事例 | 対応など |
就学時健康診断は?
(A君のケース)
A君は、地域の普通学級へ通うことを希望してます。でも、お母さん、お父さんは就学を前に不安がつきません。就学時健康診断によって「特殊学級」「養護学校」を強制されるのではないかと心配です。就学時健康診断を受けなければいけないのか?受けようかどうか迷ってしまうということがあります。 |
受ける義務はありません。
●就学時健康診断は学校保健法第4条によって、市町村の教育委員会は就学時健康診断を行わなければならないことが規定されています。
●ですが、子どもがこれを「受けなければならない」とはどこにも書いてありません。ですから、義務ではないのです。全国の中には「受診義務はありません」と広報している市もあります。
●そこで、受けるかどうか迷うところです。以前は「受けない」ことも多少ありましたが、最近私の知る範囲ではとりあえず受ける人が多いようです。
●それは、最終的には保護者の意志によって就学先が決定されているので、その意味では受けることによる直接的な不利益は考えにくいからです。(都道府県による違いはありますが)
●しかし、それにしても「就学時健康診断」自体、廃止されるべきだと思います。 |
就学指導によって「養護学校へ」と言われています。困った。
(Bさんのケース)
Bさんは、教育委員会から就学指導を受けてます。そして面接の結果、養護学校を勧められています。でも、近所の子どもたちと一緒に地域の普通学級に通うことを希望するので、この「就学指導」にどのように対応すればよいのか、悩みはつきません。 |
就学指導委員会の判定が即入学先を決定づけるものではありません。
●就学指導は強制ではありません。 をご参照ください。ところが問題は教育委員会があたかも「強制」であるかのような言動をしたり、または、「おたくの子はこんなこともできない」などと言って保護者や子どもに圧力をかけたりして養護学校に誘導したりするケースもあります。そこで、この就学指導を受けるかどうか、たとえば面接の通知に対しこれに応じるかどうか迷うこととなります。
●一概には言えませんが、私は「地域の普通に行きますからよろしくお願いします」など保護者の意志を一度は必ず明確に教育委員会に伝えることは必要だと思います。それ以降、度々呼び出しがあるようでしたらその目的、参加者などを確認し、保護者の意志に反するようならうまく拒否をするというのがベターだと思います。子どもにとって、面接などはかなりのプレッシャーになる筈ですし、できるだけ避けたほうがよいと思うのです。 |
就学指導に従わなければ入学通知が来ないのでは?
(Cさんのケース)
Cさんは教育委員会から「就学指導」に従わなければ入学通知は出せないと言われ、不安のどん底に陥れられました。 |
入学通知は来ます。もし来なかったら教育委員会は学校教育法違反です。
●学校教育法施行令第5条は「入学期日等の通知、学校の指定」が定められています。この規定は入学する学校を2月に入るまでに保護者に通知しなければならないというものです。(普通学級・特殊学級・養護学校、みなそうなってます)
●ですから、もしこの通知を出さないとするなら教育委員会は学校教育法に違反します。「出さないよ」と脅す市、そして実際4月になっても出さないこともあるようですが、きわめて悪質です。
●このくらい悪質だと、さすがに県教育委員会は黙ってません。県教委は一応、市町教委を指導監督する立場ですから、然るべき措置を求めると対応する場合もあります。 |
どのようにして就学指導の対象となる子はリストアップされるのか?
(Dさんのケース)
Dさんは地域の普通学級へ希望しています。そこで就学時健康診断を受診すると「知能検査」などの結果により就学指導を受けることになると判断し、受診しませんでした。でも、その後面接への通知がきました。これは何故なのか教育委員会に不信感を強めてます。 |
就学時健康診断以前からリスト化されている場合もあります。
●その市や町によってやり方はマチマチのようです。就学時健康診断が「選別の場」と言われてきましたが、実はそれ以前から既に「リスト化」している教育委員会もあります。その方法としては、
@幼稚園・保育所で知能検査をやり、対象児をピックアップする。(知能検査をやること・やったことなど、保護者に知らされません。問題です!)
A教育委員会の指導主事が幼稚園・保育所を廻り、園の様子などを聞き取り調査をする。
B3歳児検診などのカルテを教育委員会が見て判断する。
(これはかなり悪質ですし、行政文書の目的外使用です)
などです。
●幼稚園や保育所の担任などと仲良くして(?)、これらの情報を聞き出すのも必要でしょう。それにしても、このような「リスト化」それ自体が子どもの人権を踏みにじっていると思います。
●その市や町によって「個人情報保護条例」というものがあります。個人情報は「本人から聴取する」「社会的差別につながる情報は収集しない」などの規定を含んでいる場合がありますが、これらは武器になるかも知れません。
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保護者の付き添い通学を条件づけられましたが?
