2002年7月
7月31日 毎日、意識が朦朧とするほど熱い。 今週の「SPA」によれば、東京の気温は急激に上昇しており、夕立はスコールになり、目黒区にはインコが住み着き……熱帯化が進んでいるという。 その解決策として東京水冷計画(東京の地下にパイプを縦横無尽に張り巡らし、海水を流すことで地面を冷却する)とかいろいろあるらしいが。 インコか。 かわいいなあ。昔インコ飼ってたんだよ。目黒のどこにいるのかな。 7月28日、「グラン・ワークショップ」という政治集会・環境保護集会に行ってきた。 このサイトを政治・宗教宣伝の場所にはしないつもりなのでリンクは張りません。 検索してみると悪口合戦がいっぱい出てきて怖いー。 もともとここは共産主義の集会だったらしいね。 いまは共産主義の間違いを認めたらしいけど、過去は消せないから、いろいろな非難を浴びることも当然あるだろう。 私は、なにしろ書きたいテーマが「革命とその挫折」だから、現実の世界で革命をやってる人、やった人についても当然興味をもっている。 あの人たちは何を目的に、何を思って運動しているのか。知りたい。 異なる思想の持ち主に対して何を思うか。 かって犯した罪、傷つけた人々に対して何を思うか。 すべてを知りたい。 いずれ書く革命の小説に限りない迫真性を与えたい。 それが参加する理由です。あくまで政治ではなく人間を知りたいんです。 第一部は「東海大地震で原発が破壊されたらやばいから原発止めろ」という趣旨の公演。 私はこの辺の運動に参加するまで、反原発というのは「科学をしらない無知な人間が、ただ感情だけで怖い怖いと言ってる」のだと思い込んでいた。 ちゃんとした根拠があるのだ、ということは実際に話を聴いてみないとわからない。 それがわかっただけでも価値はあったな。 第二部は、アメリカの思想・行動を批判する公演がいくつか。 パレスチナで戦っている日本人の話とか、いろいろ貴重なことがきけた。 それから凄いと思ったのが、宮台慎司の公演だな。 この人の本は「終わりなき日常を生きろ」を読んだことがある。 いまの日本は善悪がはっきりしていない、生きる目標を誰も与えてくれない灰色の時代だ、だから不安になって、明確な善悪の基準を与えてくれる新興宗教に走るのだ、という分析は面白かった。 しかし、まさかこの人、これほど話術が巧みだとは思わなかった。 「日本に『ナショナリズム』なんてものはない。ナショナリズムの本質は忘れないことです。苦しいことも悲しいことも、なにより恨みを忘れない。その感情で連帯するのがナショナリズムです。ところが日本人はどんなに殺されても忘れてしまう。日本人がやってるのは一時的な感情の高まり、終わったら全部忘れるお祭りでしかない。それをアメリカは理解し、日本をコントロールしているのだ!」 とかそんな感じで彼の話は始まる。つかみはオッケー。 そして流れるように進み、聴いている人間の心をさらっていく。 アメリカは卑怯で傲慢、というイメージが鮮烈に焼きつく。 いや、あからさまな政治的スローガンを叫んだりは決してしない。 あくまでエンターテイメントの「面白い話」だ。だから抵抗なく聴けるし、心をぐっとつかまれる。 カリスマ的というのはこういうものか、と思った。 いろんな意味で要注意。 言ってる内容がウソだとは思わないけど。真実の一部だね。 ついでに大手町の「逓信総合博物館」に行って来た。 時間調整のために行っただけで期待してなかったんだけど、すごくおすすめ! 日本の郵便や電話・電信がどんなふうに発達してきたか、よくわかる。 昔の電話機とかモールスの機械とかあって楽しいよ。 歴代郵便ポストもよかったな。 明治の郵便局を再現したセットもいい味だしてたな。 |
