の観点から以下のとおり提言する。
 
 
《個別検討事項について》

  
1.条例の目的

(1)知る権利

【意見】
「知る権利の保障」を明記すべきである。
 
【理由】
@「知る権利」に関する憲法上の意義については議論のあることころである。「情報公開法要綱の考え方」によれば「『知る権利』は抽象的な権利であり、他の法律による制度化を待って具体的権利となる」のであるとすれば、個別法あるいは自治体に於いては条例によって明らかにされるという要請をもっている。したがって、現行条例では「目的」として「公文書の開示を求める権利を明らかにする」ことを掲げているが、この際この請求権が「知る権利」にもとづく憲法上の権利であることを明記し、請求権の法的性格を示すことが必要である。
 
A静岡県情報公開懇話会の検討資料(以下「検討資料」)が示すように、他県等の状況では「最近の改正では明記する傾向にある」としているとおりである。このことは、情報公開制度の成熟とともに、この制度のもつ本質が「知る権利の保障」にあるということに到達してきた結果であり、本県に於いてもその点を踏まえる必要がある。
 
B情報公開制度に於いて、非公開となる行政文書等を極力少なくし、開示される文書等がより多くなることが当然求められる。このため、本検討事項(2)に示される「説明責任」との関係に於いて、「知る権利」を条文規定してこそ、この「説明責任」を真に実行あらしめるものになる。
 
C「知る権利」は情報公開制度のシンボリックなキーワードであり、制度の趣旨が広く県民に伝わり易いという利点をもっている。この点に於いても「知る権利」を明文規定すべきである。
 
【意見】
県民による県政への監視及び参加を明記すべきである
 
【理由】  
@情報公開法要綱案に於いても「国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする」と明示している。

A「県政への監視及び参加」は「知る権利」が保障されることによってもたらされる具体的な目的である。
 
(2)説明する責任

【意見】
「説明責任」を明記すべきである。
 
【理由】
@「知る権利」は、憲法21条(表現の自由)、13条(幸福追求権)などによって発生し、本条例によって具体化されるものである。その際、「説明責任」が果たされることによって「知る権利」は保障され得るものである。したがって、「説明責任」の明記は不可欠である。「資料」(25頁〜30頁)によれば、本条例施行以来2006件の開示請求(本人情報の開示請求を除くと773件)に対し、非開示処分は915件であった。(同一請求に対し、複数の非開示事由があった場合を含む)このうち、異議申し立てがされた94件中、既に審査会により答申された74件にあっては「原処分妥当」とされたものは22.2%に過ぎず、76.4%が非開示処分の取り消しが答申されている。非開示処分がこれだけ多いことと、処分の取り消しを求める答申が多いことは何を物語るのであろうか。それは、県の秘密主義の表現でこそあれ、「説明責任」が果たされているということを決して意味するものではない。条文規定により、「説明責任」が果たされることが求められる。
 
A「資料」(9頁)にも示されるとおり、「情報公開法要綱案の考え方」の「第1目的」に於いてその冒頭、「民主主義の健全な発展のためには、国政を信託した主権者である国民に対し、政府がその諸活動の状況を具体的び明らかにし、説明する責務(説明責任)を全うする制度を整備することが必要である。このような制度を整備することによって、国政の遂行状況に対する国民の的確な認識と評価が可能となり、国政に関する国民の責任ある意思形成が促進されることが期待できる」としている。自治体に於いては尚、地方自治の本旨に即し、県が県民に対し説明責任を負うとこは普遍的原理である。したがって、条文規定により、実行性を担保すべきである。
 
 

2.実施機関の範囲
 
(1)県公安委員会

【意見】
当然、実施機関に加えるべきである。
 
【理由】
情報公開法と同様に、情報公開制度が行政機関のすべてを網羅するものである以上、例外を認めるべきではない。不服申請に関わる第三者機関は新たに設置するか、現行の審査会が担当するか、いずれかを選択すべきである。法的措置を待たなければならないとするなら自治体が新たな制度を作ることで、法律改正の機運を作るべきである。
 
神奈川県警の不祥事事件のようなケースについては、県民が情報公開条例を活用し、警察行政を監視することができるようになり、その発生を抑制することができる。同時に、開示がなされない場合第三者機関が存在することは、情報公開条例の目的がより達成しやすくなることであり、警察行政の透明化につながる。したがって、条例改正時、公安委員会を実施機関に加えると同時に開示審査機関を設置すべきである。
 
