2002年8月

 8月29日
 また画像アップに挑んでみる。
 お。表示されたぞ。
 どうやら指定した画像のファイル名が少し違っていたみたいです。
 ああ恥ずかしい。
 というわけでやっとアップできました、これが実家で飼ってる犬です。
 見ればわかるでしょうが、元気で好奇心旺盛な犬です。
   (犬の画像は諸般の理由により削除されました)  
 唐突だが。
 言葉の意味を伝えるというのはとても難しいことだ、と気づいた。
 いや、意味が伝わらなければ説明すればいいんだけど、その説明のためにはまた別の言葉が必要で、しかもそれは前の言葉より難しいかもしれないわけだし。
 どこまでさかのぼって説明すればいいのか、理解しあえているラインはどこまでで、どれを土台にして説明すればいいのか、確認するためにもまた別に言葉が必要で。
 話が伝わってるように見えるから、問題が生じてないように見えるから、説明しなくていいだろう。
 と思ってしまいがちだけど、それは見せ掛けかもしれない。
 人間同士ですらそういう問題は生じる。
 共通して理解してる前提があるかどうかすら怪しい、まったくの異種知性が相手ならどんなに苦労することだろう。
 いや、しかし、人間は最初、言葉の意味というものを少しも知らない共通項ゼロからはじめて、でも覚えられる。
 だから不可能ってことはないだろうが。
 このへんのことを書いてみると面白いかも。
 私の小説に出てくる異星人や人工知能は人間と全く変わらない。それは変だと私も思ったから。
 でもこれをどうエンターテイメントにすればいいんだ。  
 8月28日
 せっかくデジカメを買ってきたのに画像アップの仕方がわからない。
 とほほ。
 うん、これでいいだろうと思ったがなぜか表示されない。
 いままではずっとソフト任せだった。
 どこがまずいのかさっぱりわからん。
 ホームページビルダーに頼っているとこうなるのである。
 みんなも気をつけよう。
 またビルダーを使えばいいんだろうが、しゃくなので自力でどうにかしてやる。

 実家で犬を飼い始めたので、その画像でも載せようかとおもったんだけどねえ。
 「諸君、我がLOOP王国は四足歩行陸戦兵器の開発に成功した」
 とかいって。
 残念です。
 いずれ載せます。
 犬の名前はエル。メスの柴犬。茶色いです。
 生後三ヶ月くらい。
 好きなものは人間の足のにおい。
 大好きです。
 靴下を与えてやるとその場で高速回転を始めます。
 犬ってそういうものなんでしょうか。
 私が知ってる犬は、バイト先の警備会社で飼っていたダックスとかポメとか。
 あいつらとエルはだいぶ性格が違う。
 年齢のせいか犬種のせいか、それとも個体差なのか。
 可愛いけど、毎日一緒にいるとつかれそうだね。