7月27日 本の感想を。 橘悠樹「蒼い月は知っている」白泉社MY文庫 白泉社MY文庫に送って不採用だったので、悔しくなって「どんなのならいいんだよ」とばかりに読んでみた。 ふむ。 表紙の椋元イラスト・猫耳メイド三人に惹かれたことは秘密だ。 椋元夏夜さんのイラストは好き。 読んでみると、この三人はメイドではなくウエイトレスだそうだ。 猫耳ウエイトレスねえ。 日本アキバ化計画は順調に進行中。 ……。 (現実世界に還ってきて) はっ。 うん、全体的に言えば面白い。 「登場人物がちょっと現実離れしすぎ」 とは思ったが(私は特に音葉に疑問を感じた)それはそれで必要なものだったのかも知れない。 ただ、文章の書き方が不親切。必要な描写があちこち抜けてるから、読み返すことを強いられる。 作者はわかっても私はしらんのよ、とか言いたくなることがあった。 ミステリとして特にすごいとは思わなかったけど、白泉社MY文庫が、 「男性向けイラスト付小説」 「広義のミステリ」 「泣かせの要素はあったほうがいい」 (以上、白泉社MY文庫のサイトより) という線を狙っているのだとしたら、まあいんじゃないかな。 イラストの負けないくらいの萌えがあればなおよかった。 あとさあ、××ネタは、男の読者ひいちゃうよ。 私に書けるかなあ、こういうの。 「電撃HP VOL18」(メディアワークス) さて、その「男性向けイラスト付小説」の総本山はおそらくここ。 ドラゴンマガジンかもしんないけど。 相変わらず、秋山瑞人「イリヤの空、UFOの夏」からは目が離せない。 膨大な量の描写と解説と回想と設定の断片。 それらが、何一つむだになってないんだぜ? この人を前にすると私は 「でも、小説のこの点をこうすればこういう問題点が当然出てくるわけで、ある程度ナニナニなのは仕方ありませんよ」 とかそういういいわけが一切できなくなってしまうのだ。 あとね。 電撃ゲーム三大賞の募集広告。 これを見た瞬間、私の脊髄を稲妻が走った。 ああ。 5ヶ月間眠っていた眼鏡っ娘萌えが、一気に大爆発。 メガニックオーラ(今考えた)にあふれたこのイラストよ。 本屋で、まるでなめまわすかのようにこのページに顔を近づけてしまった。 店員のお姉さんに見られた。 ああ電撃に栄光あれ。 なにがなんでも電撃に応募したくなった。 だが適当なものがない。 締め切りはずいぶん先だが。 |
7月23日 毎日暑い。 つい三ヶ月前に2万出して買ったヘルメットが壊れちゃったよ…… 悲しいなあ。 まあヘルメットは消耗品なんだが、三ヶ月は短すぎだろう、なあ。 「テキストサイト大全」(ソフトマジック)という本を買った。 非常に面白い本だった。 侍魂やちゆ12歳、ろじっくぱらだいす、一流ホームページ、連邦、ヘイ・ブルドッグ!…… 大ヒットサイトの管理人インタビューしたり、テキストサイトの歴史について解説したり、これからテキストサイトを作る人への応援文があったり。 愛にあふれてる。そして期待と情熱にも。 個人が作ったサイトに一日10万人が訪れる、というのは確かに途方もない状況だ。 「月姫」や「ほしのこえ」同様、これは「企業こそ力」という常識を覆す革命的出来事なのかもしれないな。 ああ、世界が変わっていく瞬間を私は見ているんだ、いやその流れの中に加わっているのかもしれないと思うとわくわくするよ。 でもね。 「アクセス数にばかりこだわり、サイト管理人の目的はそれぞれなのだということを忘れたら、待っているのは醜い争いだけだ。そんなのはネット外だけでたくさんではないか」という言葉も胸に響いた。 というわけで、アクセス数は手段です。 目的である小説の創作もやりましょう。 脳のパッパラ回路がまだ残っているかどうか確かめたいので、「松戸才子まーち」を書こう。 |
7月22日 本の感想。 北方謙三「三国志8」角川春樹事務所 おいおいおい。次から次へと死んでいく。 あいつも、あいつも。 そうだよな、作中ではすごい勢いで時がすぎてるんだもんな。 友達を作ろうとしなかったがゆえに、これから曹操はますます追い込まれるだろう。 その一方でますます硬く結びついていく劉備たち。 最初の頃のような反感はなくなったが、やはりあまり感情移入できない。 曹操VS馬超の戦いがとにかくかっこよかったなあ。 この話で初めてかもしれない正統派ヒーローだからね馬超は。 小川一水「導きの星2 争いの地平」角川春樹事務所 傑作。 SFでしか書けない物語! 人間・人類・世界・歴史をいっぺんに、複雑に融合させた形で描くことに成功している。 すごく奥の深い話。 小川一水はこのシリーズで自分の殻を木っ端微塵にした。 いまここにいるのは日本有数のSF作家だ。 今日は国際空港……リンクをいろいろと追加した。まだ増やす予定。 |
7月21日 実家で犬を飼い始めた。柴犬。人懐っこいな。 日本犬って天然記念物だったのか。 私は犬にはそこそこ好かれますが、猫にははっきり嫌がられます。 リンク集……国際空港をいじりつつあります。 |
