?スポット 1998・10・29

駿府会館のマイルス・デイビス

冒頭からいやらしいことを想像した向きもいらっしゃるかもしれないが、今日もジャズの話だ。

清水銀座に、この世紀末において甚だ時代錯誤の、愛すべきジャズ喫茶&BARを発見した。店の名は「?スポット」今のところ正式名はふせて発表しておくが、?には今世紀のジャズの歴史と共にN.Yに存在したライブハウスの名にちなんで数字を一文字入れていただきたい。

通りから階段を上って2Fへ。今時の喫茶店にはふさわしくない大音量でジャズが鳴り響く。音楽に耳を傾けても良しだが、この店ではギネスでも飲みながらじっくりマスターとの会話を楽しみたい。決して説教と思ってはいけない。楽しむのだ。

「63年にモンクが静岡に来たろ。あれな、俺が呼んだんだよ。小僧。」

「…すごいですね。」もちろん、私は生まれてさえいない。

「73年の駿府会館のマイルス・デイビス知ってるか。あれも、俺だ。」

「……すごいですね。」

「71年のコルトレーン。日本公演の時のサインが鑑定団で10万だって!だったらおれのサインはいったいいくらだこのやろ。」そういってサインを見せる。そこには本人ののみならず、当日のメンバー、又奥さんのサインまで入っていた。

「………す、す、すごいですね……。」

もちろんコレクションはこんなものではない。在りし日のモンク、ベイシーと肩を組んでにこやかに写っている写真、またそうしている間に床に転がった色紙には、なんとDuke Ellingtonと書かれていた。およおよ。

「みいーんな俺が呼んだんだよ。どうだまいったか、小僧。」

そう、彼の別の姿は腕利きの呼び屋である。それにしても客である私にむかって、「まいったか、小僧。」はないだろう。それでも私が全く頭にこないのは、ジャズに対する筋金入りの情熱がびんびん伝わってくるからだ。愛すべきジャズ野郎たち。

「…す、すごいですねえ、すごいねえ。」

今日何度口にした台詞だろう。どなられて更にすがすがしい一日であった。

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オリジナル・カクテル 1998・11・3

バーテンダーの楽しみの一つは、オリジナル・カクテルの製作である。今日は本業にもどり、カクテルのご紹介をしよう。

不意に、かわいい女の子がやって来て、「私にあったカクテルを下さい。」と言われるのが実はバーテンの至上の喜びなのだ。そんな時は、すべてを忘れて、ふだん使わない頭を思い切り働かせて、女の子を喜ばせてあげようと思うのだ。その子の雰囲気、今日の洋服、表情、ETC…を考慮して作り、タイトルを付け、最後にそれにふさわしい物語を加えてみる。「おいしい!」といわれようものならまさしく天にも昇る気持ちだ。

しかし、そんなオリジナル・カクテル自信が、皮肉にも一人の女の人生を語りはじめることがある。以下は事実に基づいた、南国に沈んだ悲しい女の物語だ。

カクテル名STAY WITH ME

それは、バリ島のある夏の物語。女が島の男と恋に落ちた。女はバカンス、明日は帰国しなければならない。最後の夜、ビーチバーで、水平線にドーンと落ちるロマンチックな夕日を見ながら二人は語り合う。女が男に一言「(もう少し)いっしょにいて。」という名のカクテル。

レシピ:RUM(30ML) レモン(15ML) パイナップルジュース(20ML) ブルーキュラソー(10ML) トニックウオーター(適量) シェークしてタンブラーへ。

カクテル名「DON’T CRY」

「いっしょにいて。」と女に言われた男は露骨にいやな顔。「国へ帰れよ。」そしてふられた女が、「泣いちゃだめ!」と涙に濡れながら自分に言い聞かせるためのカクテル。

レシピ:ジン(30ML) グレープフルーツ(20ML) グレナデンシロップ(10ML) SODA(適量) シェークしてソーダを加える。

カクテル名「LULLABY HARUKA」

そして失意のもと帰国した女が、突然、「ジャズシンガーになる!」と発言。周囲を驚かせたが、最初に憶えた曲が「LULLABY OF BIRDLAND(バードランドの子守歌)」だったため、その曲にちなんで作ったカクテル。女の失意が表現されている。