 さて本の感想。

 夏緑「葉緑宇宙艦テラリウム」MJ文庫J
 メディアファクトリー(リクルート系の会社で、メディアワークスとは全然別)が新たに作り出したライトノベル文庫「MF文庫J」。
 「ほしのこえ」とか「ラーゼフォン」とかが出版されていることをみるとSF中心でいくのか。
 このテラリウムとやらも宇宙物。
 帯にはこう書いてある。
 「火星産つるぺた娘の魅力爆発スペースオペラ」
 ……は?
 さすがにちょっと恥ずかしい。
 しかし買ってきた。
 そして読む。
 最初に感じたのは、
 「台詞が変」 
 ただこの一言だった。
 キャラクターが、どう考えてもしないはずの説明を行う。
 たとえで言うと、こんな感じ。
 レースの最中に車がスリップしそうになって、そのときキャラクターがいうのだ。
 「いけない、このままでは減速によって前輪の加重が増加し、グリップ力をオーバーする。180キロのスピードで壁に激突してしまう。ブレーキをゆるめよう。ブレーキをゆるめれば曲がりきれない可能性があるが、まあそれは運を天にまかせるしかない。なあに、俺なら大丈夫さ」
 と。
 ふつう、この状況だと、台詞は「いかん!」とか「くっ!」とかだけで、どのようにピンチなのかは他の部分に書くものだが。
 ぜんぶこんな感じなのだ。
 説明は、客観視点の地の文でやればいいではないか、モノローグという手もある。そう思うのだが、しかしあくまで台詞。
 考えたことがぜんぶ口に出てしまう呪いでもかけられているのかお前ら、という感じだ。
 はっきりいって、とても、その登場人物が自然に発した言葉とは思えない。
 「読者の存在を意識し、読者にわかるように過去のいきさつから自分の心理まで懇切丁寧に説明してる。
 会話の相手ではなく、あくまで読者に。」  そう思えてならなかったので、読むのは苦痛だった。
 だが後半、よくある話ながらも盛り上がってきたのでようやく楽しめた。
 まあ全体としてはそんなにつまらなくはない。
 ぜんぜん褒め言葉じゃないな。
 とにかく、台詞の不自然さがあまりにもひどいマイナス点だった。
 あとね。ぜんぜん関係ないんだけどね。
 「つるぺたな胸」という言葉が出てくるけど。
 「つるぺた」というのは「股間つるつる、胸ぺたん」を略した言葉であって、貧乳と同じ意味で使うのは厳密に言えば間違いじゃないか。
 これ以上語るといろいろ疑われるので中断。      
 8月25日
 なくしたと思って「ウロボロスの波動」なんかを買いなおしたんだけどさ、今日部屋を掃除してたらでてきたよ。
 ああ、無駄な金つかっちゃったよお。
 寄付したと思うか。

 葛西伸哉「アニレオン! ヒーローだって恋したい(ハート)」ファミ通文庫
 松戸才子まーちを書くにあたって、読まないわけにはいかない小説。
 マッドサイエンティストとアホな敵が繰り広げるヒーローコメディ。
 ギャグの切れがいい。
 葛西さんは本当に万能の作家で、次々に新ジャンルに挑戦してゆく。
 そして、どのジャンルをやらせても一流だ。
 これだけの能力がありながら、この人はこういうのだ。
 「僕は小説家ではなく、表現手段としてたまたま小説を選んだオタクだ」
 すごいよな。
 あとね、ギャグが笑えるというだけでなくてね。
 この小説の場合、ギャグの設定と「真面目なテーマ」が一体化していて、真面目に解釈すれば「すごくいい話」なんだよな。
 気負いも恥ずかしさもなく愛を語り、その真なる姿を描き出すことを、それを説教くさく感じさせずにやることを、葛西さんはギャグによって実現した。
 こんな使い方があったか。
 ギャグのせいでシリアスをぶち壊しにすることも、シリアスのせいでギャグをしらけさせることもない。
 はあ。ため息がでる。
 眼鏡的にもなかなかだよ。

 三木原慧一「クリムゾンバーニング4」中央公論新社
 ギャグというか、「遊び」の部分がシリアス部分と密接にかかわってる……という点では、このシリーズもそうだろう。
 うん、現実のネタを、思いもよらなかったやり方でとらえ、作品にもりこむやり方が、三巻とくらべてもさらにうまくなった。
 というか、「ネタを知らない人は置いてけぼり」という部分が全然なく、「知らないなら知らないで違和感なしに楽しめる、知っていれば違う楽しみ方がさらに生まれる」っていう感じだ。
 高度なエンターテインメントである。
 それにしてもメイドさん好きだなあ。
 「東の三木原 西の榊」っていう感じだ。
 架空戦記のタイトルみたいだな。

 藤崎慎吾「ストーンエイジCOP」光文社
 「クリスタルサイレンス」というSFを出し、大森望に「凄い凄い凄すぎる」といわれたSF作家、藤崎氏の新作。
 うん、これも面白かったよ。
 展開がスリリングだし、舞台となる近未来の日本は独創的で、しかむリアルな未来だ。
 必要以上の謎をあかさず、多くのことを語らずに終わらせたのもいい。
 でもキャラクターはちょっと感情移入しづらいかな。