7月20日 さて、今日は書いておかないとまずいだろう。 記憶の結晶化という言葉があるけど、人間は自分の都合のいいように記憶を捻じ曲げるようだから。 「勝者の傲慢は歴史を歪曲する。だが敗者の怨念も歴史を歪曲する」 という言葉もある。 ……誰の言葉だったっけ。 私は以前、文章を書くとか言葉を誰かに向けてしゃべるというのは自分の心の断片を残すことで、ある意味では不死となることだ、と書いた。 そうやって他人の心に、魂の断片をもぐりこませる。 そして人間は、一つの流れになってずっと続いてきたのだと。 そう思っていた。 だが、断片という形で残せるのはごく一部だし、断片化する過程で歪んでしまうし、それを見た他の人も、私自身も、本来の形を認識できないかもしれない。 それをつよく思い知らされた。 でも、いや、だからこそ心して喋ったり書いたりしなければいけないんだな。 それを受け取る側もそうだし、覚えるときもそうだよな。 ナルシスト入ってるからこのへんでやめておこう。 閑話休題。 集英社の漫画雑誌「ALLMAN」が休刊した。 情報遅すぎ。何日経ってるんだ。 うわあ、好きな雑誌だったんだがな。 これで「太平天国演義」が再開される可能性はますます低くなった。 ほぼ絶望か? 仮にそうだとして、中断されてしまった好きな漫画にたいしてできること、やるべきことは。 私は曲りなりにも物語を書いている人間だ、それを生かして、やろう。 優れた、だが不遇の作品の、そのエッセンスを汲み取って作品にしよう。 とにかく、とにかく、やるべきことはたくさんある。 |
7月17日 こないだ火傷した腕がぷくっと膨らんで、やたら痛い。 押してみると黄色い粘液が出てきた。 うわ、また化膿してる。 私は雑菌に対する抵抗力が弱いらしい。 部屋が汚いから化膿するのだ、という気もするが。 三年前なんて、「骨髄炎になりかけですね」とか「もう少し遅ければ足を切り落とすことになってました」とか恐ろしいことを医者にいわれた。 ずばっと足を切り開いてホースで洗われたんだぜ? まあ、そうしなければ治らなかったんだからしょうがないが。 とにかく今回も医者に行こう。 こういう身体レベルの経験を小説に生かすことはできないかなあ。 北方謙三「三国志8」今読んでる。 馬、馬超! あんたかっこいいぞ! |
7月16日 まず。 ある出版社に持ち込みした「CHAIN」はやっぱり玉砕というか、あぼーんというか、没というか、論外というか。 とにかく駄目でした。 しかし、いろいろな人からアドバイスをもらえた。 それを生かせなかった私がわるいだけだ。 今回またもらった。 もらえただけありがたい。 小説書きを再開するのは多分八月に入ってからだけど、かならずリテイクする。 右足に妙な力が入っているらしく、今日一日で三回も足がつった。 ゲーム中になったときも焦ったが、本当に首都高を走っているときに「ずきゃっ」と来たときにはもう…… まだ筋肉が突っ張ってる感じだ。 ゲームの練習はさっぱりだ。 なんか昨日より下手になってるぞ。こんなことって…… |
7月15日 いつのまにやら週一更新になってしまった。 レースゲームの練習を始めた。 まだ初級コースもクリアできない。 ほかの人の走りを後ろから見てると「すげえ」とか思うのだが、ではあれはどうすればできるのかというと見等もつかない。 一つ気づくのは「力んでない」ってことかな。 私なんかは、いまにも「ふんがー!」とかいいそうになってハンドル握ってるのに。 スラスラスーイ、とかそういう擬音が当てはまりそうな感じなんだよね上手い人は。 全力を出すとまた変わるのかな。 まあ、なかなか上手くはならないが、やってるうちに、ずいぶん長いこと忘れていた楽しみがよみがえってきた。 ずーっと昔、メガドライブの「バーチャレーシング」とかよく遊んでたなあ。 段ボールみたいなポリゴンが、途方もない高度なテクノロジーに思えた。 いま見るとがっかりするんかなあ。 実は私の足元にまだメガドライブが転がっていたりする。 さすがに10年前のものだから動かないだろうなあ。 振るとシャカシャカ音がするんだけど、メガドラってそういうものなのかな。 私の一番気に入ってる雑誌「歴史群像」の新しいやつがでた。 紀元前から現代まであらゆる時代の、あらゆる場所のあらゆる戦争を、それもさまざまな角度から語りつくし分析しつくした雑誌。 