レシピ:ピニャコラーダリキュール(45ml) パイナップルジュース(30ml) ライムジュース(15ml) SODA(適量)

カクテル名「MAIN STAR」

ジャズシンガーを目指し、ファースト・ライブに挑んだが、音程ははずすは、出だしは間違えるはでバックメンバーはおっかなびっくり。それでもライブ終了後、「私は世界のメイン・スターになるのよ」と勘違い発言をしたのでしかたなしに作ったカクテル。

レシピ:カシスリキュール(20ml) レモンジュース(15ml) オレンジジュース(25ml) オレンジビターズ(2dash) シェークしてカクテルグラスへ。マスキラーノチェリーをカクテルピンにさして添える。

やれやれの一言に尽きる。がんばれHARUKA

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ヒクソン・グレーシー 1998・11・8

AM3:00をまわった夜の両替町は、人通りこそ少ないが一癖二癖ある人々が多く面白い。仕事を終えたバーテン、ホステス達はもちろん、新聞記者、明日はお休みの看護婦、役者・・・。私は深夜遅い居酒屋にたむろしているこんな人達と語らうのが好きだ。しかし、時として口論となることがある。

新聞記者に、「サラリーマン根性で記事書くんじゃねえよ。このやろー。」

バーテンに、「カクテル作ってるだけが客商売じゃねえんだよ。このやろー。」

役者に、「監督にいわれた通りに演技するだけで、本当に面白いのか、このやろー。」

みんな、悩んでいるのだ。それぞれの社会の中で、己が目指すことと、社会が求めるものの相違に悩み、心が葛藤する。そんなナイスなやつらを、叱りとばすとみせて思い切り励ましてやる。「がんばれよ。」本当はそう言いたいのだ。そんなころ、酒の力もかりて私も既にいい調子だ。あかの他人を説き伏せ、気も大きくなった私は、世界最強になった気分で家路を急ぐ。

世界最強?

誰か、ヒクソン・グレーシーに勝つやつはいないのか?高田も負けた。400戦全勝などという事実を許して、格闘家達にはプライドというものはないのか。私は酔って最高の気分になった時、彼の存在がいやというほど気にかかる。誰かが彼を倒さない限り、私は世界最強にはなれないのだ。船木、次はお前だ。「がんばれよ。」

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オルジナル・カクテル(2) 1998・11・10

バーテンの私も、時にはショット・バーに行ってみたい。

私にだって1件や2件の行き付けのショット・バーがあるのだ。中でもBAR 〇ンリー・〇ンドルフスのマスターは天才だ。「いつ、何時、誰の挑戦も受ける。」と言い切るアスターは、私が想いつきで勝手にカクテルの名前を言うと、「かしこまりました。」の一言と共に素晴らしいカクテルをあみ出してしまう。例えばこんな具合だ。

カクテル名:「アンディー・ズブ」

言わずとしれたK1トップスター、「アンディー・フグ」にちなんだカクテル。アンズのリキュールとズブロッカが入っている。よく思い付いたものだ。味の方も絶品だ。牧草のかおりとあんずの味が見事にマッチングしている。

レシピ(予想):ズブロッカ(30ml) アプリコットブランデー(15ml) レモン(5ml) シュガーシロップ(5ml) ドライベルモット(5ml) シェーク、カクテルグラスへ。

カクテル名:「新崎人生」

今や全日のトップスターの新崎。白色のリキュールの中に鉄のカクテルピンに刺さった不気味なブラックオリーブが沈めてある。カクテルピンが杖を表し、その先のブラックオリーブが人の人生そのものを表すという。うーん。

レシピ:不明(本人ももう憶えていないだろう。)

カクテル名:「チョーク・スリーパー」

アントニオ・猪木の晩年のフィニッシュ・ホールド。カンパリの赤とブルー・キュラソーの青がぶつかってどどめ色になっている。その苦しげな色が、人が絞め落ちていく瞬間をイメージしているという恐ろしいカクテル。