 今日は「松戸才子まーち」第3話書いてた。
 ちょっとしかすすまなかった。
 だが、9月10日ごろまでに完成させる!
 8月21日
 宇野比呂士「天空の覇者Z(ツェット)」(講談社)という漫画が終わった。
 聖なる剣・流星の剣をもった剣士が、世界支配をたくらむナチスと熱い熱いバトルをえんえん繰り広げる、SF大冒険漫画だ。
 敵はナチスなのだが、人物の名前を借りてきているだけ。
 なにしろこの世界のアドルフ・ヒトラーは超能力を持った美少年である。
 ほかにもナチス関連の人物がたくさん出てくるが、原型を全くとどめないほど変えてある。
 ナチス関連の用語も全然違う意味に解釈してある。
 ここまで変えるといっそすがすがしい。
 とくにレニ・リーフェンシュタールの扱いは「うわ! そう来たか!!!」って感じである。
 「反重力ガス」なるもので空を飛ぶ戦艦、剣戟・拳・空戦・砲撃戦・頭脳戦……
 どの闘いも魅力たっぷりだ。
 暴走するトンデモ科学理論、「愛」と「約束」で織り成された王道まっしぐらのストーリー、超スケールの設定と謎。
 すべてが熱い。
 女の子もかわいいよ?
 ふう、いい終わりだった。
 謎の明かし方はともかく、オチの付け方は最高。
 もういっぺん通して読んでみたくなった。
 でも、ああ、楽しみが一つへっちゃったなあ。

 2chの「コテハン・名無しさん観測所」に、
 
 769 :イラストに騙された名無しさん :02/08/21 11:38
 ペンCって、まだ居たっけ?

 などと書かれてしまい、ちょっとショック。
 ここにいます!!!
 でも今は、2ch書き込みより「まーち」を書くのを優先させます。
 あと2週間くらいでどうにかしたいです。      
 8月20日
 急に涼しくなりました。
 
 さて、本の感想。
 
 霧舎巧「四月は霧の00(ラブラブ)密室」講談社ノベルズ
 表紙イラストが萌え。
 しかし、33ページまで読んだところで私を衝撃が襲った。
 以下、33ページより引用。

 「琴ちゃんだって、眼鏡かけてないじゃない」
 「コンタクト」

 ……!  読む気がうせた! なぜ外す!
 しかし、と私は思い直した。
 また眼鏡をかけてくれるかもしれない。何しろ西村博之(2chの管理人じゃないほう)が挿絵なのだ。
 西村氏は「カラミティナイト」で全国14万8000人(LOOP王国総力戦研究所調べ)の眼鏡スキーたちを爆萌えさせた偉大なる眼鏡画家である。
 きっとかけてくれる。
 すべての謎を解いたとき女は再び眼鏡をかける、という伝説を要求する。
 この要求が聞き入れられない場合は……
 (国王自らテロリストかい!) 
 まあそれはひとまずおくとしよう。
 ラブコメには詳しくないんだけど、そのラブコメ部分とミステリ部分が喧嘩してない。
 どっちもちょっと食い足りないとはおもったけどね。

 その続編、
 霧舎巧「五月はピンクと水色の恋のアリバイ崩し」講談社ノベルズ
 このタイトル、買いづらいです。
 ……まだ眼鏡かけない模様です。
 一巻より面白かった。
 人は死んでるし背景は陰惨なんだけど、いきいきしたキャラクターたちのせいで暗くならずにすんでる。
 
 それからこれ。
 西尾維新「クビツリハイスクール」講談社ノベルズ
 うーん。
 1巻「クビキリサイクル」は、ねじくれた文体と、変人ばかりの登場人物によって織り成される出来のいいミステリだった。
 2巻「クビシメロマンチスト」は、ミステリ要素より「変なやつの心を描く」ことに力を注いだ作品だった。なんらかの意味で一線を越えてしまった人たちの心。それを描く。しかし一番壊れてるのは語り手なので、まともな描き方にはならない。文章表現も前衛的というか、禁じ手をいろいろ使ってる。
 そして3巻であるこの作品で、ついにミステリ要素は1パーセントくらいになってしまった。
 そのぶん、これでもかこれでもかとばかりに、「変なやつ」を出し、「変なこと」をさせ、変な風に喋らせ。
 いかに異様な世界を構築するか。この現実の日本のはずなのに明らかに違う世界を。
 その一点に超人的な力をつぎ込んで書かれた作品。
 ここまですべてが異様だと、正常を判断する基準がないのでおかしいと思わなくなる。
 それってどうなのかな。
 すごいとは思った。言葉遊びも含めて。
 でも進化の袋小路というか、汎用性のない方向に突き進みすぎでは。
 