【意見】県公安委員会を実施機関に加える際の配慮事項6項目のうち4項目は不要である。
 
【理由】以下の4項目は合理的理由に欠け、むしろ濫用に途をひらき「情報隠し」につながる恐れがある。したがって以下4項目への特段の配慮は不要である。
 
ア)犯罪の予防・捜査等に関する情報について、不開示情報に該当するかどうかについての実施機関の第一次的判断を尊重する考え方にたった仕組み。
 
 「実施機関の第一次的判断を尊重する」とは言い方を変えれば「恣意的な判断が許される」ということに他ならない。不開示情報をできるだけ限定し、さらに限定される基準を明確にするという本制度の要請とは相容れないものである。したがってこのような規定は不要である。
 
言うまでもなく、公安委員会の保有する情報は、犯罪予防・捜査等に関するものばかりではなく、広く公費支出などについての情報も含まれる。したがって、公安委員会の保有する情報は広く公開原則の中に置かれて当然であり、かつ、犯罪の予防・捜査等に関する情報であって、公開されることによる支障については「目的を失うことが明らかであるもの」などと限定すべきである。
 
イ) 開示請求に対し文書の存在をあきらかにしないで、請求を拒否することを可能とする仕組み。
 
盗聴法により、個人の電話盗聴が可能となっている現在、一般論としてこのような規定を設けるべきではない。この規定を設けるとすれば、弁護師会を含めた慎重な検討が必要である。
 
ウ)開示請求に係る文書が他の実施機関の作成したものであるときその他相当の理由のあるときは、事案の移送を可能とする仕組み。
 
 特段、このような規定は必要ない。これは請求者側からすれば「たらい回し」ということになる。各実施機関は請求に対しそれぞれの責任に於いて対応すべきである。
  
エ)警察職員の氏名を原則不公開とすること。
 
 原則不公開とすべきではない。情報公開法の考え方に於いても、現下の司法判断に於いても「公務員の職務上の氏名はプライバシーに当たらない」とされており、情報公開制度に於いて「守られるべき利益」とはならない。警察職員についてもまた同様である。公安委員会の保有する情報は捜査・犯罪予防などの「特殊性」を帯びたものに限定されている訳ではないし、警察職員による人権侵害などの問題の防止という観点からも公開が原則として当然である。
 
 
(2)出資法人等の情報公開
 
【意見】努力義務だけでは無く、情報公開が及ぶ実効性のある制度にすべきである。
出資法人は独立法人であることから条例による実施機関とすることは困難であるが、地方自治法第221条(長の調査権)を根拠とし、この調査権の行使としての開示請求に応じる規定を設けるべきである。また、この請求に対する不開示決定は県が行った処分とみなし不服審査ができるようにするなど、その実効性を担保すべきである。(出資割合、出資額などをを検討し、一定の枠組を設ける)
 
【理由】
@出資法人の公的性格からして、また、公費が使われている以上、情報公開の対象となるのが原則である。財務諸表などの閲覧等の「情報提供」と、情報公開制度による「開示請求」とは対象範囲を異にし、当然、情報公開制度による開示請求のほうが対象範囲が広い。したがって、「情報提供」だけでは不充分である。
 
A「資料」(追加資料8/8)で、北海道以下多くの先進的な事例が示しているとおりである。
 
【意見】助成団体(補助金等交付団体)についても、出資法人同様に対象団体が開示請求に応じる規定を設けるべきである。
 
【理由】
@出資法人に対する「理由」と同様である。
Aたとえば、社会福祉法人の場合、静岡県社会福祉法人等の助成に関する条例に基づき、運営費補助金また建設費補助金が交付されている。県補助金交付規則に基づき、当該団体から収支報告等なされ、県はこうした文書を保有し、これらは開示請求の対象となる。しかしながら、領収書などの詳細にわたるものは「文書不存在」とならざるを得ない。公費である以上、その使途の詳細にわたり明らかにされることが当然であることから、こうした法人(学校法人等も)については出資法人同様の対応が必要である。(一定額以上の助成金、運営費の助成金が占める割合など一定の考慮を要する) 


3.請求者の範囲


【意見】「何人も」とすべきである
【理由】
@川崎市の条例に於ける考え方と同様である。とりわけ、「情報公開条例の基本理念である『知る権利』は、日本国憲法の保障する基本的
人権であり、その保障は『何人』にも及ぶものと考えること」の意義は大きい。
 