レシピ:カンパリ:(?ml) ブルーキュラソー(ml) あとは不明

その他私が出したお題は「スペース・フライング・タイガー・ドロップ」「ジャパニーズ・ローリング・レッグクラッチホールド」etc…要するに私もマスターも、格闘技が好きなのだ。

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テレビ・ショッピング 1998・11・20

テレビ・ショッピングには笑わせてくれるものが多い。

まずは、カーワックス。日に焼けた中古車も新車同様にピッカピカ。ほんとかいな。色がはげているんだぜ。

つづいて携帯用釣り具。OLがショッピング帰りにちょっと釣りをするか?ゴルフ場の池で本当に釣りをするやつなどいるのか?うーん。

そして、開運招福、先客万来ねこ。陶器のねこの置物だ。「これを見たさに来るお客さんが増えましてねえ。」ほんとかおい。おれも買っちゃうか?店に置いちゃうぞ。

それにしても妙なものばかり飛び出してくる深夜のこの番組は、けっこうおもしろいんだよなあ。

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綾戸 智絵 1998・11・25

石川県は金沢市の隣、野々市町で綾戸 智絵にあった。彼女は知る人ぞ知る日本屈指のボーカリストだ。私はとあるライブの打ち上げで彼女の隣の席に座った。その時の彼女の言葉が忘れられない。

「ええか、ボーカリストは歌をうとたらあかん。歌おと思たらあかんのや。ここや。(胸を指差す)たましいや。たましいを伝えるんや。私なんかうとたことなど一度もあらへんがな。大事なことはたましいを磨くことや。歌なんかどうでもええ。そないなもん年取りゃほっといてもうまくなる。そやけどたましいは磨かな光れへん。みな大事なことを間違えとる。ええか。」

「打ち上げのおもろないジャズマンはジャズマンやあらへん。レッスンは打ち上げからや。」

「英語なんかどうでもええでんがな。聞こえたとおりにうとたらええ。カタカナ英語でええんや。でも日本人の英語はおかしく聞こえるやろ。なぜや?それはな、コンプレックスや。外人ぽく歌お歌お思うから妙になるんや。ナベサダかて外人コンプレックスあるんやからあんたらがいちいち気にすることあらへん。大事なのはたましいを磨くことや。それでバッチリや。よっしゃ明日はオフや。オフやで。今日は飲んで狂うぞ。」

そう言って彼女はブラッディ・マリーを飲み干し、ピアノに座り弾き語りをはじめた。「ダイナ、飲ませてちょうだいな…」一番日本語、二番ドイツ語、三番中国語、4番イタリア語、5番韓国語、6番北朝鮮語、7番フランス語…もちろん日本語以外はすべてでたらめだが、会場は彼女のおこす大爆笑の渦にまきこまれ、酒池肉林の打ち上げが幕をあけた。

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口論 1998・12・1

ショット・バーを始めた私の友人と口論になった。

「……そうはいうけどさあ、林さあ、理想ばっかいわれても困るんだよ。原価があるわけだし、いい食材をつかえばそれだけ経費が増えるだろう。フレッシュ使えってあんまりうちのバーテンにふきこむなよなあ。やっていく(経営していく)方はたいへんなんだぜ。現実ってものがあるわけだよ。氷だっていいやつ買ってきたらそれだけ金かかるじゃん。それでそんなに味が変わるわけじゃなし。まあ、おまえと俺とじゃ考え方が違うってことかな。理想ばっか言うなよな。」

「あのね。悪いけど俺は理想しか言わないよ。理想だけ追求していけばいいじゃないか。ちょっとでも夢を売ることを商売にしているんだろう、あんたも俺も。現実はどうのこうのなんて夢のない話をするなよ。飲み屋に理想がなかったら、世の中いったいどこに理想があると言うんだい!」