 感想ばっかりではなく、ちょっとずつ自分の小説も書いてる。
 「松戸才子まーち」の第3話を。
 松戸姉妹の父親が出まーす。  
 8月17日
 本の感想。
 
 林譲治「ウロボロスの波動」早川書房
 最近、SF作家としても大活躍中の架空戦記作家・林譲治。
 SFマガジンでのインタビューによると、もともとSFが書きたかったらしい。
 これは、ハードな、科学指向のSFだ。
 物理や天文が苦手だとちと辛い。
 でもそれだけじゃない。
 「社会システムの変化」が重要なキーワードだ。
 宇宙に進出した人類は、ただ科学を発達させただけじゃなく、地球のものとは根本的に異なる社会を築いた。それゆえに彼らは発展し、地球との対立を深めていった……
 その「新しい社会」というのは、「ピラミッド構造ではない、中枢をもたない組織」なんだ。
 それぞれ役割の違う個人や小グループが、協力し合っているだけ。
 どっちが上とか、どれが支配しているとかそういうのがない。
 意思を決定する個人、または組織はある。
 けれどそれも、「全体の意思を決定するという役割を持っている」だけで、他の役割と同格である。
 地球人の感覚では「支配者」に見えたとしても。
 それゆえに柔軟性があるという。
 その組織のあり方は人間の意識を根本的に変えてしまうという。
 同じ作者が「暗黒太陽の目覚め」でも出した概念だ。
 ううーん。
 この組織のあり方って、それこそ人間の心が根本的に変わらないと実現不可能、というか支持されないんじゃないかなあ。
 人間には感情というものがある。
 その感情が「自分より上・下」「あいつが一番偉い」とかそういうのをもとめるんじゃないかな。
 「役割が違うだけで上も下もない」という考えは確かに正論だけど。
 まあ、宇宙の人たちはすごいってことか。
 そういう考えが、当たり前のようにできるのであれば、彼らは確かに地球人とは違う。
 8月15日
 靖国神社周辺、黒塗りのバスがびっしりと止まっていた。
 車体には日の丸や君が代、菊の紋、「救国」「護国」「愛国」「皇国」「民族」「血」「青年」「自主憲法」「公式参拝」「核武装」などの言葉が書いてある。
 言わずと知れた右翼だ。
 白やカーキ色、迷彩色……軍服姿の男たちが旗を持って絶叫している。
 「今日、八月十五日は、日本人にとって決してわすれてはならない日です……」
 「われわれは! この日が! 屈辱の日であることを! わすれてはならない!」
 「平和ボケした日本を……誇りを持てる日本に……」
 叫びを聞きながら、私は道端にバイクを止め、ある本を読んでいた。
 古処誠二「ルール」集英社。
 ハードカバーで、銀色に輝くこの本。
 帯には、こう書かれている。
 「生きることがもっとも困難だった時代、
 生きることがもっとも困難だったな場所で」。
 これは太平洋戦争末期、フィリピンで、飢餓と疫病と絶望のなか、それでも任務を果たそうとした男たちの物語である。
 とにかく描写が秀逸。
 雑草と、米が数粒浮かんでいるだけの粥。
 腐っていく傷口。
 死ぬまで寝かせておくだけで何の治療もできない野戦病院。
 マラリアの高熱でみた幻覚。
 飢えのあまり蛆が米に見え、鉄帽が椰子の実に見える。食べようとする。
 兵たちの大半は、敵に撃たれるどころか米兵の姿をみることもなく、飢餓で、病気で死んでいく。
 読んでいて、何度となく、吐きそうになった。
 こんな状況でも兵たちは降伏もせずに行軍を続ける。銃に弾をこめて。
 自分たちの戦いに意味はあるのだと、自分たちが戦うことで誰かが助かるのだと信じているから。
 しかしそれが崩れたとき。
 自分たちが何のために戦っていたのか知ったとき。
 彼らは何をするのか。
 彼らが最後に守るルールは何か。
 そういう話だ。
 読み終わって、涙は出なかった。
 悲劇というならこれ以上の悲劇はないのに、ただ感じたのは、悪寒と、嘔吐感だった。
 彼らを笑う資格なんて、非難する資格なんてもちろん私にはない。
 だが「立派だ」と賞賛し、涙するべきでもない。
 そう思った。
 そして右翼たちの唱える、心地よい綺麗なスローガンが、全く別の世界について語られた絵空事のように思えた。
 8月14日
 時間がないのでちょっとだけ。
 「パラサイトムーン4」はおすすめ。
 「キノの旅6」は皮肉全開すぎて人生観壊されそう。
 「バギーラギーで出かけよう!」はまさに一服の清涼剤。たまにはこういうのも読まないと息がつまっちゃう。
 「ウロボロスの波動」「クビツリハイスクール」、買ってきたのに見つからない。
 な、なくしちゃったんか? うわーん。  
 8月12日
 コミケが終わった。
 私は仕事とかいろいろあって行けなかった。
 トホホホ。
 でも夏のコミケは脱水症状起こしそうになるから。
 今年の夏は去年より暑いし。
 体調も良くないし。
 いろいろほしいものはあったんだけどね。
 