兵器の発達史や会戦の紹介なんかもいいが、今回の記事で一番面白かったのは「自衛隊創設史」だな。 自衛隊が朝鮮戦争に対応するために創られたというのは知っていたけど。 まあ、どんな状況でも、どんな時代でも、全力をつくしてがんばっていたんだなあ人間は。 「歴史群像」の記事は小説じゃないから、とくに感情を盛り上げるような書き方をしてるわけじゃない。 事実を淡々と書いているだけだ。解説でしかない。 それなのに「そこには確かに生身の人間がいる」ということが伝わってくることが多い。 だから非常に興味深い。 前の号ではペニシリンの開発を扱っていて、それもなかなかよかった。 つぎはぜひコンピュータの開発を。 戦争と思いっきり関係あるぞ。 この雑誌を読んでいなければ、私は、 函館周辺で幕府軍と新政府軍の艦隊戦があったことも、 19世紀のパラグアイで国民が半減する文字通りの殲滅戦があったことも、 陸軍中野学校が理性と判断力を重んじる教育をしていたことも、 サッカーが原因で起こった戦争があったことも、しらなかっただろう。 とにかく私は「歴史群像」を読むたびに、自分の無知と、それから「この世界のいたるところに人間がいて、みんな一生懸命なんだ」ということを思い知らされる。 戦争だから特にどう、ということもないけど。でも限界ギリギリの選択だから、人間のいろいろな面がでる。 いつか、「ああ、これは別の世界の、でも本当にあった歴史だ」と感じさせるくらいの話を書きたいなあ。 |
7月10日 本の感想。 古処誠二「UNKNOWN」講談社ノベルズ うん、同じ作者の「少年たちの密室」と同様の問題意識にもとづいて書かれた「糾弾の書」だ。 ミステリとしては、「え? それだけ?」とか思う。 でも、この人の小説の真価は多分そこじゃないんだろうな。 自分のいる場所が息苦しい人におすすめ。 救われるわけじゃないが。 三雲岳斗「レベリオン5 楽園に紅き翼の詩を」電撃文庫 レベリオンシリーズ完結。 うん、三雲ファンやってて良かった。 いや、正直この話は欠陥だらけだ。 このシリーズ全体がそうなのだ。一冊一冊は面白くても、全体を通してみると、あちこち変。 「どんでん返しじゃなくて、設定を途中で変えたんじゃないか?」と首を傾げたくなる。 でも。 それでもいい話だよ。 スピード感があって。 熱血で。 ロマンチックで。 敵がしょぼかったけど。 物語のメッセージ性を強めるためにああしたんだろうな。 あれで納得できるか否かで評価が分かれるだろう。 私は肯定派。 力ずくで感動させられた。そんな印象。 |
7月7日 掃除は、大体方がついた。 今までの散らかり具合を100とすると40くらいにはなっただろう。 普通の人の部屋は多分5くらいで、つまりいまでもめちゃくちゃ散らかってるのだが。 掃除には、混乱した心を落ち着ける力がある、というのは発見だった。 今度から、イライラしたら部屋を掃除しよう。 あ、それから。 「駄目人間生活共同組合」の管理人、imaさん。 結婚されるそうで、おめでとうございます。 ついでに15万ヒットおめでとうございます。 でも、生身の異性と結婚できてしまう人はすでに駄目人間ではない気がします。 それはともかくおめでとうございます。 |
7月5日 さて、今日も本の感想。 浦賀和弘「こわれもの」徳間書店 ショッキングな話を書くミステリ作家だということは聞いていた。 で、実際読んでみると…… うわ。こりゃショッキングなんて言葉では語りきれない。 遊園地の絶叫マシーンみたいに、読んでる人間の精神状態を強制的に天高く放り投げたり、地面に叩きつけたり、右に吹っ飛ばしたり左に吹っ飛ばしたり。 ああ、すごいよ。 読み終わったあと、眠れなくなった。 目を閉じたら、世界が消えてなくなってしまいそうな気がして。 そういう本だ。 面白いというより、心のどこかに傷が残る本。 うん。この作者の本をもっと読みたくなった。 だが、怖い。 結局一睡もできず、こうして6日に朝に日記を書いているくらいなのだ。 |