「飲み屋に理想がなかったら、世の中いったいどこに理想があると言うんだい。」私は…この台詞に…酔った……。

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コーラ 1998・12・6

ヨーロッパのコーラとアフリカのコーラ

コーラが健康にいいといったら信じてもらえるだろうか。

糖分の量、きつい炭酸、そしてあの色、お腹にいいわけがないと思われて当然、日本じゃ腹痛の時にコーラを飲む人はちょっと常識しらずと思われて当然だ。しかし、海外でちょっと変わった体験をしたことがあるのは私だけではないと思うのだが…。

海外では基本的に食べ物が合わないため、腹痛に襲われることは日常茶飯事だ。慣れない地での緊張と不安の中、腹痛に襲われどうしようもない気分になってしまった時、その地で買った一本のコーラが腹痛を解消してしまった経験があるのは私だけだろうか。ヨーロッパにあるコーラは不思議と糖分や着色料による胃のもたれもなく、むしろすっきりする感じで驚いたことがある。医者も腹痛時の飲料水にコーラを勧めることがあるそうだ。日本のものと成分が違うのだろうか。

掲示板にて意見求む。特にボトラーズ関係の人、教えてネ。

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ジュニア・マンス  1998・12・6

mance.jpg (3283 バイト)ジュニア・マンスにあった。ピアニスト。言わずと知れたジャズ・ジャイアンツ。しかし私もジュニアもかなり酒が入っていた。

「日本にはよくいらっしゃるんですか。え、ニューヨークから?いいですねえ。え、ニューヨークに住んでいるんですか。それはすごい。え、今日のメンバー全員?そいつはいいなあ。僕も2度ほど行ったことがあるんですよ。ところで今日のあなたのレクチャーは残念ながら受けることができませんでした。時間が間に合わなくて、残念です。」

「いいジャケット着てるね。でも暑くないのかい。」

「ああ、ちょっと暑いけど飲んだ時財布を忘れないようにするには、ジャケットを着てるのが一番なんで。」

「なるほど。」

おいおい林、しっかりしろ。ジュニア・マンス相手に英会話の練習してどうする。もっと他に聞くことあるだろう。「ブルースで一番大事なことはなにか。」とかさあ。がんばれよ。

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あなたに贈くるときめきJAZZコンサート!! 1998・12・7

断れない仕事というのがある。

幸いDOTCOOLでは若い学生バンドマンががんばっているので、辛そうな仕事は、「まあ経験だと思ってやってみろよ。」学生達にいやとはいわせない。まあともあれバンドやってギャラをもらえるという体験ができるだけでも、学生にとっては有意義なはずである。

11月の半ば、清水商工会議所からまわってきた仕事もすごかった。学生達に仕事をまわしたものの少し心配になって当日見に行ってみた。駅をおりて五月通りを南進、人が賑わっている様子は微塵もない。会場の静銀前は真っ暗、しかし「あなたに贈くるときめきJAZZコンサート!!」の立て看がなにげなく立てかけてある。「やっぱりここでやるのか…。」学生達も覚悟を決めてセッティングをはじめる。寒風吹きすさぶ中暗闇で行うセッティングはバンドマン根性を養うに最適だ。私はここで手伝っては彼らのためにならないと決め込み居酒屋へ。一杯はいって出て来たころには演奏がはじまっていた。観客なし。とおりすがりの人は一瞥してとおりすぎる。うーん。これがジャズの現実だ。しかし感動できる演奏をすればきっと人も歩みをとめるはずだ、がんばれ…と思っていたら一人、二人、聞き入る人が現れる。彼らの演奏が心を射止めたか?よし交代だ。と思い私が乱入。まったくずるい。だれかときめいた人いたのかなあ。

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SSH(静岡大学スタンダード・ハーモニー・ジャズ・オーケストラ)1998・12・11

彼らの定期演奏会が12月12日(土)に行われる。静岡市民文化会館で5:30からだ。

私はこのサークルのOBで、ひょんなことから1日このビックバンドを指導することとなった。久ぶりにおとずれたサークル棟の彼らの部屋は相変わらず汚く、活気に満ちていた。当然私は練習をしきりたくなる。