 会社の人に「いまなに読んでるの?」といわれて、たまたま持っていた「パラサイトムーン4 甲院夜話」を見せたところ、「そ、そうなんだ。こういう絵で興奮するの?」と訊かれた。
 明らかに彼は動揺していた。ぎょっとしていた。
 「興奮ではありません。萌えです」と釈明したが、理解してもらえなかった。
 普通の人は萌えという言葉を知らないことを失念していた。
 私は「そもそも表紙の子は眼鏡をかけていませんから。この本でとくに萌えは彼女ですね」と、中にある眼鏡博士のイラストを見せる。
 彼はひきつった表情で、「よ、よかったね」。
 うん。
 言われてみれば、普通の本読みにとっては奇異かもしれないな、ライトノベルの表紙は。      
 8月10日
 腰の調子が悪い。
 背中から腰にかけてがガチガチ。
 マッサージもしてもらったが、あまり良くなったようには思えない。

 エンデュミオンは確かに描写がしっかりしてるし、おもしろいっちゃおもしろいんだけど、うーん、謎を謎として引っ張りすぎて、ちょっとつらい。
 というわけでちょっとお休みして吉田親司「帝国の聖戦1」を読む。
 台詞が変だ。
 会話の相手は知ってるはずのことをいう。
 「艦隊が来た」ではなく、「戦艦なになにを主力とする、なんとか提督ひきいるナントカ艦隊が来た」みたいなことを言うのだ。
 これは不自然。読者に対して解説するのは地の文でやればいい。
 と、そこは気になったけど、あとは面白かったよ。
 でてくる兵器が「一号戦車」「95式軽戦車」「ドイッチュラント級ポケット戦艦」など、やたら渋いのもいい。
 
 ほかにも「キノの旅6」「バギーラギーで出かけよう!」「パラサイトムーン4」「ウロボロスの波動」「クビツリハイスクール」とかいろいろ買ってきたんだけど。
 他の事を書こう。
 
 池田小事件の犯人が
 「どうせ死刑になるんやからもういいだろ、俺に嫌がらせするな」
 「謝る気持ちはない」
 「誰でもいいから数をこなしたかった」
 と言ってるのを知った。
 さすがに動揺した。
 実は、私だって犯罪者である。
 道路交通法だって法律だし、速度違反30キロで罰金刑を受けたことがあるので立派な前科者だ。  幼稚園のころには万引きでも捕まっている。
 で、思い出したのが、その万引きのときのことなんだ。
 私は自分が悪いことをしたとは全く思わず、警察に向かって「ヤッターマンが観たい。早く帰らせろ」みたいなことを言った。
 そう、私は「なんで帰してくれないんだ」と、純粋に怒っていたのだ。
 完全に自分が被害者って感じである。
 それとほとんど同レベルのことを彼はやってる。
 さすがに大量殺人ともなると、「僕もやるかもしれない。気をつけよう」とは思えない。
 だが、「自分が悪いことをしたと気づかず、むしろ被害者であると感じる」精神は私のなかにもある。
 今後、まあ殺人ではなくとも事故か何かで人間を死なせることがあるかも知れない。
 そのとき、「俺は悪くない」と思わずにいられるだろうか。
 「ちゃんと刑は受けるからそれ以上に反省などしなくていいだろ」とか言わずにいられるか。
 怖いです。    
 8月7日
 なんか変なメールがいっぱいくるよー。
 これがうわさのスパムってやつですか?