7月3日 さて、大変お待たせしました、たまりにたまっていた本の感想です。 菅浩江「アイ・アム」祥伝社 ここしばらく、医者・医療を扱った漫画に興味をもって、よく読んでいる。 この小説も医療を扱っている。 病人、というより、死んでいく人間を介護する、「ロボット」の物語。 機械だからわかること、機械にはわからない命と死、そして突きつけられる命題の数々。 命とはなにか、人間とはなにか、何のために生きるのか。幸福とはなにか。 答えを出そうと苦闘する姿が、主人公の迷いが伝わってきた。 正直、「この設定はいらない、問いかけがぼやけてしまったんじゃないか?」という箇所もある。 痛々しくて、読むのがつらかった。 長さが中途半端かも、とも思った。 でも、これは、意欲作だ。 菅浩江さんは、「一般的な娯楽」を逸脱してでも、これを書かずにはいられなかったんだ。 それが強く伝わってくる。 小川一水「群青神殿」ソノラマ文庫 ある意味ソノラマ文庫らしい、古典的な、由緒正しいSF。 膨大なデータ収集で現実世界を写し取り、しっかり土台を作る。 その上に、嘘という建物を建てる。 そのまた上に「すごい嘘」という尖塔を。 現実世界から徐々に離れていくタイプの作品。 だからSFという印象はあまり受けなかった。 近未来小説。 そういう方向性の作品としてはいい出来。 私は、突然とんでもないことが起こる、ヘンな固有名詞とか造語出しまくりの「とにかくこういう世界なんだ! 黙って俺について来い!」型の方がより性に合っているけど。 あと、キャラの魅力はちょっと弱いかも。 水城正太郎「東京タブロイドコレクション1 新都揺るがす猟奇な男?」富士見ミステリー文庫 あいかわらず馬鹿っぽくて良い。 さらっと読める、軽くて楽しい話を読みたい、でも内容がないのは嫌だ、というわがままな読者にうってつけの「東京タブロイド」シリーズ。 「富士見ファンタジアの要素を取り込んだミステリ」という意味で考えれば、これほど「富士見ミステリ文庫」にふさわしい作品はない。 ストーリーは楽しめない人もいるかもしれない。でも個々のシーンを楽しめる、キャラを楽しめる。サービス精神満点。 今回もそんな感じ。単体で読むのはきついかも。本編のファン向けのサービスだね。 橋本紡「リバーズ・エンド2」電撃文庫 傑作の予感、号泣の予感。でも読んでくうちに「おいおいおいおいおい!」 最後まで読んで「ちょっと待てええ!?」 それが「リバーズ・エンド」だった。 しかし、やはりあれはプロローグでしかなかったようだ。 よかったよかった。 痛くて切ない2巻。 でも、これはうまくできてるけど、やっぱりパーツでしかない。 山本弘「ラプラスの魔」角川スニーカー文庫 山本弘の小説デビュー作。14年前に出された。ついに復刻されたのだ。 うん。面白い。 この人は14年前から、ずっと同じ話を書いてるんだな。 こめられた叫びは同じ。 その叫びに血肉を与える方法も同じ。本当に同じ。 でも、最近の作品……たとえば「戦慄のミレニアム」では、その血肉を支えるための骨組みが、「自己主張強すぎ」だと感じた。 それに比べてこの作品は、すべての要素が調和している。 要素に分解すると説教くさいのに、読んでるときはそう感じない。 うーん何でかな。なんで最近はそれがいまいちできなくなってるんだろう。 衰えたとは思いたくないんだがな。 「削り」が足りないんじゃないかな。 野尻抱介「太陽の簒奪者」早川書房 この人の小説と山本弘の小説を比べると、いろいろなところが対照的で面白い。 どっちもSF作家。 それも、サイエンスを重視するタイプの。 たぶん、「人類はどういう方向に文明を進歩させるべきか?」とかそういう話をしたら同じ結論に達すると思う。 「断固、宇宙進出である!!!」って。嬉々として。 アニメファンだし、趣味の話をしても意気投合できそう。 でも、こんなに違う。 野尻氏は「SF JAPAN」誌上の対談で「人間を描くことに興味がない。SFのアイディアだけを書きたい」と発言していた。 爆弾発言と言っていいだろう。 本気でいってるんなら、それはすでに小説家ではない気がする。偏見か? とにかく、山本弘は死んでもそんなこと言わない。 SFを書いてる人の大半は言わない。 しかし野尻氏は言った。 根本的に目的が違うんだ。 書きたいのはあくまでアイディア。そこまで割り切れるなら、それはそれですごい。 この小説を読んだ限りでは「まだそこまで徹底はしてないな」と思った。 人間も書こうとしてる。 で、肝心のアイディアは「ゴロンと出しただけ。料理されてない」って感じもする。 うーん。評価が微妙。 ああ、感想だけでこんな時間に。 明日は更新を休むと思います。 あさってはどばっと更新できるといいな。 |