「だーめだめ。いいか、サンバはどうやったらいいかわかるか?どうだ君。」

「……」

「サンバはな、楽しくやるんだ。わかったな。それじゃもう一回。1234。」

おっ。結構みんな聞いているぞ。

「よーし。スイングはどうやったらいいかわかるか。はい君。」

「……」

「スイングはな、ゆっくりやるんだ。わかったな。それじゃもう一回。わーんつーすりーふぉーーー。」

私の指導方法は究極の根性論だ。でもこれも大事なことと思っている。

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オリジナル・カクテル3 1998・12・14

bar〇ッシュの〇チ山氏の格闘技系オリジナル・カクテルは一風変わっている。彼の腕は一級品だが、こちらの方ははたしてどうか。

カクテル名:獣身アレクサンダーライガー……ただのアレクサンダー

カクテル名:ジンリッキースティムボード……ただのジンリッキー

カクテル名:ジンリキラリアット……こちらもただのジンリッキー

カクテル名:ドラゴンスクリュードライバー……ただのスクリュードライバー

カクテル名:サマーソルティードック……ただのソルティードック

カクテル名:アルゼンジンバックブリーカー……ただのジンバック

うーん。

要するに、タイトルにだじゃれをいれているだけである。しかしなんでこう、バーテンには格闘技好きとだじゃれ好きが多いのだろうか。

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両替町 1898・12・15

PM7:30、両替町、この繁華街は最悪だ。町を歩くとこんな具合だ。

「お兄さん、はい40分5,000円ぽっきり。かわいい子いるよ。どうだいどうだい。」

「いらねえよ。」しかしすぐに新手が現れる。

「やりほうだい、さわりほうだい、たいへんだよ、5000円ぽっきりこっちこっちお兄さん。」

「うるせえな。」しかしまた新手だ。またしてもアホそうなガキが寄ってくる。

「はいもうおっぱいもみもみ状態、あそこさわりまくり6,000円。こっちだよお兄さん。」

「……」私は無視するしかなかったが、はらわたは煮えくり返っていた。

わずか100mぐらい歩いただけで、6人のバカが声をかけて来た。交差点や道端で手当たりしだいにえげつない台詞を投げる馬鹿野郎たち。彼らの行為は単なる客の奪い合いだ。映画「タクシードライバー」のトラビスの台詞ではないが、私は、こんな街は水できれいさっぱり洗い流してやりたいと心から思っている。

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LIVE AT 静岡商業高校 1998・12・16

学生2人と…。

静商定時制でのライブは3度めだ。

このナイスな定時制も来年で消えてなくなってしまう。学生不足が原因らしい。

ところで、「あたたかみのある定時制教育推進事業」というのがある。我々はその事業の外部講師として招かれた、というと言い方は非常に固いが、要するに学校の視聴覚教室で思い切りJAZZライブをやった。今回は私の要望も受け入れられ、生ピアノも用意してもらった。部屋も暗くなった。後ろむいちゃうやつ、寝ちゃうやつ、しゃべってるやつといろいろいたが、聞いているやつもいた。いつもとちがう手応えを感じながらライブは終了した。学生たちは気持ち良くかたずけを手伝ってくれた。

応接室で、歴代の校長先生の無数の肖像画にかこまれながらちょっとおちつかない食事をとっていると、教頭先生がはいってきた。

「なんせ予算がないものですから、なかなか人を呼べなくてねえ……。」

「先生、僕らは、技術を教えてなんぼの講師をしているわけじゃないんですよ、文化だ。文化は囲ってしまったらおしまいなんです。広く伝えていくことが重要。やる側と受ける側、お互いの努力が重要なんです。そういう意味で先生がたも、予算がないないなんていっていないで、どんどんいろんな人に声をかけてみればいいんです。幸いにもここ静岡は県庁所在地で人口も多く、人材にあふれている。少なくとも芸術を志すハートがある人間なら、定時制高校で自分を表現することの意味を十分に汲み取ってくれるはずです。私達もがんばりますから、先生もがんばってください。」

最近はだれかまわずところかまわず説教だ。うーん。

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