 広島の原爆犠牲者に、(一日遅かったけど)黙祷。
 原爆を開発した人たちは何を思ってつくったのか、どこまで彼らに責任があったのか、そのへんを考えると「犠牲者をいたむのは当然として、もっと深く考えるべきだよな」と思う。
 だって「ナチスに先に作られるわけにいかない」という恐怖も、「戦争を早く終わらせられるなら」といういいわけも、普通に出てくる考えだ。
 その普通の考えが組み合わさって大変な惨禍をもたらした。
     
 平谷美樹「エンデュミオン、エンデュミオン」角川春樹事務所
 を読んでいる。
 本格宇宙SFだな。
 まだちょっとしか読んでないけど、科学と幻想のうまい二人三脚がみられそう。
 「月が正面を向いているのは、ずっと人間を見ていたいから」
 この台詞にぐっときた。  
 8月5日
 本の感想。
 吉田親司(よしだちかし)「帝国の聖戦2」歴史群像新書
 架空戦記系の掲示板で吉田親司という作家が評判なので、買ってみた。
 2巻から読んでも理解できるらしいので。1巻がなかったんだよ。
 タイトルが謎だ。帝国ってどの帝国だ?
 別に帝国の話ではなさそうだ。
 もし「国際連盟」が、「平和を維持するための軍事力」をもっていたら?
 という話だ。
 その名も「国際自衛隊」。
 どの国にも属しない軍隊だ。
 戦争が起これば、侵略された国を救援し、侵略した国を懲罰する。ひとまず戦争が終わったら、本当にもうやらないかどうか監視する。
 満州で、ダンケルクで。
 しかしその判断には誤りもあり、発揮できる軍事力にも限界があり、またそういった行動を「うざい」と感じる国も数多く、あまりうまくはできない。
 そして国際自衛隊の努力及ばず、第二次世界大戦が起こってしまった……
 理想と現実の狭間でかっこよく戦う人々の物語、らしい。
 この巻は「国際自衛隊ができる前の、過去の説明」がメインだった。 
 だがたしかに面白い。文章が硬くてなじめないけど、ドラマを描こうという情熱がある。
 こんな途方もない偶然があるものか、とは思うが、まあドラマチックということで。
 あと、キャラに人間味があっていい。
 1巻も買おう。続きも読もう。斬新な架空戦記だ。
 8月4日
 いやあ、今週の週間少年マガジンに載っていた、パーフェクトグレードのガンダムを作った男たちの漫画は面白かったね。
 「『ガイーン』なガンダム」。
 名言である。
 なにかに夢中になる、夢を形にする、というのはこんなに凄いものなのか、かっこいいことなのか、そう思える。
 私はガンプラにはまった経験はないんだけど、それでも面白かったよ。
 
