その後・・・ |
(注)名前通り、ロストワンの後日談です。 ネタバレを含みますので ロストワンをクリアしてから見る事をおすすめします。 もう・・目覚める事は無いと、そう思っていた。 だが・・・。 私は砂漠の前に立っていた。 後ろを振り向けば人の住む家がある。 だが、目の前に広がるのはただの砂だけだ。 ・・かつて、私が死を覚悟して歩いた砂漠だ。 『EVE』と、そしてあいつの腕時計を手にして・・。 「先輩の遺体は、見つからなかったそうです・・」 隣にいる女性・・、桐野杏子は、そう言った。 「そうか・・。 この広大な砂漠から、人の遺体を発見する確率なんて、無いに等しいからな」 「そう・・ですね・・」 「ところで、江国とかいう恋人さんは、来ていないのか?」 「そ・・そんなんじゃないですよっ!」 「むきになって否定するところが、怪しいな・・」 「違いますって!」 桐野杏子・・。 見城の後輩で、見城の最後を、私に教えてくれた人物だ。 「バカだな・・」 「え?」 「あいつは、本当にバカな奴だと思ったんだよ」 「・・見城先輩は、私を庇ってくれました。 でも私・・、先輩を救えなかった・・」 「・・気にする事は無いさ。 誰も彼も救える程、人は強くない」 「そう・・ですよね」 「ああ。 ・・それに、あいつは満足だったさ」 「先輩は、こう言っていました。 『ふいに、1人の女に会いたくなって、 探して、会えたら・・それだけですごく安心する』・・と」 「・・・」 「1人の女って、モニカさんの事ですよね」 「さあな・・。 それは見城にしか分からないさ」 「そんな事ないでしょう?」 「・・・」 「あいつはバカだ。 私なんかに会うだけで安心するなんて・・。 ・・だが私も、安心した・・。 私も、人の事は言えないな」 「くす・・。そうですね」 今・・私はどんな顔をしているだろう? 嬉しくて、笑っているだろうか? 悲しくて、泣いているだろうか? 淋しいだろうか? つらいだろうか? 私は大切な人を2度失った。 1人は兄・・。 もう1人は・・。 兄のときは、悲しくて仕方が無かった。 だが今は・・。 「なあ・・」 「はい?」 「見城の事、恨んでいるか・・?」 訊いてみた。 恨んでいるに決まっていた。 見城は、彼女に罪を着せ、 自分は国外逃亡をしたような男だ。 「・・恨んでなんか、いませんよ」 「・・なぜ?」 「先輩は優しい人でした。 私に罪を着せたのも、仕方が無かったからだと思います」 「知ってます? モーニングステーキに悪い人はいないんですよ」 「・・動物好きの間違いだろう」 「あ、知ってましたか」 彼女は笑っていた。 自分に罪を着せた男を恨んでいないそうだ。 「あいつはな、自分が傷つくのが怖かっただけだ。 だから誰にでも優しく、自分が責められないようにしていただけだ。 あいつの優しさは、自己防衛にすぎない・・」 「違いますよ」 「自分が傷つくのが怖くない人なんて、どこにもいませんよ。 それに、本当に優しい人ってのは、 心の痛みを知っている人の事だと思います」 「・・・」 「それは、モニカさんが1番良く分かっているでしょう?」 「・・さあな」 優しい人でした・・か。 「先輩のお墓・・、作りましょうか」 「いや、その必要は無い」 「どうして・・ですか?」 「見城の墓は、目の前にあるからさ」 「え?」 「見城の墓は・・この砂漠全てさ。 小さな男のくせに、 こんな大きな墓なんて・・、贅沢過ぎだがな」 「そう・・ですね」 「ほう、小さな男だったと、認めるのか?」 「ち・・違います! 私が肯定したのは先輩のお墓の事であって、 そっちじゃありませんよぉ・・」 彼女は笑っていた。 そして私も多分、笑っているだろう。 悲しくないと言ったら嘘になる。 だが、私は笑っているよ。 おまえは満足だったんだから・・。 そうだろう?・・見城。 ・・見城。 私は生きていくよ。 おまえの事を忘れずに。 おまえの分まで生きてみせるよ・・。 まあ、一度捨てた命だがな・・。 でも、人はいつか死ぬ。 おまえの元へ、いつか行く事になるだろうな。 ・・それまで、これは貸しといてくれ。 ・・・この、腕時計を・・・。 |
四方山話(言い訳) |
第3弾〜♪ 今まで小説なんか書いた事無かったこの私が、 もう3作も書いてしまいました。 今回の話ですが、 これは以前チャットで話題になった 『WIN版でモニカは生きているか』 から来ています。 SS版では死んでしまうモニカですが、 WIN版では生きていました。 その後、モニカはどうしただろう?と思ったのが、 この話を書くきっかけでした。 ・・どうも私が書くと見城かアルカの話になってしまうな・・。 今回は見城は出ていないけど。 |