(Eさんのケース)
就学指導を受ける過程で教育委員会から「普通学級でもよいが保護者の付き添いが条件」と言われました。どうしたらよいですか? |
教員配置など学校側の対応で解決されるべきです。
●もし介助が必要とされる状況があるとするなら、原則的に言って教員配置を厚くするなど学校側で対応されるべきです。法律上、そのことは明らかです。学校教育法第5条は次のように定めています。「学校の設置者は、その設置する学校を管理し、法令に特別の定めのある場合を除いては、その学校の経費を負担する」。
●ここでいう「学校の設置者」は市・町になります。「学校を管理する」とは人的管理・物的管理・運営管理ということになります。ですから、必要な教員の確保については、市や町が責任を負っているのです。普通の教職員は都道府県に任命権・人事権がありますが、それ以外の非常勤講師などは市・町に任命権・人事権があります。ですから、保護者に付き添いなどを求め、責任転嫁するのは許されません。
●もっと詳しく言うと、教職員は法律上の定員数を上回っているのが実態です。(静岡県ではそういう状況ですが、少子化による全国的な傾向だと思います)
法律上の定数を上回る人員については「適正配置計画」なるもので、一定の条件のもとに加配されているのです。
●この条件とは、たとえば「指導上困難を要する学校については○人を加配する」などです。ですから、たとえば介助が必要な状況について、教員数を多く配置すればいいのです。これは、学校や教育委員会の意志と努力でできます。
●もし、保護者の介助を求められた場合、拒否をすればいいのですが、学校や教育委員会の法律上の責任を確認する必要があります。そのうえで適宜判断をすればいいと思います。そうでないと、いつまでも「約束でしょ」と介助を強要されるケースも少なくないのです。 |
「保護者が介助する」旨の文書の提出を求められましたが?
(Fさんのケース)
「保護者が介助をする」ということを文書で提出すれば希望通りの地域の普通学級への就学通知を出します。と言われ、対応に困っているケースです。
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文書の提出は必要ありません。このようなことを求めるほうが間違ってます。
●いわゆる「一筆書け」というやつで、よくあるケースです。もしそのようなことを求められたら、「その請求を私宛に文書で出してほしい」と求めるとよいと思います。(これを「逆一筆」と言ってますが)これは「こういうことを教育委員会はやっている」という証拠になります。
●その証拠を、たとえば都道府県の教育委員会にもっていき、「これ、どう思いますか?」と問うと「好ましいことではありません」となります。(静岡県の場合)
●最近、「証拠」として残らない形で求められる巧妙(?)なやり方も出てきました。呼び出されて、宛名も先出し人も書いていないメモのような文書を直接手渡されるというものです。注意が必要です。
●なぜ、こうした求めに応じる必要がないかは「Eさんのケース」などからお分かりいただけると思います。 |
学校の階段や段差の改善を求めても「予算がない」と言われる。
(Iさんのケース)
車いすにのっているY子ちゃん。「普通学級には設備も人手もない」と養護学校をすすめられました。設備整備したり、人員配置したりするのは「予算がない」ということで話に応じられないことがよくあります。
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予算を獲得するのが教育委員会の努めです。それは理由になりません。
●予算の編成権は、実は教育委員会には無くて、長(市長とか町長です)にあります。ですから、予算編成権の無い教育委員会が「予算がありません」と言うのは長に対する越権行為です。
●たとえば、障害をもつ子が利用できるトイレやスロープの設置について、教育委員会が長に予算要求をした結果、予算査定で削られたということであれば「要求しましたが実現しませんでした」と説明するならまだしも。予算要求もしないで「予算がありません」では通らない話です。教育行政は教育環境を整えるのが職責ですから、これでは職務放棄と言えるでしょう。
●そこで、「学校」という公共施設は、誰でも使えるものでなければなりません。ですから、バリアフリー化をしなければならない施設なのです。建築物のバリアフリー化を進めるため、「ハートビル法」がありますが、ここでは学校は除外されていることに対し、都道府県レベルで定めている「福祉のまちづくり条例」(名前はまちまちです)では学校を「特定公共施設」としている場合が多いと思われます。(静岡県もそうです)
●ですから学校は「バリアーフリーにしなければならない施設」なのです。でも、残念なことにこのことを教育委員会や学校関係者が知らないこともあります。教えてあげる必要があります。
●たとえば「エレベーター」を付けることについて、文部省の補助制度もあります。実際に「障害をもつ子」の入学後、必要性が認められ設置した学校もあります。補助金があるとは言え、その市の財源も使いますからエレベーターは見送り、その子が属する学級はいつも一階にするなどの対応もあります。
●当然の話ですが、教育委員会や学校がその子の入学を「権利」(いい言葉です)として認め、その保障のためお互いの職責を果たし合う、知恵を出し合うということが必要です。
●この問題についての一番大きな課題は、教育委員会や学校関係者の「心のバリアフリー」かもしれません。「人員配置」についてはFさんのケースをご参照ください。 |