 プラモといえば。  1998年。私は警備会社でアルバイトをやっていた。
 前の年と比べて仕事は減り、貧乏だった。月収は10万を少し超えるくらい。
 今月の家賃はどうやって払おう、電話は止められずにすむだろうか、1000円以上のご飯を食べるのは月に一回、という生活だったので、遊びにはほとんどいけなかった。
 その苦しい生活の中で「今日は100円、明日は200円」と金をためてプラモを買っていた。
 1/72の小さい、飛行機のプラモだ。
 ドイツ機を中心に、精魂込めて組み立て、色を塗った。
 プラモ作りはあまり金がかからない。貧乏人にはうってつけの娯楽だ。
 8月のある日、私はようやくためた1000円を持ってプラモ屋を訪れた。
 今日は何を買おう? やはりBf109のGか?
 Eも悪くない。
 フォッケをもう一機作ってみるのもいいだろう。
 なんてことを考えながらるんるん気分で店に飛び込み……
 仰天した。
 女の子がいる。
 学校の制服を着ている。ショートカットで、痩せていて、ちょっと吊り目気味。
 可愛い子だった。
 ガンダムのコーナーならまだわからないこともない。
 だが、彼女がいたのは軍用機のコーナーだ。
 しかも、彼女は「1/48 紫電改」のキットを手にとって、じっと見ている。他の箱も手にした。
 零戦、隼、飛燕、疾風……日本機ばかりだ。
 一心不乱に見ている。やがて紫電改以外のキットを棚に戻した。
 ど、どういうことだ!?
「あ、あの……」
「……はい?」
 私の呼びかけに彼女は応えた。低く落ち着いた感じの声だった。
「せ、戦闘機、お好きなんですか?」
 彼女は少し気分を害したようだった。
「……女が戦闘機好きで、悪いですか?」
「いや、悪いとかじゃなくて、ただ珍しいなー凄いなーと思って」
「……人の趣味はいろいろでいいじゃないですか」
「いや違うんです。ただ僕と趣味が一緒だから、楽しく話せるといいなあーって」
 女の子は呆れた表情で私を見た。
「……ナンパですか?」
「いや、そのね、そんな立派なものじゃないんだけどね、えーとその、戦闘機ってかっこいいよねー」
 彼女は、顔を上げ、誇らしげに答えた。
「はい。特に日本機がいいですね」
 彼女は紫電改のキットを大切そうに抱えている。
「紫電改ですか?」
「ええ、最高の戦闘機です!」
 マジで嬉しそうに彼女は言った。
「……いや、ドイツ機の方がかっこいいと思う」
 だが反射的に私はそういってしまったのだ。
「……ちょっと待ってください。ドイツってそんなにいいですか?」
「軍用機といえばドイツです。嫌いですかドイツ機?」
「美がありません。やはり日本製に限ります」
「いや、しかしBf109なんかは極限まで研ぎ澄まされた刃のような、緊張感を伴った美しさがある!」
「ありませんよ、ただ理詰めで作っただけです」
「じゃあフォッケウルフは! あれの胴体後部は優美としかいいようがない」
「フォッケなんて駄目ですよ。戦闘機として失敗です。だって高高度性能がぜんぜん駄目なんですよ?」
 私は戦慄した。この娘、ただものではない。
「日本機だって人のこと言えない! だいたいドイツ機は発展性がある。Bf109なんて最初のB型と後期のG型K型では桁違いの性能差があるんですよ! いじって強くなるということは潜在能力が高いことを意味してます! それにくらべて零戦なんて!」
「零戦は芸術品なんです、機械じゃないんです。だからいじっても性能が上がらなかったんです。だいたい逆の考えもできるじゃないですか、改良できるということはこれまでの設計に無駄があったんですよ、零戦はないんです」
「零戦零戦っていいますけど、32型なんて完全に失敗作でしょ?」
「ドイツだって失敗した機体はいくらでもあるじゃないですか! 日本よりずっと多いですね!」
「う……」
「性能だけじゃありません、紫電改には剣部隊があります! 大活躍してるんです!」
 彼女の気迫に私も圧倒されそうになった。だが言い返した。
「343空ですか? ドイツのJV44の方が強いです」
「乗ってるのがジェット機じゃないですか! そんなの持ち出すなんて卑怯です」
「パイロットの腕だってドイツの方が上です」
 彼女は怒りはしなかった。噴き出しそうな顔になった。
「……証拠は?」
「ドイツには300機撃墜、200機撃墜という人がざらにいます。撃墜数が上なんです」
「日本の人だって200機くらい落としてる人はいますよ。記録してないだけです。数を競う風習はなかったからですよ。それに日本とドイツは全然状況が違います。ドイツの撃墜王は何度も撃墜されて生還してまた飛んでって人がいますけど、日本の場合、下は海ですからそれは無理です。敵の腕だって、ドイツの場合は主にソ連軍が相手ですから、たくさん落とせて当たり前です」
「……し、しかし……」
「ドイツはB17としか戦ってません。日本はB29と戦ってます! 相手がずっと強かったんですよ!」
「いや、しかし……指揮官だって、源田実なんかよりガーランドの方がずっと優秀で。100機以上落としてるし」
「パイロットとして優秀だから指揮がうまいとは限りません! ドイツに詳しいなら当然知ってますよね!」
「ゲ、ゲーリングはその、ゲーリングは特別で。彼が特に無能なだけで」
 彼女は余裕たっぷりに微笑んでこう突っ込んできた。
「その無能なゲーリングを、どうして誰もクビにできなかったんですか? どうしてガーランドが代わりやっちゃいけなかったんですか?」
「……それは。その、いろいろと、ナチス内に問題が」
「問題があったのはわかってます、でも日本軍にだっていろいろ問題がありました。その状況の中で必死にがんばったんです。ドイツだけじゃありません」
「ど、ドイツはジェット機を作った! ロケット機も! VTOLも後退翼もドイツが発明した! 日本にはできなかった! 飛行機だけじゃない! ミサイルも! 巨大戦車も!」
「でもそれって役に立ちました? わたし、あれって、戦争の勝敗とは全然関係なくて、ただ科学者が趣味でやってたような気がするんですけど。空襲どころか、敵の陸軍が国内に来てるのにそんなことやってるなんて、反逆罪じゃないですか? なにが偉いんですか?」
 私は言葉を失っていた。ここまで言われたのは初めてだった。
 だが、引き下がるわけにはいかない。栄光あるドイツ、その名誉は守られなければいけない。
「ド、ド、ドイツの……」
「ドイツの科学力は世界一ィィィィィ、ですか?」
「うっ」
 なんでそんな台詞を知ってるんだ。
「それって宗教みたいで、気持ち悪いですよ?」
 それだけ言うと彼女はレジに向かい、紫電改を買って店から去った。
 私は呆然とその姿を見送るばかりだった。
 その後、彼女にあうことはなかった。
 いやあ、人間を性別で判断しちゃいけない。
 