A請求者の範囲を限定し、他都道府県民からの請求者に対し請求理由などが要求されるとなると、請求者のプライバシーに触れるので請求し難いケースや、理由の如何によって受理されないケースなどが想定され好ましくないことは当然である。
 
 
4.対象となる文書

(1)電磁的記録

【意見】録音テープ、磁気テープ、フロッピーディスク等、紙媒体以外のものも広く対象とすべきである。
 
【理由】
@情報公開の対象を事案決定の終了したものに限定する場合に、文書以外の媒体に記録された情報は「事案決定の未終了」の場合があり、開示請求の対象外とされる。しかしながら、情報公開法の「考え方」に於いては、対象文書を「決済が終了したもの」に限定していない。したがって、それは文書という形態を伴っていないものも含まれて当然である。
 
A既に、県内でも三島市など、録音テープについての開示請求がされており、これは開示されている。尚、同市では開示対象媒体を紙以外にフィルム、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスクを定めているが、特に混乱は無い。県もこのレベルを踏まえるべきである。
 
(2)組織共用文書

【意見】「組織共用文書」という規定はすべきではない。
【理由】
@公務上作成または取得した文書であっても「組織的共用文書」か否かという判断が生じ、結果として開示対象が狭められることとなってしまう。
A「組織共用文書」の定義があいまいである。
 

5.非開示事項の範囲

【意見】
 原則公開を貫くことは当然であり、不開示となる範囲は必要最小限度に留め、不開示とする場合の基準はあくまでも具体的かつ明確にし、客観的判断により恣意的な解釈をできる余地を許さない規定とすべきである。
 また、「意思形成過程情報」を不開示とする規定を設けるべきではないことは当然である。本制度が行政への監視や参加が目的である以上、「意思形成過程情報」が開示対象にならないとすれば、これは自己矛盾である。
 さらには開示度を現行条例よりも向上させるために「非開示事項の範囲」を検討する上で、現行条例下で提起された訴訟例(静岡空港建設に係る情報への開示請求など)の争点を分析することが有効である。調査・研究を要望する。
 以下、個別の検討項目について意見と理由を述べる。
 
(1)個人情報
 
 「個人識別型」ではなく「プライバシー保全型」とすべきである。
なぜならば、個人識別型では個人が特定され得るとの理由で、いたずらに開示対象が狭まられる。個人情報が保護されねばならないのは当然であるが、この場合の守られるべき利益とは「個人が特定され得ること」ではなく「プライバシーが侵害され得ること」である。したがって「プライバシー保全型」とすべきである。また、情報公開法と同様、公務員の氏名は例外規定し開示対象とすべきである。
 
(2)事業活動情報
 
 事業者情報は市民生活に大きな影響をもたらす。したがって任意提供情報であっても、不開示により守られる利益が「著しく損なわれることが明らかであること」と限定し、開示対象とすべきである。また「不公開特約情報」の規定はおくべきではなく、事業者にとって守られるべき利益が「明らかに損なわれ場合」にのみ限定し、開示対象を広くすることが必要である。なぜなら、この規定を置くことにより開示・不開示の判断基準が「利益が損なわれるかどうか」の客観的判断ではなく、「約束があったかどうか」という基準が用いられることととなり、不合理かつ対象範囲が狭められる。

(3)社会的危害防止情報

 この項目は、具体的に情報の正確を明らかにすべきである。1996年、静岡空港の空域に関する情報公開請求があったが、航空自衛隊静浜基地の情報が社会的危害防止情報であるとして、非開示理由のひとつにあげられた。開示審査会では退けられたが、この項目が安易に活用されると、行政の秘密体質を支えるものとなる。
 
(4)合議制機関等情報

 最近の条例改正においては、この条例は削除する傾向にあり、削除すべきである。
 
(5)国等行政協力関係情報

 最近の条例改正においては、この条例は削除する傾向にあり、削除すべきである。
 
(6)行政意思形成過程情報
 
 県知事も意思形成過程情報の公開を公言している以上、削除すべきである。
 
(7)行政運営・執行情報

 「実施目的を失うことが明らかなもの」に限定すべきである。なぜなら、開示により「支障のおそれがある場合」などは拡大解釈による濫用を招くとこは必至である。行政運営・執行情報は県民等による行政への参加・監視に欠くことができない要素であるため、「明らかにその目的が失われる場合」に客観化し、限定すべきである。
 