 本の感想。
 西澤保彦「転・送・密・室」講談社ノベルズ
 前々から評判が良かった「超能力ミステリ」シリーズ。
 恥ずかしながら読んだことがなかったんだ。
 うん、確かに面白い。超能力や魔法など特殊条件の出てくるミステリって私の好みなんだよ。
 そのジャンルの第一人者って言うだけのことはあるね。
 派手さはないけど、「パズラー」という言葉そのもの、つまり「ぱちっと論理がはまった時の爽快感」がある。
 もっと人間面を掘り下げてもらえるともっと嬉しい。だから長編も読んでみよう。
 キャラも萌え系です。
 私は嗣子(つぎこ)ちゃんより響子ちゃんの方が好きです。
 眼鏡はかけてませんが。
 
 井上尚登「キャピタルダンス」角川書店
 傑作歴史ミステリ「TRY」でデビューを飾った井上尚登さんの第三作。
 今度は現代日本、それも「IT業界」が舞台のビジネス小説だ。
 画期的な検索エンジンを開発した女が、会社をおこす。
 彼女はたんに金をもうけたいだけではなかった。ある目的、ある夢のために彼女は戦うのだ。
 だが彼女の前にはいくつもの敵が立ちはだかる。
 一度会社経営に失敗した彼女を信じない、日本のベンチャーキャピタル。
 中国人だから、といういわれなき偏見。
 大企業の妨害。
 二重三重の罠。
 疑心暗鬼。
 それらすべてに打ち勝ち、彼女は進む。
 その過程で明らかになっていく真相。
 そして最後、新世界・インターネットの理想を高らかに謳いあげ、物語は終わる。
 かっこいいぜ。
 みんな戦ってるんだなあ。
 理想を捨てないって大切なことだなあ。
 そして。
 犬可愛いなあ!(この作者は明らかに犬萌えです)
 そう思った。

 「2ちゃんねる公式ガイド2002」コアマガジン
 2ちゃんねるの歴史、関係者の談話、各掲示板の紹介など。盛りだくさん。
 2ちゃんねる関連本の中で一番質が高いかも。
 読んでると燃えてくる。
 しかも。
 146ページ。
 ライトノベル板の解説。
 有名コテハンとして、私「ペンネームC」が紹介されている。
 そうか、私の書き込みは(プラスマイナスどちらの意味でかは微妙だが)みんなの記憶に残ったのか。
 ありがとう。              
次の日記   先月の日記  トップに戻る