(8)存否応諾拒否

 この規定を置くとしても、個人の犯罪歴に関することなど特定の事項に限定すべきである。また、この決定も行政処分とすべきである。なぜならば、情報公開法では行政分野全般にこれを求めているが、これは濫用によって「情報隠し」を招きやすいからである。かつ、この条項が運用される場合、インカメラでの審査ができる途が保障されねばならないことは当然である。
 

6.請求及び決定手続き

【意見】全体として、誰もが容易に開示請求ができる方法が保障されるべきであり、申請から処分までの期間は遅くとも14日以内など、先進県なみにすべきである。以下、具体的検討項目について、意見及び理由を述べる。
 
 請求手続きについては、郵送やファクシミリ、電子メールなどによる方法も認め、請求者の利便性を最大限考慮する必要があることは言うまでもない。また、障害をもつ県民に配慮し、電話での要請も適宜「申請」として対応するなどの運用も広く必要である。
 
 また、公文書不存在の場合の対応については、情報公開法と同様に不存在による請求拒否を行政処分とし、不服審査の対象とすべきであることは当然である。
 大量請求の場合、やむを得ず決定通知までの期間の特例を定めるとしても、いたずらに遅延されることを防ぐため、具体的な期限をもって対応する規定をすべきである。たとえば、秋田県などと同様、30日前後とするのが相当である。
 
 「第3者の保護」については、当該第3者の意志を開示・不開示の決定根拠にすると、本来開示できるものも開示できなくなることがあり得、結果として情報公開制度の趣旨が損なわれる。第3者に対し、守られるべき利益が損なわれることは避けるべきだが、この場合の「利益」とはただ単に「開示してほしくない」という意志ではなく「当該第3者の法律上の地位が害されるとき」に限定し、客観化をすべきである。
 


7.開示手続き

【意見】電磁的記録については視聴、閲覧、写しの交付など幅広い方法が得られることとすべきである。また、視聴覚障害者に対する配慮も必要である。
【理由】
@情報公開法同様、紙媒体以外の媒体を開示対象とするのであれば、それに相応した方法が必要なことは当然である。
A東京都や岩手県他いくつかの県が既に実施しているか、または検討をしている。
 

8.手数料

【意見】閲覧または視聴などそれに類することは無料とし、有料は写しの交付のみとするのが相当である。料金は紙媒体で一枚10円程度とすべきである。
【理由】
 「現在、手数料の徴収に踏み切る特段の理由はなく、また、本制度を使いやすい制度として尚一層推進していくうえでも、閲覧手数料は徴収すべきでないと判断した」(神奈川県答申)「公文書が県民との共有財産であるという理念、あるいは行政機関に課せられた説明する責務を果たすという観点からは請求者に負担させることに合理性がないのではないかという意見が多数を占めた」(栃木県意見書)と同様である。
 

9.公文書開示審査会の機能

【意見】情報公開制度をはじめとして、地方自治法、行政手続き法及び条例、「行政法」各法に精通した審議委員による構成による客観的な審査が求められることは当然である。また、審査は「インカメラ方式」とすることが求められる。
【理由】
 情報公開法要綱案の「考え方」では「開示するかどうかの判断を当事者である行政機関の自己評価のみに任せるのではなく、諮問機関としての審査会の意見、すなわち第三者的立場からの評価を踏まえた判断を加味することによって、より客観的で合理的な解決が期待できる」とし、客観性が求められることが強調され、この点が踏まえられるべきことは言うまでもない。県の場合、審査会は地方自治法第138条の4に規定される知事の付属機関となるが、その機能は第3者性が確保されるべきことは当然である。尚、適正な判断のためには「インカメラ方式」によることが不可欠である。
 

10.情報提供施策と情報公開の総合的推進

【意見】情報提供施策の推進についての規定を条文として盛り込み、能動的な情報提供に務めるべきである。また、現下の「自由閲覧制度」以外に、開示請求により既に開示された文書等については、閲覧室等に備え付け、県民が広く閲覧できるようにするべきである。
【理由】
 両者の総合的な推進のために必要なことである。
 

11.公文書の管理

【意見】請求に対する迅速な対応がされるよう適切な管理が求められることは当然である。そのため、より合理的なファイリングシステム、また、検索システムの樹立が必要である。東京都の提言や栃木県の意見書と同様、「適正管理」の責務規定を条文として置くことが必要である。
 
 
《その他の事項について》
 

1.運営協議会の設置

【意見】
 情報公開制度が円滑に行われているか、制度としてさらに完成させていくためにはどのような改善が必要かなど、運営に関する審議会を公募委員や学識経験者などで組織された「建議機関」を設けるべきである。
【理由】
 情報公開制度は利用される程に必要な改善点などが明らかとなり、そしてさらに、改善していくことによりさらに利用が高まっていくという循環が想定される。このように成長・発展を遂げていく制度として捉え、適宜、「制度への評価」と「政策への反映」が必要であり、その確保のため運営協議会を条例により設置されることが求められる。
 


2.オンブズパーソン制度の導入
 
【意見】 
 第3者によるオンブズパーソン制度(苦情対応制度)を設け、利用者保護に徹っするべきである。
尚、自治体のオンブズパーソン制度はそれ自体が既に先進的な自治体では導入されている。類型としては「@行政全般にわたる制度」(神奈川県藤沢市など)「A福祉オンブズパーソンなど行政の一分野に限定した制度」(東京都中野区など)B情報公開制度に付随した制度(神奈川県逗子市)の3つが見られる。本県の場合、総合オンブズパーソン制度を視野に入れながら、情報公開制度に付随した制度として発足させるべきである。
 
【理由】
 情報公開制度はともすると「利用者本位」ではなく、「実施機関本位」という形に陥り易い。そうしたことの無いよう、また利用者の立場を保護し、行政と県民とのパートナーシップ(対等関係)を確保するうえで不可欠である。さらに、情報公開制度が住民自治をさらに高めていくことに大きく貢献することを念頭に置き、総合オンブズパーソン制度の導入の前段階として情報公開オンブズパーソン制度を発足させることが求められる。
 

3.県議会の情報公開

【意見】
 議決機関たる県議会も実施機関に含めるべきである。
【理由】
 議決機関たる県議会は同時に県政に対するチェック機関である。しかし、チェック機関であることをもって情報公開制度になじまないという論は既に過去のものであり、議会も実施機関となることは自治体に於いて趨勢である。
 

4.公聴会の開催

【意見】
 今回の条例改正について、さらに広く県民の意見を求めるため、一定の段階で公聴会を開催することを求める。とりわけ、不開示決定等により不服審査請求をした請求者者や行政訴訟を提起した請求者の意見は、制度改善に向けて有効であると考える。
 
【理由】
 不服審査請求者及び訴訟提起者は、開示請求当事者としての角度から、制度改善に向けた有効な観点を持っていると考えられ、これを活かしていくことが重要である。
 

5.個人情報保護制度

【意見】
 情報公開制度と平衡し、個人情報保護制度の導入をすべきである。
また、同制度は個人情報保護を積極的に捉え、自己情報の本人開示はもちろん「自己情報についてのコントロール権」をも含め保障するものとすべきである。
 
【理由】
@本来は情報公開制度に先んじて個人情報保護制度が完備され、「個人情報についての徹底した保護」と「情報の徹底した公開」は車輪の両輪としてそれぞれが展開されるべきものである。
 
A現状、市町村では既に多くの団体によって個人情報保護についての条例化に取り組まれてきたが、近年都道府県においても条例制定に向けて検討が進められている。1999年4月1日現在北海道、青森県、宮城県、福島県、茨城県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、新潟県、山梨県、長野県、岐阜県、愛知県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、鳥取県、広島県、香川県、福岡県、沖縄県の23団体が条例を制定している。(自治省調査による)本県は未だ制定されていないので、早急に検討すべきである。
 
B「資料」(25頁)によれば、1989年の情報公開制度開始以来1998年度までの実績で、開示請求件数2006件のうち、実に61%にあたる1233件が「自己情報の本人開示請求」であった。県民の要求が極めて高いことは明らかなので、情報公開制度からは独立した個人情報保護制度の中で保障していくべきである。
 
Cこの制度は、自己情報についてのコントロール権までをも含め整備が進んでいるのが現状であり、本県に於いてもその水準を越えるべきである。たとえば、「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」第23条により通信の当事者に対する通知はなされるが、その通知に至る以前の傍受については当事者に知らされないという問題がある。これは個人の「自己情報についてのコントロール権」の保障に係わる問題である。個別法によるこのような不条理に対し、それを補う意味に於いても個人情報保護制度の必要性は論を待たない